GoogleのChromeによるユーザーデータの収集をめぐる裁判で、アメリカの控訴裁判所が2024年8月20日に、Googleがデータを収集していないという誤解をユーザーに与えたとして、同社に対する集団訴訟を却下していた以前の判決を覆しました。

Google has to face a class action lawsuit over Chrome’s data collection - The Verge

https://www.theverge.com/2024/8/20/24224686/google-class-action-lawsuit-chrome-sync-data-collection

US appeals court revives Google privacy class action | Reuters

https://www.reuters.com/legal/us-appeals-court-revives-google-privacy-class-action-2024-08-20/

今回の判決の発端は、Chromeの同期機能を有効にしているかどうかにかかわらずデータが収集されていたと主張する2020年の(PDFファイル)集団訴訟です。

「GoogleがChromeユーザーの閲覧履歴、IPアドレス、Cookie、固有のブラウザ識別子を、ユーザーの明示的な許可を得ないまま意図的かつ違法に収集していた」とする原告のパトリック・カルフーン氏らの主張に対し、Googleは「ユーザーはプライバシーポリシーに同意することでデータ収集についても容認していた」と反論しました。

特に争点となったのは、プライバシーポリシーの解釈です。以前使用されていたプライバシーポリシーの中でGoogleは、「Chromeを使用するために個人情報を提供する必要はありません」としており、同期機能をオンにしない限りGoogleは個人情報を受け取らないかのような印象を与えると指摘されていました。



この問題に対し、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所のイヴォンヌ・ゴンザレス・ロジャース判事は2022年12月の判決で、Google側の主張を認め、「Googleは問題のデータ収集について十分に情報を開示しており、原告はそれに同意していました」と述べて原告の訴えを却下しました。

しかし、第9巡回区控訴裁判所のミラン・D・スミス・ジュニア判事は2024年8月20日に、「集団訴訟を棄却した下級審は、合理的なChromeユーザーがGoogleにデータを収集させることに同意したかどうかを評価すべきでした」と述べて2022年12月の判決を破棄し、裁判を差し戻しました。

スミス判事は(PDFファイル)判決の中で「Googleは一般的なプライバシーポリシーを開示しながらも、ユーザーが同期機能をオンにしない限り特定の情報はGoogleに送信されないことをほのめかしてChromeを宣伝しました。合理的なユーザーは、問題となっているデータ収集に同意しているとは必ずしも理解しないでしょう」と述べています。

裁判では、「合理的な人」という言葉は考え方や行動が極端ではない、社会通念上の一般人を指します。つまり、スミス判事はこの判決で、普通の人は自分がChromeを使うだけでGoogleへのデータ提供に同意したことになるとは思わないのではないかと指摘したわけです。

原告側の弁護士であるマシュー・ウェスラー氏は「この判決に満足しており、次の裁判を楽しみにしています」とコメントしました。



一方、Googleはメディアへの声明で「当社はこの判決に同意できず、事実関係は当社に有利だと確信しています。Chromeの同期機能であるChrome Syncは、ユーザーがさまざまなデバイス間でChromeをシームレスに使用できるようにするものであり、明確なプライバシー管理機能も備えています」と述べました。

この裁判は、Chromeのシークレットモードがデータを収集していたことをめぐる以前の裁判の結果を受けてのものです。この裁判の和解条件には、ユーザーが損害賠償を求めてGoogleを個別に訴えることができるようにすることが盛り込まれており、カリフォルニア州の裁判所だけでも既に数万人のユーザーがGoogleに対する訴訟を起こしています。

GoogleがChromeの「シークレットモード」で収集された閲覧データを破棄することに同意、1兆円の価値がある勝利と原告 - GIGAZINE



なお、GoogleはChrome Syncを有効にしなくても保存されたデータにアクセスできるようにする予定ですが、IT系ニュースサイトのThe Vergeによると、「この決定は訴訟とは無関係です」とGoogleの広報担当者は述べているとのことです。