自民党総裁選の “大本命” である小泉進次郎氏(写真:アフロ)

 いよいよ「決着」の日が来る──。

 9月27日投開票を迎える自民党総裁選も、“秒読み”に入った。本誌は、元朝日新聞政治部デスクの鮫島浩氏に総裁選の最終予想を依頼、最後に勝ち残るのは誰かを聞いた(9月22日時点の最新予想)。

「やはり小泉進次郎氏、石破茂氏、高市早苗氏の三つ巴でしょう。3人のなかで進次郎氏有利は変わりませんが、ここへきて大きく失速している」(鮫島氏、以下同)

 鮫島氏の予想は、

小泉進次郎:党員票70、国会議員票70(計140)
石破茂:党員票100、議員票30(計130)
高市早苗:党員票90、議員票30(計120)

 となっている。では、決選投票を制すのは3人のうち誰なのか。

 ここで決選投票の仕組みを簡単にまとめると、上位2人に対し、国会議員票368票と都道府県連票47票(合計415票)を投票し、多いほうが当選する。

「決選投票のパターンは3つしかない。『小泉vs.石破』『小泉vs.高市』『石破vs.高市』です。

 進次郎氏が第1回投票で1位か2位に残れば、決選投票の相手は石破氏か高市氏になる。どちらの場合でも、小泉氏が勝つと思います。なぜなら、石破氏も高市氏も、やはり議員票が少ない。それと、当選の見込みがない林(芳正)氏や茂木(敏充)氏の票が、決選投票で “勝ち馬” 進次郎氏に乗ると予想されるからです。

 茂木氏は、麻生(太郎)氏が河野(太郎)氏を担いで自分が切られたことに怒っている。進次郎氏が決選投票に残った瞬間に、“勝ち馬” に乗るでしょう。そして、進次郎氏の後ろ盾である菅(義偉)氏に、財務大臣のポストを要求したりするのではないか。

 林氏も、岸田首相と麻生氏に怒り心頭です。林氏と同じ派閥の上川(陽子)氏を候補に立たせた。これには、岸田氏による林氏への嫌がらせという側面がある。茂木氏と同様、林氏も進次郎に乗っかるでしょう」

 しかし、進次郎氏が第1回投票で1位、2位に入れない場合、石破氏か高市氏のどちらかが新総理となる。鮫島氏はその可能性も十分あると断言する。

「パターンは3つあるでしょう。

(1)石破氏への支持が思いのほか伸び、そして、高市氏がこのままの勢いで伸びてゆく場合
(2)麻生氏が進次郎氏を3位に落とすため、第1回投票から石破氏か高市氏に乗る場合
(3)あるいは、進次郎氏が問題発言などを起こして、態度を決めていない “浮動票” が進次郎氏から離れた場合

 ですね」

 こうなると、決選投票は石破vs.高市の一騎打ちとなる。どちらが有利なのか。

「ここまで来ると、どちらが勝つのか本当にわからない。茂木氏にしろ、林氏にしろ、“右寄り” の高市氏に警戒感があるから、石破氏に乗るでしょう。

 でも、石破氏は菅氏との接点があるから、麻生氏にとっては高市氏のほうがまだましということになる。麻生氏は高市氏に乗ると考えられる。小林(鷹之)氏も考え方の近い高市氏に乗るでしょう。

 つまり、麻生氏と小林氏が高市氏、茂木氏と林氏が石破氏に乗る可能性が高い。石破氏はもともと菅氏に近いから、石破氏と高市氏の戦いになれば、進次郎氏への票が石破氏に回る可能性もある。もし石破氏と高市氏の一騎打ちになれば、石破氏のほうがちょっと強いかもしれない」

 だが、高市氏の逆転勝利の可能性も十分あると言う。

「麻生氏が早い段階で高市氏支持を打ち出すことです。高市氏は議員票が30票と少ないのが足を引っ張っていますが、そこを麻生氏が手助けすることで、石破氏を上回る可能性があります」

 だが、高市氏には “アキレス腱” があるという。

「右寄りの外交・安保政策です。じつは、高市氏の右寄りの政策をいちばん懸念しているのはアメリカなんです。アメリカは、中露に対抗するため、日米韓の連携をアジア政策の基軸と位置づけている。

 これは、大統領がトランプでもハリスでも変わらない。もし、高市氏が総理になって、靖国参拝や領土問題で過激な言動を取れば、韓国世論を刺激する。日米韓の関係が崩れることをアメリカは懸念しているんです。アメリカが日本を警戒すれば、自民党内からの反発も加速するでしょう」

 そうなると、高市氏は右寄りな外交・安保政策を封印するしかないという。

「むしろ、株式市場が支持している『経済のサナエ』を前面に出したほうが、勝つ可能性は高くなる。右寄りな姿勢を封印して、麻生氏が決選投票で高市氏に乗っかってくれば、高市氏逆転の可能性は十分あると思います」

 結果まであと数日。総裁の王冠は誰の手に──。