2024年上半期は、基本に立ち返り(ブランド構築を優先する動き)ながら、新たな領域(コマースメディア、ジェネレーティブAI)も開拓したいというマーケターの欲求が奇妙に組み合わさった半年だった。同時に、予算が圧縮され、マーケターはより少ない予算で多くを成し遂げることへの期待に対処し続けており、さらに、今この瞬間ではないが注意を払うべき問題(迫り来るTikTokの禁止など)から目を背けているように見える。2024年下半期が本格的に始まる前に、上半期のマーケターの優先事項を振り返ってみよう。

ジェネレーティブAI

トイザらス(Toys"R"Us)が、オープンAIのSoraを使用して制作したCM

2024年上半期を通じて、マーケターとエージェンシー幹部はこぞって、効率化とスピードアップに役立つツールとしてジェネレーティブAIを売り込み続けてきた。シェイパーミント(Shapermint)やクラーナ(Klarna)、USバンク(U.S.Bank)などはすでに、ジェネレーティブAIの活用をアピールしている。マーケターによるジェネレーティブAI活用の多くは、それを用いたCM制作より、チャットボットや、調査、翻訳、パーソナライゼーションに焦点が当てられてきた。ジェネレーティブAIによるCM制作が話題になっているが、ほとんどのマーケターはまだその道を歩んでいない。トイザらス(Toys"R"Us)は6月下旬、オープンAI(OpenAI)のSoraを使用し、主役のイメージが終始一貫しておらず、リアルすぎるようでリアルとは程遠い、まさに不気味の谷のようなビジュアルの奇妙なCMを制作し、話題をさらった。まさに不気味の谷だ。マーケターにとって、ジェネレーティブAIの売りが効率とスピードだとしたら、動画ツールはまだそれを実現していない。

原点回帰

誰もがピカピカの最新技術を追い求めるなか、2024年上半期を原点回帰に費やしたマーケターもいる。近年、ブランド構築よりパフォーマンスが重視されているのは驚くべきことではない。マーケターの財布のひもはCFOに握られており、予算の削減が続くなか、マーケターは自分たちの取り組みがうまくいっていることを証明する必要がある。予算が有効活用されていることをCFOに示すため、パフォーマンスを優先することは理にかなっている。しかし近年、一部のマーケターにとって、そのパフォーマンス重視が行きすぎていたのかもしれない。マーケターは基本に立ち返り、優先順位を見直し、ブランド構築のためのRFP(Request for Proposal、提案依頼書)を出し、ブランドポジショニングを成長とより密接に結び付けるようになった。これらはすべて、CMOの役割が排除されるのではなく、いわゆる進化を遂げていることに起因する。

すべてがアドネットワークに

リテールメディアの台頭は、チェース(Chase)のような金融ブランド(ファイナンシャルメディアネットワーク)やユナイテッド航空(United Airlines)のような航空会社(トラベルメディアネットワーク)がマーケター向けのサービスを発表するなど、従来の小売企業をはるかに超えている。消費者データを大量に保有するブランドは、そのデータをほかの広告主に売り込むことで、収益を増やすことができると気づいたようだ。つまり、今やすべてがアドネットワークだということだ。あるいは、少なくとも一部のブランドはそうであることを望んでいるように見える。この傾向は今後も続くだろう。リテールメディアへの支出は増加の一途をたどっている。その広告費を狙わない手があるだろうか?イーマーケター(eMarketer)のデータによれば、リテールメディアは2023年、広告費全体の13%を占めていたが、2024年は15.2%に増加する見込みだ。イーマーケターはまた、この割合は2027年までに21.8%に達すると予測している。とはいえ、いずれ何らかの統合や取りまとめが必要になるだろう。サービスのテストに必要なリソースを持つマーケターはほとんどいないからだ。

TikTokの禁止?

TikTok(ティックトック)は近年、大手マーケターのソーシャルメディア予算の定番となっているため、その迫り来る禁止におおむね無関心を貫いていることはいささか驚きだ。おそらく意図的にそうしているのだろう。TikTokも自身の禁止にあまり言及せず、通常営業しているようで、6月のカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルでもマーケターへの売り込みを続けていた。もしそうだとしたら、なぜマーケターが心配しなければならないのだろう? TikTok消滅の危機は過去にも何度かあり、マーケターはもう慣れているのかもしれない。また、広告費を移動させ、複数のプラットフォームでインフルエンサーと提携するための代替策が用意されている可能性もある。いずれにせよ、TikTok禁止の脅威は2024年半ばの時点で、マーケターの大きな心配事ではないようだ。[原文:Marketing Briefing: What to make of the major marketing trends of the first half of 2024]Kristina Monllos(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:戸田美子)