コーヒーの飲み過ぎがカフェイン中毒を引き起こし、健康を害することはよく知られていますが、適度なコーヒー摂取が健康にメリットをもたらすという研究結果も数多く報告されています。イギリスのアングリア・ラスキン大学で生物医学教授を務めるジャスティン・ステビング氏が、「コーヒーを飲むことで得られるメリット」について解説しました。

All the reasons a cup of coffee really can be good for you

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◆コーヒーの栄養素

まずステビング氏は、コーヒーには健康にとって有益ないくつかの必須栄養素が含まれていると指摘しています。たとえば8オンス(約240ml)のコーヒーには、リボフラビン(ビタミンB2)・パントテン酸(ビタミンB5)・チアミン(ビタミンB1)・ナイアシン(ビタミンB3)といったビタミンB群や、カリウム・マンガン・マグネシウムなどのミネラルが含まれています。

また、クロロゲン酸という抗酸化作用を持つポリフェノールも豊富に含まれているため、コーヒーを飲むことは健康にいい影響をもたらすとのこと。ステビング氏は、「実際に多くの人々、特に西洋の人々は、果物や野菜よりも多くの抗酸化物質をコーヒーから摂取するでしょう」と述べました。



◆エネルギーレベルや認知能力の向上

コーヒーの持つ最もよく知られているメリットの1つが、朝一番や午後の疲れたタイミングで飲むとエネルギーレベルが高まり、精神的な覚醒度が改善されるという点です。これは主に、コーヒーに含まれる天然の興奮剤であるカフェインが、覚醒を抑制する神経伝達物質であるアデノシンをブロックすることが理由です。

その結果、ニューロンの発火が増加し、ドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質が放出され、気分や反応時間、認知機能などが向上すると考えられています。

しかし、コーヒーと認知機能の改善や気分の向上といった精神的な効果について、因果関係を解明するのは難しい場合もあるとのこと。その理由についてステビング氏は、人々は職場や友人と一緒にコーヒーを飲むことが多く、コーヒーに含まれる化学物質だけでなく、人々と触れ合う社会的側面による影響を受けている可能性があるためだとステビング氏は述べました。



◆慢性疾患のリスク軽減

適度な量のコーヒーを長期的に摂取すると、以下のようなさまざまな慢性疾患の発症リスクを軽減することができます。

1:心血管疾患

適度なコーヒーの摂取は、心臓病や脳卒中のリスク低下と関連しています。コーヒーを飲むことは心血管系の病気や死亡リスクの低下と関連しているという研究結果があり、不整脈の人がコーヒーを飲んでも害はないと報告されています。

2:2型糖尿病

コーヒーはぶどう糖を処理する体の能力を高め、2型糖尿病を発症するリスクを減らす可能性があるとのことです。

3:肝臓病

普通のコーヒーやカフェインレスコーヒーを飲んだ人では肝臓酵素のレベルがより健康的になり、肝硬変や肝臓がんのリスクが低下すると報告されています。

4:がん

コーヒーをよく飲む人は大腸がんの再発や転移のリスクが低いという研究結果が報告されているほか、大量のコーヒーを摂取する人ではがんの発症リスクが18%低いという体系的レビューの結果もあります。

5:神経変性疾患

コーヒーの摂取はアルツハイマー病や認知症のリスクを軽減するという研究結果や、コーヒーを飲む人はパーキンソン病になるリスクが低いといった研究結果が報告されています。

コーヒーを飲むとパーキンソン病を予防できるかもしれない - GIGAZINE



◆メンタルヘルスの改善

コーヒーはメンタルヘルスにもプラスの効果をもたらすことが知られており、コーヒーを飲む人はうつ病のリスクが20%減少することを示す調査結果もあるとのこと。さらに、2014年の研究では1日4杯以上のコーヒーを飲む人は自殺する可能性が53%も低いことが示されました。

◆寿命が延びる

40万人以上のデータを分析した大規模な研究では、12〜13年にわたる長期的なコーヒー摂取は死亡リスクの低下と関連していることがわかりました。ステビング氏はこの結果について、さまざまな病気に対するコーヒーの累積的な保護効果によるものかもしれないと主張しています。



コーヒーにはさまざまな健康面でのメリットがありますが、ステビング氏は適度な摂取量を心がけることと、不必要なカロリー摂取を避けるため砂糖やクリームの添加も制限することを推奨しています。また、カフェインの過剰摂取はいらだちや不安感、睡眠障害といった悪影響をもたらすため、カフェインに敏感な人は摂取量を抑えたりコーヒーを避けたりした方がいい場合もあるとのこと。

ステビング氏は、「どのような食事にも言えることですが、バランスが重要です。コーヒーの潜在的な利点と限界を理解することで、人々は毎日の習慣にコーヒーを取り入れるかどうか、十分な情報を得た上で決断することができます。私は朝の1杯を飲み続けるつもりです」とコメントしました。