国際会計事務所PwC、中国業務「6カ月停止」の深刻
PwCは恒大集団の巨額粉飾決算を見落とした責任を問われ、厳しい処罰を言い渡された(写真はPwCの中国向けウェブサイトより)
経営再建中の中国の大手不動産、恒大集団(エバーグランデ)の巨額粉飾決算をめぐり、同社の監査法人を務めていた国際会計事務所のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)に対して、中国の監督当局が厳しい処罰の決定を下した。
中国財政省と中国証券監督管理委員会(証管会)は9月13日、PwCの中国国内の主要部門である普華永道中天会計事務所(PwC中天)への行政処分をそれぞれ発表。罰金および(恒大集団に関連する)違法所得没収の総額は4億4100万元(約88億円)に上った。
さらに、PwCの中国業務に大きな影響を及ぼす「資格処分」に関しては、中国国内の監査部門を対象に6カ月間の業務停止および広州事務所の閉鎖を命じた。
粉飾見落しに「重大な瑕疵」
粉飾決算の当事者である恒大集団に対しては、証管会が5月31日、不正な債券発行と虚偽の情報開示を理由とする処罰を決定。その後、恒大集団の監査法人を10年以上にわたって務めたPwCに対して、関係当局がどのようなペナルティを科すかに注目が集まっていた。
当局の調査によれば、恒大集団の不動産事業の主力部門である恒大地産は収入の事前計上などの不正会計を通じて、2019年に2139億8900万元(約4兆2784億円)、2020年に3501億5700万元(約7兆9億円)もの売り上げを水増ししていた。
そんな中、PwCが2018年から2020年にかけて実施した恒大地産の会計監査について、財政省は「計画と実施の両面に重大な瑕疵があり、多くのプロセスで誤った結論に導いた」と厳しく批判した。
一方、証管会は恒大地産の会計監査のプロセスについて、PwCがとった対応の多くが有効に機能していなかったと指摘した。
具体的には、不動産開発プロジェクトの現地視察に基づく監査記録の9割近くが、実際の状況と合致していなかった。記録上は(建設工事が完了して)引き渡しの条件が整っているとされた物件の大部分が実際には竣工しておらず、恒大地産側が「見せるな」と指示した物件は現地視察の候補から外されていたという。
PwCは恒大集団の開発物件の現地調査を適切に実施していなかった。写真は恒大集団の建設途中のマンション群(同社ウェブサイトより)
財新記者の取材に応じた監査業界の複数の関係者は、関係当局がPwCに科した総額4億4100万元の罰金は、おおむね予想通りか、むしろ予想を下回る金額という見解を示した。その一方、監査部門の6カ月間の業務停止に関しては、「かなり重い処分」という見方で意見が一致した。
監査業務の新規受託に制限
中国公認会計士協会が公表した2022年度のデータによれば、PwCが手がける会計監査、アシュアランス(保証)サービス、コンサルティングなどの事業のうち、監査部門の売上高は全体の86.3%と圧倒的比率を占める。
しかも、今回の処罰がPwCの監査業務に与える影響は、業務停止の6カ月間だけでは終わらない。
財政省のガイドラインによれば、過去3年間に(中央政府の)財政省または(地方政府の)省レベルの財政部門から罰金や業務停止などの行政処分を科された会計事務所は、その後3年間にわたって金融機関向け監査業務の新規受託および業務拡大を禁じられる。
(財新記者:程思煒、王娟娟)
※原文の配信は9月13日
(財新 Biz&Tech)