立憲民主党の代表選がきょう告示される。岸田文雄政権の支持率が低迷する中での野党第1党のリーダー選びだ。政権交代を見据え、国民の耳目を集める論戦を展開してもらいたい。

 前代表の枝野幸男氏、元首相の野田佳彦氏が早々に立候補を表明し、現代表の泉健太氏も告示直前にようやく立候補の準備が整った。

 今月は事実上の次期首相を決める自民党総裁選もあり、現総裁の岸田首相の後任に多数が名乗りを上げている。国民にとっては、与野党第1党が目指す国家像や政策が比較できる好機だ。

 野党第1党は、常に「次の政権」を担う存在でなくてはならない。

 政権の政策や予算を厳しくチェックし、問題点に対案を出して競い合う。政権が行き詰まれば、いつでも取って代われる。こうした役割が国民に評価されれば、政治に良い緊張感が生まれる。

 現状はどうか。立民の源流である旧民主党が政権奪取から3年余りで下野して以来、与党の議席数に大きく水をあけられた状態が続く。

 旧民主勢力は分裂と合流を繰り返し、政権交代の期待を高められないままだ。新代表には弱い野党から脱却する指導力が欠かせない。

 政権を担うのであれば、社会保障、経済、安全保障など幅広い分野の政策を示すのは当然だ。自民、公明両党の連立政権では解決できない課題への対策も求められる。

 中でも、自民派閥の裏金事件に象徴される政治資金の問題は国民の関心が高い。

 岸田氏は裏金事件の真相究明に踏み込まないまま関係者を処分した。与党主導で改正した政治資金規正法には「抜け穴」が温存されたままだ。

 総裁選に立候補を表明した議員も、裏金事件の再発防止策や政治資金改革への踏み込みが甘い。これも自民が長きにわたって政権に安住し、緊張感が失われていることの表れだろう。

 多くの国民が与党の対応は不十分とみている。立民には「政治とカネ」の現状を変える具体策が必要だ。

 野田氏は、企業・団体献金や政策活動費の禁止を実現すると主張する。枝野氏は、政治資金パーティーの収支を1円単位で公開することを公約した。カネをかけない政治活動を追求してほしい。

 自民の新総裁は首相に就任してすぐに、衆院の解散・総選挙に打って出る可能性がある。本来の政権選択選挙の意義に照らせば、立民代表選も首相になり得る候補を選ぶ機会である。

 共同通信社の7月の世論調査では、次期衆院選の望ましい結果として「与党と野党の勢力が伯仲する」が51・2%で最も多かった。

 1人しか当選しない小選挙区で野党候補が乱立すれば勝ち目は薄い。候補者の一本化を含め、野党連携への道筋も新代表に問われる。