子宮頸がんで命を落とす可能性は…?

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 Snow Man目黒蓮さんが主演を務める7月期“月9”連続ドラマ「海のはじまり」(フジテレビ系、毎週月曜午後9時)。主人公・月岡夏(目黒さん)が、亡くなった大学時代の元恋人・水季(古川琴音さん)が自分との間にできた娘を産んでいたことを、葬儀で知ることになるところから始まる物語で、回を追うごとにストーリー展開が話題となっています。

 7月29日に放送された第5話では、水季の死因が「子宮頸(けい)がん」だったことが明らかに。この「子宮頸がん」という病気について、ネット上では「子宮頸がん…怖い」「若くして死に至る可能性がある病気なんだなと改めて」「検査、本当に大事」といった関心を寄せる声をはじめ、「亡くなる可能性はどのくらいなんだろう」という疑問の声も聞かれます。

 劇中に登場し、関心が高まっている「子宮頸がん」で“命を落とす”可能性について、神谷町WGレディースクリニック(東京都港区)院長で産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

2クラスに1人ほどは「一生のうちに子宮頸がんになる人」がいる

Q.「子宮頸がん」とは、どのような病気ですか。

尾西さん「子宮のがんには、子宮の入り口にできる『子宮頸がん』と、子宮の中にできる『子宮体がん』の2つがあります。その中でも、特に若い人に多いのが子宮頸がんです。

子宮頸がんは、『HPV(ヒトパピローマウイルス)』に感染することが主な発症原因です。このウイルスは性交渉によってうつるものですが、多くの場合は自分の免疫力で退治できます。ただ、がんとなりやすいウイルスの型だったり、免疫力が弱っていたりすると、排除できずに感染し続け、やがてがんになってしまいます。

進行しないとなかなか自覚症状がないところが、子宮のがんの怖いところです。悪化すると、性交時など生理(月経)とは関係なく出血する『不正出血』がみられるようになりますが、初期はほとんど症状がないため、定期的な検診が重要です。進行して他の臓器に影響が及ぶと、排尿の障害や腰痛、脚のむくみなどが出ることもあります。

早期に見つけることができれば、子宮の入り口だけを切り取る手術をすることで、その後の妊娠が可能です。しかし、進行してしまうと子宮を摘出しなければならなくなり、妊娠・出産ができなくなってしまいます。

また、放射線や化学療法(抗がん剤治療)などによって時間も体力も奪われるため、仕事もプライベートも健康なときのようにいかなくなってしまいます。

なお、発見された時点で他の臓器などにがんが転移していた場合は、死亡することもあります」

Q.子宮頸がんの「罹患(りかん)率」は。

尾西さん「子宮頸がんは、日本では年間に約1.1万人が罹患し、約2900人が亡くなっている病気です。20代から罹患者数が急激に増え始め、30代までに年間約1000人の女性が治療で子宮を失っています。最もがんに近い“前がん状態”である『高度異形成(CIN3)』を含めると、20代と30代の女性では、最も罹患する人が多いがんです。それにもかかわらず、20代の検診受診率が低いことが問題となっています。

なお、1年間で子宮頸がんと診断された患者数は全国で1万879人(2019年)、子宮頸がんによる死亡者数は2887人(2020年)と報告されています」

Q.子宮頸がんに罹患した場合、亡くなる可能性(確率)はどのくらいなのでしょうか。

尾西さん「年齢階級別にみると、子宮頸がんで亡くなる人は、20代では10万人に0.1人、30代では10万人に0.3人と、他の年代に比べて高くはありません。

ただし、一生のうちで子宮頸がんになる人は、1万人あたり132人とされ、これは女子のみの1クラス(約35人)として換算した場合、2クラスに1人ほどは子宮頸がんになる計算です。さらに、子宮頸がんで亡くなる人は1万人あたり34人で、10クラスに1人ほどいると考えると、割合として決して少なくはありません」

子宮頸がんは「早期発見できるがん」

Q.若くして死に至る可能性がある子宮頸がんについて、産婦人科医の立場からどう思われますか。

尾西さん「子宮頸がんは、全身のがんの中では珍しく『原因がウイルスと分かっている』『がんになる前に見つけることができる』という点で、『予防できるがん』『早期発見できるがん』です。

まず、『予防』のためには、HPVに感染しないようにすることです。先述の通り、HPVは性交渉により感染するため、性交渉を持つ前にHPVワクチンを接種しておくことや、他の性感染症予防と同様に、コンドームを正しく使うことなどが大切です。

性交渉を持つ“前”のワクチン接種がおすすめですが、現在予防できるウイルス全てに感染している人はいないため、既に性交渉の経験があってもワクチンの効果は期待できます。

副反応などの問題で、一時期HPVワクチンが接種できない時期がありました。現在はその年代に該当する人向けに、公費負担で接種できる『キャッチアップ接種』が行われていますが、2025年3月でその制度が終了となってしまいます。全3回の接種が必要で、通常スケジュールで接種すると6カ月かかるため、2024年の9月にスタートしないと間に合わなくなってしまうので、該当する人は速やかに接種をスタートしましょう。

そして『早期発見』のためには、定期的に子宮頸がん検診を受けましょう。自治体では『2年に1回』の検診間隔を推奨していることが多いですが、会社などで受けられる場合は毎年受けることをおすすめします。

20代、30代は働き盛り、また妊娠・出産の時期なので、人生の大切な時期を病気で台無しにしてしまわないよう、ワクチン接種、そして定期検診はきちんと受けましょう」