箱根駅伝の名門として名高いが…

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 箱根駅伝において、総合優勝11回、出場回数65回を誇る順天堂大学陸上競技部。その名誉総監督が、学生たちからパワハラで告発されていたことが「週刊新潮」の取材でわかった。大学も選手の身に危険が生じたことを認め、名誉総監督が指導から退くと回答した。

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【写真】「殴る、蹴るの暴行」も告発された澤木名誉総監督

 告発されたのは、同大陸上競技部の澤木啓祐・名誉総監督(80=同大特任教授)。長距離走者としてメキシコ、ミュンヘンの両五輪に出場した澤木氏は、指導者として母校・順大を箱根駅伝で9度の総合優勝に導いた。その手腕を高く評価され、日本陸連専務理事まで務めている。

 事件は6月26日、千葉県印西市にある順大さくらキャンパスで起こった。澤木氏の指示の下、予選敗退となった全日本大学駅伝に関係した部員らが集められたという。

箱根駅伝の名門として名高いが…

“甘えさせるな!”

 その様子を目撃した部員はこう話す。

「10人以上の部員が集められ、澤木監督から“箱根に間に合わないぞ”と発破をかけられ、唐突に1万メートル(10キロメートル)を走るよう命じられていた。他の練習が続いていた生徒からすれば、予告なく体の調整もできていない状況でしたから、かなり過酷な状況でした」

 集合時間は16時過ぎと夕方に差し掛かっていたが、ひどく蒸し暑かったそうだ。

「マネージャーが部員に水を飲ませようとしましたが、澤木総監督は“甘えさせるな!”と激昂。両手でバッテンを示すジェスチャーをして、制止させていたのを見た人もいます」

 ゴール後、大勢の部員が膝をついて倒れ、数十分もの間、身動きが取れなくなる者までいた。寮に帰った後、熱中症のような症状を見せた部員が少なくとも4名はおり、救急搬送された者も。その中の1人は靭帯損傷と診断され、箱根への挑戦も危ぶまれているという。

 事件後、学内には、「被害者とその仲間一同」なる差出人名義の告発文が出回り、その中には「たくさんの仲間や先輩、若い先生方が殴る、蹴るの暴行を受ける姿をみているため、(中略)走ることしか出来ませんでした」とある。

大昔からやっていること

 当の澤木氏に聞くと、

「大昔からやっていることだから。走る前にパルスオキシメーターで体調を確認し、周回遅れはその場で止めさせなさいと駅伝監督に指示した。給水は暑かったら取らせるけど、あの日は“涼しいから良いだろう”と判断した」

 複数の部員が倒れた点を聞くと、

「私は見ていない。今、初めて詳細を聞きましたよ。後日、現場から熱中症があったと軽い感じで報告を受けたから、そうかといって済ませました」

 問題はないという見解のようだが、順大本部に問うとこう回答した。

「選手の安全管理は、充分な注意の元に行っているところですが、体調不良を訴える選手が出たことは誠に遺憾です。引き続き選手の安全管理を徹底していきます。尚、澤木特任教授からは陸上競技部の指導から退くと申し出がありました」

 9月5日(木)発売の「週刊新潮」では、澤木氏による日頃の暴力行為や暴言も含め、パワハラの詳細を伝える。

「週刊新潮」2024年9月12日号 掲載