数々の冒険をサバイブしたGoogle Pixel 3。ケースつけてもボロっボロだが、右のApple純正クリアケースのほうが間にたまったホコリは目立つ Photo: Kyle Barr / Gizmodo

2023年8月9日の記事を編集して再掲載しています。

もう昔みたいにAndroidとiOSの垣根はないよね!と思った自分が甘かった…。Pixel 3からiPhone 14 Proに乗り換えて、それを嫌というほど思い知りました。

GoogleもAppleもひいきのユーザーにはよくしてくれるけど、やめた人間には冷たいもんですよ。

かくいう自分はどこにでもいるニューヨーカー。多忙で、週末はだいたい遠出します。そんな僕でも、電話会社に何度も問い合わせて、AppleとGoogleの純正アプリを使い分けないと日々の雑務もままならない状況。もう乗り換えて結構経つのに、Wi-Fiの古いパスワードが思い出せなくて前使ってたPixelスマホを起動しないといけなかったり、アプリの再設定もすごく煩わしくて心が折れそうなこともしばしばでした。

<目次>

乗り換えた動機、かかった費用

1. 第一関門=eSIM地獄

2. Googleは自分のオンラインの存在すべてを握っている

3. Androidとメッセージするとき不便

4. Lightningは言われてるほど大変じゃなかったが…

5. 互換性の問題

6. アプリの配置を自由に選べない

7. Googleマップを経路のデフォに選べない

8. 画面戻るのかったるい

9. プライバシーアピールしてくるけど…

乗り換えて後悔してるの?

乗り換えた動機、かかった費用

「だったら乗り換えなきゃいいじゃん」と言われそうだけど、iPhoneを買ったのは、iOS対応版オンリーのアプリを試したかったからです。AppleのモバイルOS(iOS)はAndroidより上な面もありますし。特にアプリに個人情報を送るかどうか画面や通知で確かめてくるのは好感が持てますよね。

乗り換えにかかった費用は自腹で1000ドルです。月50ドル×2年の分割払いで買いました。パワフルな最新のiPhoneが自分のものになったのはうれしい反面、乗り換えのハードルを考えると、出費の元がとれたかどうかは微妙。なにしろ細かいところがいろいろ不便で…。

「アップル9つの大罪」を読んで知った気になってはいたけどここまでとは思いませんでした。最近の業界アナリストによると乗り換える人は増えていて、Consumer Intelligence Research Partners(CIRP)の報告では、2023年のiPhone購入者のうち15%はAndroidからの乗り換え組なんだとか。2022年の11%から4%も増えて、2016年の21%に比べると少ないけど、2018年以降では久々に大きな数字となっています。

しかし「乗り換えが増える=垣根が減る」とはいかないようす。というか、前より垣根が分厚くなったんじゃないの?とさえ思ってしまいました。iPhone初めてだけど。

乗り換えて気づいた点をまとめておきますので、参考にしてもらえれば幸いです。これを読んでGoogleとAppleが歩み寄って垣根を取っ払ってくれたらいいんだけど・

1. 第一関門=eSIM地獄

米国のiPhone 14/14 ProはeSIMオンリーの仕様になっています。eSIMもいいところはいっぱいありますが、僕の場合、古いスマホなので、物理的なSIMしかありません。ちっこい穴にクリップ差してSIMトレイを開けるとペラっと出てくるやつですね。同じPixelでもPixel 4以降はeSIMと物理SIMの両対応になってるんですが、なんせ5年落ちのPixel 3ですんで、これが思いがけずネックになりました。

iPhoneの初期設定そのものはスルッと終わったんですが、データを古い携帯から移す段階になって「Androidからデータを移行」を選択したら、「通信キャリア発行のQRコードを読み込んでください」とAppleのメッセージが出てくるではないですか。

iPhone 14 Proは物理的なSIMカードが使えないので端末情報を設定で確認するしかない
Photo: Kyle Barr / Gizmodo

ところが僕が使ってる米T-Mobileの場合、サイトにQRコードは出ているんですが、物理SIMからeSIMに乗り換えるとなると、オンラインでは手続きできなくて、電話か対面で窓口に直接問い合わせなきゃならないんです。本人になりすまして電話番号を乗っ取る「SIMスワップ」が横行してるので、ガードを固くしてるのはわかるのだけど、これが大変で。

電話したら30〜45分も延々保留。やっとつながったと思ったら、新しいiPhoneのIMEI番号を教えてって言われて焦る焦る。Android同士なら、そんなの使わなくてもすぐ移行できるので、へ?なにそれ?となるユーザーもいそうなので書いておきますけど、IMEIというのは「International Mobile Equipment Identity:国際移動体装置識別番号」の略。指紋みたいな端末固有の識別番号のことです。iPhoneは「設定」>「一般」>「情報」の順に進むと、いちばん下の方に出てきます。

でもそんなの全然知らないので、T-Mobileのスタッフとあちこち探し回ってしまいました(「情報」と教えてくれるまで10分ぐらいかかった)。

IMEIがわかったら、次はMEID番号(Mobile Equipment Identifier:携帯機器識別番号)です。どういう文字列かは担当の人が教えてくれたんですが、IMEIが出ている「情報」のページには出ていないんですね。物理SIMだったらSIMトレイを見れば一発でわかるんだけど、なんせiPhone 14はeSIMオンリー。その手は効きません。

こんだけ手間が増えたのに、iPhone 14はSIMトレイの跡地をプラスティックのスペーサーで埋めてるだけなんですよね…空いたスぺ―スを有効利用しているならまだしも(以下の分解動画で確認できます)。

IMEIと同じ場所にないと知って慌てるT-Mobileの男性スタッフ。後ろの上司に聞いてる声が聞こえるな〜と思ったら、プツッ。いきなり電話が切れて、なぜかiPhoneがふつうに使えるようになったんですよ。まるでキツネにつままれたようでした。何がどうなってこうなったのかは、いまだにわかりません。

2. Googleは自分のオンラインの存在すべてを握っている

iPhone 14の基本機能の設定が終わると、Appleから「iOSに移行」アプリをダウンロードしよう!というお誘いが何度もきます。データ移行をラクにするアプリ…という名目ですが、現実には頭痛の種が増えただけでした。

自分は「写真をフォルダーに整理する」ということをしない人間なので、「iOSに移行」アプリで1時間近くかけて写真を新品のiPhoneに移行した途端、全写真が日付順じゃなく、Webフォトかカメラの写真かで仕分けられちゃって、あれ?となりました。そんな仕分けをされてもあまり役に立たないような…。

しかも「iOSに移行」アプリでは、Pixelで使ってた全アプリのアイコンがフォトストリームに保存されます。アイコンをタップしてもダウンロードされないんですね。画像として保存されてるだけなので当たり前といえば当たり前ですが。

移行が終わってiPhone 14を開いたら、なんか中古車置き場みたいな画面になっちゃってて。

連絡先も「全連絡先」とメインのGmailアカウントの連絡先に分かれていて、連絡先アプリを開くたびに別々の連絡先が表示されます。統合手順、確かめなきゃな…と思いつつズルズルきてしまいました。

3. Androidとメッセージするとき不便

うちは友だちも家族もだいたいAndroidなので、緑と青にメッセージの色がわかれちゃうのも悲しいです(AppleがRCS通信プロトコルへの対応を拒んでいるため)。取りこぼしがないように、今もPixel 3開いて、RCS経由の着信メッセージがないか確かめちゃうんですよね。未達に終わっても通知がこないので。

あとSMS経由の画像はピクセル化されるし、前みたいに絵文字のリアクションもつけられません。「そんなのお母さんにiPhone買えば解決するよ」とAppleのティム・クックCEOは言ってましたが、いやいや、そういう問題じゃないし。Googleも独自規格の方向に向かってそうだし、友だちや家族とのメッセージの溝がまたまた深まると思うと滅入りますよ。

4. Lightningは言われてるほど大変じゃなかったが…

USB-CからLightningの充電ケーブルに変わったのは案外たいしたことなかったけど、持ち運ぶケーブルの種類は確実に増えました。

5. 互換性の問題

僕個人はウェアラブルあまり使ってないので、スマートウォッチなんかの互換性の問題は特に感じていませんが、サムスンGalaxy WatchとかのAndroidで揃えてる人はそっちも早晩ハードルになりそうですよね。

HOME画面を好きにいじれないのも辛い
Photo: Kyle Barr / Gizmodo

6. アプリの配置を自由に選べない

これ以外にも古いスマホが恋しくなる点はあります。たとえばアプリの配置もiPhoneは融通が効かなくて、本当はJohn Blancheの背景アートをきれいに使いたいのに絵の肝心なところがアプリで隠れちゃったり。

ロック画面もカスタマイズ性がイマイチですけど、これに関しては、iOS 17で横表示に対応したところだし、新しい展開が楽しみ。

7. Googleマップを経路のデフォに選べない

まあ、Google Mapsを経路検索のデフォルトの地図に指定できないのはなんでや?となりますけどね。こういうのはAppleとGoogleが競合関係にある限り続く問題とあきらめてはいるけど、それでもiPhoneを初めて起動したときには、自分の置きたい場所にアプリのアイコンをなんで置けないん?って驚きました。

8. 画面戻るのかったるい

これはiPhoneだいぶ使い慣れた今だから言えることですが、Androidは元の画面に戻るのホントにラクだった…。iPhone 14ほど画面大きくなくていいから、あの動作に戻りたいです。

9. プライバシーアピールしてくるけど…

それにしてもAppleに乗り換えて一番アレだったのはプライバシー保護のアピールかもしれませんよ。

App Storeを開けばアプリの個人情報利用目的を事細かに説明してきますし、新しいアプリを開くたびにAppleから位置情報や生体情報などの追跡を許可しますかと確認がきますし。

ただ2022年の記事で紹介したように、ユーザーが追跡をOFFにしてもApple自体は追跡をやめない事実も一方にはあるわけで、Appleがプライバシーについて先回りして警告してくれるのは好感が持てるんですが、だからって心から油断はできないなと思ってしまいます。

乗り換えて後悔してるの?

後悔も多々あります。あと何か月か使えば、Appleの制限の多いエコシステムにもすっかり慣れて、もう一生離れたくないって思うかもしれないけど、それって人質が犯人にすり寄るストックホルム症候群みたいなもんじゃないですかね。

ハッと我に返ると、AppleもGoogleも端末乗り換えの苦労を知ってるくせに、消費者の負担を取り除く努力を怠ってる事実に相変わらずムカついてる自分がいます。本当にいい庭(OS)をつくりたかったら垣根を何センチか下げるのが先決だって早く気づいてほしいです、はい。

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