日銀は金利引き上げ傾向(C)共同通信社

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 社会保険料を含む「税金の滞納」で倒産に追い込まれる企業が急増している。

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 東京商工リサーチによると、2024年1〜8月度の全国企業の倒産件数は6607件と、前年同期(5560件)を1047件上回る18.8%の増加。コロナ禍での金融支援策だったゼロゼロ融資が縮小、資材、エネルギーなど原料価格をはじめとする物価高、人手不足が倒産増に拍車をかけてきた。

 こうしたなか、いま注目されているのが、冒頭で述べた社会保険料を含む「税金滞納」倒産だ。今年1〜8月の「税金滞納」倒産は123件で、前年同期比127.7%と急増。過去7月までに年間最多だった18年の105件を大きく上回り年間200件を超えると予想されているのである。同社情報本部の松岡政敏課長がこう説明する。

「国税、社会保険料とも納付は1年間の猶予が認められてきましたが、企業活動の正常化で猶予がなくなりました。コロナ禍で借りた無利息無担保融資のゼロゼロ融資の返済が始まったこと。売り上げの伸びない企業は円安、物価高、さらに人手不足による給与アップ、人件費などのコスト増で、借金の返済に加え社会保険料の支払いが重なり、特に中小企業は納税資金を捻出できず窮地に陥っています」

 金融機関は日銀の金利引き上げ傾向に、貸出金利の見直しを始めている。日銀が3カ月ごとに行っている主要銀行貸出動向アンケート調査でも、中小企業を中心に倒産する企業の増加から、新たな貸し出しに対する融資態度は低水準に移行している。結果、資金調達に苦慮する企業が増えてきているのだ。

「貸し出しをコロナ前の厳しい審査体制に戻す金融機関が増えています。業績不振から抜け出せない企業は、運転資金の確保に追われ納税が遅れるケースが増え『レピュテーションリスク』にさらされる。情報を入手した金融機関は貸し出し、返済条件を見直すケースも出てきているようです」(前出の松岡氏)

「レピュテーションリスク」は、企業にとってマイナスとなる評判や評価が社会に広まり、特に経営難や、税金の滞納情報など、企業価値や信用の低下を招くリスクだ。

 金融機関は年金機構が行っている売掛金などの財産調査データを入手しており、融資企業が税金を滞納している事実を把握すれば、取引条件や取引そのものの見直しは避けられなくなる。税金などの滞納期間が長引き解消できない場合、資産や銀行口座の差し押さえや債権譲渡が実行される。

 8月の企業倒産件数は723件と、前年同月を上回っていた連続記録は28カ月でストップした。しかし、「税金滞納」倒産は今後も増えると予想されている。

(木野活明/経済ジャーナリスト)