ダルビッシュ有、約5億8000万円の年俸を”放棄”の舞台裏 パドレスは支払いを提案も異例決断「いや、それはしない」

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チーム合流を果たし、練習も再開させたダルビッシュ。(C)Getty Images

 38歳のベテラン投手が下した異例の決断は、関係者たちも驚かせるものだった。

 話題となっているのは、現地時間8月23日にチームに合流し、新たに15日間の負傷者リスト(IL)入りをしたパドレスのダルビッシュ有だ。

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 今季は11先発で4勝3敗、防御率3.20と好調だったダルビッシュは、5月29日のマーリンズ戦後に左脚付け根を痛めてIL入り。6月19日にパドレス傘下1Aでリハビリ登板を行ったが、右肘の炎症でメジャー復帰が見込まれていた6月25日のナショナルズ戦の登板を回避。そして、7月6日に「家族に関する個人的な事情」によりメジャー40人枠から外れ、制限リストに入っていた。

 チームから離れた後の動向はほとんど伝わることがなかった。そうした中で本人と球団のやり取りも明るみになってきた。米メディア『The Athletic』によれば、AJ・プレラーGMをはじめとするパドレス首脳陣は当初、「60日間のILに入ってはどうか。そうすれば年俸も支払われる」とダルビッシュに申告。しかし、これに本人が「いや、それはしない。復帰へのリハビリをしていない状況でお金はもらいたくない」と断ったという。

 今季年俸1500万ドル(約21億6000万円)のうち約400万ドル(約5億8000万円)を断ったダルビッシュの決断には、業界関係者も驚きを隠さない。交渉に携わったジョエル・ウルフ代理人は、『The Athletic』の取材で「私も今回のようなケースは見たことがない」とコメントしている。

 また、ウルフ代理人は、今回の異例の決断を生んだパドレスとダルビッシュの“信頼関係”を絶賛する。

「プレラーは毎日のようにコミュニケーションを取っていた。もちろん選手のことを知る術の一つの手段だ。しかし、本当に時間をかけて話を聞き、理解し、真の友人になる……フロントオフィスの重役と選手との間に、これだけの個人的なつながりが生まれることはあまりない。プレラーは一度として、ダルビッシュがチームメイトをはじめとする誰かを失望させているとか、何らかの義務があるとかと、プレッシャーをかけようとしたことはなかったんだ」

 日本でも小さくない話題となった今回のダルビッシュの行動。それはパドレスの深い絆があったからこそだったのかもしれない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]