〈パリ五輪〉やはりセーヌ川の水は汚かった…水質悪化で「トライアスロン」競技変更なら大混乱必至、“選手ファースト”の精神はどこへ?
パリオリンピック開催前から問題視されていたセーヌ川の水質問題で、ついに実害が発生した。7月28日、トライアスロン競技の「スイム」練習が予定されていたが、水質悪化を理由にして、中止と発表された。
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開会式でセーヌ川の汚さが世界中に知れ渡る
パリ市内の中心部を流れるセーヌ川は、ヨーロッパで最も有名な川の一つとして観光スポットにもなっている一方で、訪れた人をガッカリさせるほど“汚い”ことでも有名だ。
パリ市は今回五輪を誘致するにあたって、14億ユーロ(約2400億円)を投入して浄化作戦を決行したが、五輪開催直前の6月に28回水質調査をしたところ、競技実施の基準を満たしたのは3回だけだったことが明らかになっている。
7月17日には、65歳のイダルゴ市長が自ら川で泳ぎ、水質が改善したことをアピールしていたが、映像越しでも川は濁って汚れていることは明らかで、とても人が泳げるような場所には見えなかった。
7月27日(現地時間26日)には、このセーヌ川を舞台に開会式が行われたが、このとき初めてセーヌ川の汚染の実情を知ったという人も多いようで、テレビの視聴者からは〈セーヌ川で開会式するのオサレやん、と思ってたけど水めためたに汚いな〉〈セーヌ川、道頓堀より色汚いな。空撮やと特に〉〈華やかなパフォーマンスと川の色の汚さのコントラスト〉〈開会式ちょっと見てるけどセーヌ川、きったねえ色してるな〉とドン引きの声もあがっていた。
式の中では、このセーヌ川から噴水があげられており、その水飛沫が選手にかかってしまうことが心配されていたが、トライアスロン競技にいたっては、その川を1.5kmも泳がなければならない。
今回のトライアスロンのルートは、浮桟橋(ポンツーン)から始まり、セーヌ川Ⅲやシャンゼリゼ通り、モンテーニュ通りなどを通過し、ゴールのアレクサンドルⅢ世橋を目指すという構成。
フランスのトライアスロン選手、レオ・ベルジェールは「オリンピックに出場しながら観光できるのですから、かなり特別なものになるでしょう」と太鼓判を押している。
確かにテレビで見ている分には観光気分で楽しめていいが、パリのPRもかねてセーヌ川の汚水の中を泳がなければならない選手はたまったものではないだろう。SNSでも〈利権チラチラ見えて選手ファーストではない気がする〉〈選手ファーストとは程遠い〉など呆れ声もあがっている。
選手の計画もパーに? 直前でのレースプランの変更
なお、競技本番までに水質が基準値を満たさない場合は、日程を数日ずらしての開催、それでも難しい場合は、「スイム」を取りやめて、陸上競技と自転車競技のみの「デュアスロン」に切り替えると発表されている。
直前に競技が変わってしまうことで、選手たちに影響はどれほどあるのだろうか。トライアスロンYouTuberのヒロさん(@hiro_triathlon)に見解を聞いた。
「デュアスロンに切り替わった場合は当然、競技順位に影響が出ると考えます。 通常であればスイムが得意な選手は次のバイクパートに上位で入れるため、レースを有利な展開で進められます。しかし、スイムが中止になるとそのあたりで不利な影響を受ける選手もいるでしょう。
また、トライアスロンからデュアスロンに切り替われば、選手たちは全員、レース直前でプランを変更せざるを得ない状況にもなります。通常であれば、スイム後の順位を予想した上で、バイクパートでの戦略を練っているはずですので。ただ、いまだどのような競技順のデュアスロンになるかは正式発表されていないと思いますので、まだなんともコメントし難い状況ではあります」(ヒロさん)
4年に1度の晴れ舞台のオリンピックだからこそ、「選手ファースト」の運営をのぞみたいものだ。
取材・文/集英社オンライン編集部