「透析後のふらつき」を抑えるためにできることをご存知ですか? “透析前”に医師に伝えておくべきこととは
調査によると、約30%の方が透析後にふらつき・めまいを感じたことがあると言われています。透析は、血液をきれいにする大切な治療なのでやめることはできませんが、このような副作用の対策はできないのでしょうか。医療法人社団大坪会 東和透析クリニックの大坪先生に伺いました。
※この記事はMedical DOCにて【血液透析中や透析後の不快な症状、その原因と対処法を解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
大坪 茂(東和透析クリニック)
名古屋市立大学医学部卒業。東京女子医科大学病院などで腎臓内科の診療を積んだ後、2015年に「東都三軒茶屋クリニック」を開院、2019年に「医療法人社団大坪会」理事長就任、2022年、東京都足立区に「東和透析クリニック」を開院。安心と癒しを感じる医療の実現に日々努めている。日本内科学会専門医・認定医、日本透析医学会認定指導医・専門医・評議員、日本腎臓学会指導医・専門医。東都大学幕張ヒューマンケア学部臨床工学科教授。
編集部
今まで見てきた項目は、医療従事者がチェックしているのですか?
大坪先生
はい。色々な検査をしているのは、これらのリスクを避けるためでもあります。ぜひ、ご理解ください。また、透析を受ける間隔は「中2日」の場合と「中1日」の場合があります。休み明けの「中2日」で体内の水分量が多ければ、無理せずにドライウェイトより少し残し、週末にかけて引ききるといった方法も考慮します。また、血圧低下に対し、いろいろな手法・機器が開発されてきました。
編集部
例えば、どのような方法でしょうか?
大坪先生
実際に血圧が下がり過ぎた場合は、補液をおこなって血管内の水分を補います。10%塩化ナトリウムという濃い塩分を注射することで血中の塩分濃度を高め、血管の外の水分が血管の中に引き込まれやすくすることもあります。また、透析液の温度調整も考慮します。低温の透析液を用いれば、血管は収縮して低血圧が起こりにくくなります。さらに透析方法の面で言うと、継続的に大量に補液をおこないながら透析をおこなう「オンライン血液透析濾過(on-line HDF)」という方法や、一定時間ごとに補液をおこないながら透析をする「間歇補充型血液透析濾過(I-HDF)」という方法も使われるようになってきました。興味がございましたら、どのような方法の透析が可能か、お通いの医療機関に問合わせてみてください。
編集部
もし、冒頭のような低血圧の症状があったら、事前の診察時に申告しておくべきですか?
大坪先生
ぜひ、お伝えください。検査では、把握できないこともあります。「多少ふらつくのが当たり前」だと思って諦めず、スタッフにお伝えください。ドライウェイトの設定を変えるだけで解決する場合もあります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
大坪先生
透析中、血圧が下がる原因として、血圧を下げる薬の影響や透析の際に使用する抗凝固剤や透析の膜に対するアレルギー反応などもあります。しかし、多くの場合が、除水速度が速いか、ドライウェイトの設定が低いためです。季節や食事量、運動量によって、患者さんの真のドライウェイトは毎日変化しており、ドライウェイトの設定が適切かどうか各透析の都度、評価し直すことが大切です。透析後半や透析後に下肢つりやふらつき、耳閉感、耳鳴りといった症状が出た場合は、ドライウェイトの設定が厳しい可能性がありますので、スタッフにご相談ください。