2024年7月末に発生した殺人事件に関する誤情報がSNSで拡散されたことをきっかけに、イギリス各地で反移民・反イスラムを訴える暴動が極右団体によって扇動されています。こうした騒乱を受けて、SNSなどのオンラインサービス提供者に法的責任を問う「オンライン安全法(Online Safety Act)」の改正をイギリス政府が検討していると報じられています。

UK considers forcing tech firms to remove ‘legal but harmful’ content after riots

https://www.ft.com/content/d026a8d1-26d1-494d-83dc-5ff0204388e8

King Charles sends ‘heartfelt thanks’ to police for restoring order after riots | Social media | The Guardian

https://www.theguardian.com/politics/article/2024/aug/09/online-safety-act-to-be-reviewed-after-sadiq-khan-criticism-says-minister

UK revisits social media regulation after far-right riots | Reuters

https://www.reuters.com/world/uk/uk-revisits-online-safety-act-after-far-right-riots-2024-08-09/

2024年7月29日、イギリスのサウスポート市に位置する子ども向けダンス教室が刃物を持った男に襲撃され、3人の子どもが死亡し、8人の子どもと2人の大人が負傷しました。逮捕された犯人は17歳の少年でした。

事件の直後、X上で「事件の犯人は、ボートに乗ってイギリスにやってきたイスラム教徒の難民だ」という偽情報が拡散されました。この偽情報が拡散されると共に、極右主義者による移民やイスラム教徒の排斥運動が激化し、暴動に発展。イギリス各地で暴徒と警察が衝突し、建物や車が破壊されました。

Anti-immigration protesters smash through migrant hotel in Rotherham - YouTube

発端となった偽情報を最初にSNSに投稿した女性ユーザーは、2024年8月8日に逮捕されました。現地メディアによると、女性が投稿した偽情報は極右団体の活動家やインフルエンサーによって拡散されたとのこと。さらにXのオーナーであるイーロン・マスク氏が暴動に触れて「もはや内戦は避けられない」と投稿したことも問題視され、イギリスのキール・スターマー首相はこうした無責任なSNSへの投稿を強く批判しています。

イギリスの暴動にイーロン・マスクが「内戦は避けられない」と投稿 - GIGAZINE



しかし、マスク氏はスターマー首相からの批判に、「なぜイギリスではすべてのコミュニティが保護されないのでしょうか?」というメッセージを、スターマー首相にリプライをつける形でポスト。さらに「TwoTierKeir(ダブルスタンダードのキール)」というハッシュタグを付けて反論をアピールしました。



アメリカの連邦議会議事堂襲撃事件など、近年はSNSの拡散力が暴力事件を招いているという批判があります。イギリスでは、暴力やテロを扇動するコンテンツの監視を怠るなど、法律に違反したと判断されたSNS運営企業に対して世界売上高の最大10%に当たる罰金を科すオンライン安全法が2023年10月に可決されましたが、記事作成時点では施行されておらず、さらにこのオンライン安全法で罰金を科せられるのは「暴力の扇動やヘイトスピーチなどの違法コンテンツの取り締まりを怠った場合」のみとなっています。

ロンドンのサディク・カーン市長は、「偽情報などの『合法だが有害なコンテンツ』の拡散を許した場合」も処罰の対象にするよう、オンライン安全法の改正を検討すべき」と発言しました。



トーマス・シモンズ内閣府大臣はカーン市長の発言を受けて、「オンライン安全法の法的枠組みは検討中です。オンライン安全法に関連して進める必要がある場合、私たちは行動を起こすでしょう」とラジオ番組で述べ、オンライン安全法を見直す可能性を示唆しています。また、スターマー首相は「今回の騒乱を受けて、SNSをより幅広く検討する必要があります。SNSは無法地帯ではありません」と述べました。