置き配サービスで届けられた荷物がぬれたことが原因で中の商品が使えなくなった場合、宅配業者に賠償請求できる?

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 通販サイトでの商品の購入時に、「置き配」サービスを利用したことがある人は多いと思います。このサービスを利用すると、玄関のドア前や宅配ボックス、車庫など、指定した場所に荷物を届けてくれるため、自宅を留守にすることが多い人にとっては便利です。

 ところで、宅配の担当者が、門の外やエアコンの室外機の排水口付近のような、雨や排水で荷物がぬれやすい場所に荷物を置いてしまい、荷物がぬれてしまったケースがあるようです。SNS上では「門の外に荷物を置かれ、雨でぬれた」「室外機の排水口の所に荷物を置かれ、ずぶぬれ」という内容の声が上がっています。

 もしも、置き配サービスの利用時に、門の外やエアコンの室外機の排水口付近など、雨や排水でぬれやすい場所に荷物を置かれてしまい、中の商品がぬれて使えなくなった場合、宅配業者に賠償を請求できるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

宅配業者が賠償責任を問われる可能性も

Q.そもそも、置き配サービスの利用時に荷物の盗難や破損などがあった場合、宅配業者に賠償を請求できるのでしょうか。門の外やエアコンの室外機の排水口付近など、雨や排水でぬれやすい場所に荷物を置かれ、中の商品がぬれて使えなくなった場合はいかがでしょうか。

牧野さん「状況によって異なります。『置き配』をされることと、置き配のリスクを負担することについて、荷物の受け取り側が利用規約で合意している場合、荷物が玄関先に長時間、置かれていたかどうかにかかわらず、受け取り側が荷物に関する責任を負います。そのため、荷物を盗まれたとしても、原則として、宅配業者に損害賠償を求めることはできないでしょう。

ただし、荷物の受け取り側が、置き配のリスクに関する利用規約に同意している場合でも、宅配業者が、商品を引き渡すまでの間に必要な注意を怠った場合、商法575条に基づき、業者が責任を負う可能性があります。

なぜなら同法575条では、運送人は、運送品の受け取りから引き渡しまでの間にその運送品が滅失・損傷し、もしくはその滅失・損傷の原因が生じたときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと定められているからです。運送品の滅失・損傷が生じた場合、運送人は、受け取り・運送・保管・引き渡しのすべてについて、注意を怠らなかったことを証明しなければ、損害賠償責任を負います(商法575条ただし書き)。

宅配業者が必要な注意を怠ったケースとしては、『悪天候の中、雨風にさらされる場所に置いてしまい、商品がぬれて使えなくなった』『雑な運び方をしたり、室外機の上のような高い場所に物を置いたりするなどして、荷物が破損してしまった』『誤った指定場所に荷物を置いたことで盗難被害が発生した』などのケースが該当します。

置き配の荷物がぬれたことで、中に入っていた本や服などの商品が使用できなくなった場合、商法575条の『運送品が損傷した』場合に当たります。この場合、荷物の運送人はその損傷によって生じた損害を賠償する責任を負う可能性があるため、荷物の受け取り主は賠償を請求できるでしょう。

ただし、受け取り主が雨風にさらされやすい場所に置き配を指定した場合などは、受け取り主がリスクを引き受けることになります。例えば、玄関前がもともと雨風にさらされやすい場所だった場合で、玄関のドア前に置かれた置き配の荷物が雨でぬれてしまった場合には、受け取り主が運送人に損害賠償を求めることは難しいでしょう」

Q.置き配の荷物がぬれていたにもかかわらず、宅配業者に商品の弁償を拒否されたとします。この場合、どう対処すればよいのでしょうか。

牧野さん「弁償を拒否された場合でも、宅配業者に状況を連絡し、補償対象になっているか確認しましょう。補償対象になっている場合、申請を行うことで補償を受けられる可能性があります」

Q.このほか、置き配サービスに関して、宅配業者が賠償責任を負う可能性があるケースはあるのでしょうか。

牧野さん「受け取り側の合意がないにもかかわらず、宅配業者が勝手に置き配をして荷物が盗まれた場合も、業者が責任を負う場合があります。合意していない方法で配達された債務不履行で損害(盗難)が発生したとされ、配達業者は、商品を引き渡すまでの間に必要な注意を怠ったとして、責任を負う可能性があるからです」