「子宮筋腫の原因」はご存知ですか?原因となる可能性の高い食べものも医師が解説!
子宮筋腫の原因とは?Medical DOC監修医が子宮筋腫の原因・大きくなる原因・できやすい人の特徴・原因となる可能性の高い食べもの・妊娠や出産への影響などを解説します。
≫「子宮筋腫の主な5つの症状」はご存知ですか?前兆となる初期症状も医師が解説!監修医師:
阿部 一也(医師)
医師、日本産科婦人科学会専門医。東京慈恵会医科大学卒業。都内総合病院産婦人科医長として妊婦健診はもちろん、分娩の対応や新生児の対応、切迫流早産の管理などにも従事。婦人科では子宮筋腫、卵巣嚢腫、内膜症、骨盤内感染症などの良性疾患から、子宮癌や卵巣癌の手術や化学療法(抗癌剤治療)も行っている。PMS(月経前症候群)や更年期障害などのホルモン系の診療なども幅広く診療している。
「子宮筋腫」とは?
子宮筋腫とは、子宮という女性特有の臓器を形成している平滑筋(へいかつきん)という筋肉の一種から発生する良性の腫瘍(しゅよう:できもの)です。
子宮筋腫があっても無症状で、健康診断や婦人科検診などで発見されることもあります。
また、子宮筋腫から出血を起こすこともあります。石灰化(せっかいか;筋腫に石灰の沈着が起こる現象)や壊死(えし;組織が死んでしまうこと)などを起こしたりすることもあります。
子宮筋腫は、年齢が低い方から高齢の方まで、今や女性の1/3~1/2と高頻度に見られる疾患です。
今回の記事では、子宮筋腫の発生リスクとなるような食べものや、子宮筋腫が大きくなるようなリスクについて解説していきます。
子宮筋腫の種類
それでは、子宮筋腫の種類について解説しましょう。子宮は外側から漿膜(しょうまく)、子宮筋層、そして子宮内膜(ないまく)という3層の構造となっています。筋腫がどこにできるかによって、以下の3つの種類に分けられています。
粘膜下筋腫(ねんまくかきんしゅ)
粘膜下筋腫は子宮内膜のすぐ下に発生する筋腫です。このタイプの筋腫は子宮腔内に向かって成長し、しばしば月経異常を引き起こします。
過多月経や過長月経、不正性器出血が主な症状です。また、月経痛が増加することや貧血を引き起こすことも見られます。
筋層内筋腫(きんそうないきんしゅ)
子宮筋腫で、もっとも多い種類です。大きくなるとこの筋腫による圧迫症状が引き起こされることがあります。
月経量の増加、月経期間が長くなる、骨盤痛や腰痛が一般的な症状です。また、子宮筋腫によって子宮自体のサイズが大きくなってしまい、膀胱の圧迫により頻尿や腸管の圧迫で便秘を引き起こすことがあります。
漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)
漿膜下筋腫は子宮の外側の漿膜下に発生する筋腫です。このタイプの筋腫は子宮の外に向かって成長し、周囲の臓器を圧迫することがありますが、かなり大きくなるまで症状が出にくい筋腫でもあります。
子宮筋腫が子宮本体から離れ、細い茎のようなものでつながる、有茎(ゆうけい)性漿膜下筋腫というものもあります。この茎がねじれてしまうことがあり、その場合には急に激しいお腹の痛みをともなうこともあります。
子宮筋腫の主な原因
子宮筋腫の正確な原因については、現時点では明らかにはなっていません。
そこで、ここでは子宮筋腫の主な原因として考えられているものについて解説しましょう。
初経が早い
初経が早い、つまり月経周期が早まると、生殖年齢の間に子宮筋腫の細胞分裂の回数が増加します。すると、子宮筋腫の増殖を抑える役割を果たすための遺伝子が変異してしまうリスクが高くなる可能性があります。
初経が早いことそのものについては、対策をとることが難しいです。そのため、過多月経や月経痛が重い(月経困難症)といった症状がある場合には、産婦人科などを受診するようにすることが望まれます。
子宮筋腫の方が家族にいる
子宮筋腫の家族歴がある、つまり家族に子宮筋腫の方がいるということが子宮筋腫発症のリスクと考えられています。
家族に子宮筋腫の方がいる場合には、症状がなくても定期的に婦人科検診を受けるようにした方がよいでしょう。
加齢
加齢とともに、子宮筋腫の有病率が上がるということがわかっています。
エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンによる刺激が、20~30年にわたって続くことによる可能性もあります。
高血圧
子宮筋腫と動脈硬化のリスク因子との関係について調べた研究があります。
その結果、高血圧の病歴がある方や、薬物治療を要する高血圧などにおいて子宮筋腫のリスクが増加したということです。
高血圧は食塩の摂り過ぎなどが原因となる病気で、特に自覚症状もないことが多いです。健康診断などで高血圧を指摘された場合には、減塩や運動などの生活習慣改善に加え、必要であれば内科などを受診するようにしましょう。
肥満
肥満が子宮筋腫のリスク要因となる可能性があります。
これは、体脂肪が増加すると体内で女性ホルモンであるエストロゲンが過剰に産生され、子宮筋腫の細胞が増える原因となる、といったメカニズムなどが考えられています。
肥満はメタボリック症候群などの病気の原因ともなります。太り過ぎないように、健康的な食生活を心がけ、適度な運動をするようにしましょう。
子宮筋腫が大きくなる原因
それでは、子宮筋腫が大きくなってしまう原因と考えられていることについて説明します。
妊娠
妊娠によって、約20%の方が筋腫が大きくなるとされています。しかし、筋腫の増大は妊娠の初期に限られ、多くは次第に縮小していくとされています。
子宮筋腫をお持ちの方については、妊娠した際にはかかりつけの産婦人科でしっかりと相談し、経過をみてもらうようにしましょう。
ストレス
ストレスに対処するために生成されるホルモンが、子宮筋腫の成長を刺激してしまうことがあります。
リラクゼーションテクニックや軽い運動などを行うことで、ストレスとうまくつきあっていくことが大切です。
女性ホルモンの作用
女性ホルモンの一種であるエストロゲンの働きによって、子宮筋腫が大きくなることが判明していいます。このため、子宮筋腫は女性ホルモンの働きがもっとも活発となる性成熟期に多くみられるようになります。30代後半から40代になり、筋腫が大きくなって過多月経(月経の際の出血が多くなる)などの症状が現れることがあります。また、無症状でも、婦人科検診などで見つかる場合も少なくはありません。閉経後には筋腫は縮小してくことがほとんどです。逆に閉経後に筋腫が大きくなって来る場合は、他の疾患の可能性もありますので、婦人科受診が良いと思います。
子宮筋腫ができやすい人の特徴
子宮筋腫ができやすいと考えられる特徴を述べていきます。
メタボリックシンドロームである
お腹周りが男性で85cm、女性で90cm以上、かつ血圧・血糖・脂質の2つ以上が基準値を超えるとメタボリックシンドロームと診断されます。
BMI(体格指数)や血圧、中性脂肪、そして空腹時血糖値などが高いと、子宮筋腫のリスクも高くなる可能性があるとされています。
妊娠歴がない
妊娠歴がない方も、子宮筋腫のリスクが高くなる可能性があるとされています。
座りっぱなしの時間が長い
女性が毎日6時間以上座って余暇を過ごした場合、閉経前に子宮筋腫を発症するリスクが2倍になる可能性があるという研究があります。
なぜかという点についてはわかっていないのですが、座りっぱなしが肥満と関連しているのかもしれません。
いずれにしても、運動不足は肥満や高血圧のリスク因子にもなります。やりすぎないようにすることは必要ですが、適度な運動をするようにしましょう。
子宮筋腫の原因となる可能性の高い食べもの
それでは、子宮筋腫の原因となったり、大きくなったりすることにつながる可能性がある食べものについて述べていきましょう。
ソーセージやハムなどの加工品
牛ひき肉などの赤みの肉や、ハムなどを多くとると、子宮筋腫のリスクが高くなるのではないかと言われています。
飽和脂肪酸の摂り過ぎなどによるものかもしれないといわれています。そのため、脂肪分の低いお肉を選ぶようにしましょう。
アルコール
ビールやワイン、蒸留酒などのアルコール飲料が、子宮筋腫のリスクにもつながる可能性があるとされています。
アルコールの摂取については、適量を心がけるようにしましょう。
高脂肪乳製品
バターや生クリームなどの高脂肪の乳製品は、エストロゲン産生の増加を引き起こす可能性があり、子宮筋腫の進行に関連している可能性があります。
食事の一環として、低脂肪または無脂肪の製品を選ぶと良いでしょう。
子宮筋腫の検査法
超音波検査
超音波を使い、子宮内部の筋腫を確認する方法です。経腟(けいちつ)エコーや、経腹部エコーがあります。痛みがなく、外来で行えるため、最も一般的な検査方法です。産婦人科での検査となります。
通常、入院不要で、当日中に帰宅可能です。
内診
内診は、医師が直接、指や専用の器具を使って子宮や卵巣の状態を触診する診察法です。子宮の大きさや形、位置、硬さを確認し、筋腫の有無やその影響を評価します。産婦人科医が行います。
内診は外来で行われるため、検査後すぐに帰宅可能です。内診自体は数分程度で終わります。
MRI(磁気共鳴画像法)
産婦人科で検査を受けることになります。
MRI(magnetic resonance imaging;磁気共鳴画像法)は、磁場と電波を使って体内の詳細な画像を撮影する方法です。筋腫の位置や大きさ、種類を正確に評価できます。
通常は入院不要で、当日中に帰宅可能です。
子宮筋腫ができると妊娠や出産に影響はある?
子宮筋腫は妊娠や出産に影響を及ぼすことがあります。筋腫の位置や大きさによっては、不妊の原因となることもあります。また、妊娠中に筋腫が大きくなることがあり、これが原因で流産や早産のリスクが高まることがあります。さらに、出産時に筋腫があると陣痛が弱くなる原因になったり、赤ちゃんの通り道である産道を狭くさせたりして、分娩が困難になることがあり、帝王切開が必要となる場合もあります。
「子宮筋腫の原因」についてよくある質問
ここまで子宮筋腫の症状を紹介しました。ここでは「子宮筋腫の原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
子宮筋腫はストレスが原因でできることはありますか?
阿部 一也 医師
ストレスが直接的に子宮筋腫の原因になるとは言い切れませんが、ストレスはホルモンバランスに影響を与えることがあります。その結果として筋腫の成長が促進される可能性があります。
性行為の影響で子宮筋腫ができることはありますか?
阿部 一也 医師
性行為自体が子宮筋腫の原因になることはありません。ただし、性行為によって筋腫が刺激されることで痛みや出血が起こることがあります。
子宮筋腫を放置するとどうなりますか?
阿部 一也 医師
子宮筋腫を放置すると、筋腫が大きくなり、症状が悪化する可能性があります。例えば、過多月経や貧血、骨盤痛、頻尿、便秘などの症状が現れることがあります。さらに、筋腫が大きくなると不妊や妊娠中の合併症のリスクも高まります。そのため、定期的な検診と適切な治療が重要です。
編集部まとめ
今回の記事では、子宮筋腫の原因として考えられている理由や食べものなどについて解説しました。
子宮筋腫の原因についてはまだわかっていない部分もあります。
しかし、無症状の子宮筋腫を早期発見したり、子宮頸がん予防をしたりといった意味でも、定期的に婦人科検診を受けるようにしましょう。また、今回の記事でも挙げたように、健康的な生活習慣を心がけることが大切です。子宮筋腫だけでなく、メタボリックシンドローム予防にもつながるため、高糖質・高脂質の食事は控え、定期的な運動を心がけるようにしたいですね。
「子宮筋腫の原因」と関連する病気
「子宮筋腫の原因」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器科の病気
高血圧内分泌内科の病気
高コレステロール血症
糖尿病メタボリックシンドローム婦人科の病気
子宮内膜症多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
子宮筋腫の原因としては、女性ホルモンの関与や生活習慣などに起因するものが考えられています。
「子宮筋腫の原因」と関連する症状
「子宮筋腫の原因」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
過多月経
月経痛
不正出血貧血
骨盤痛
頻尿便秘腹部膨満感
腰痛
不妊これらの症状は子宮筋腫が原因で引き起こされる可能性があります。症状が現れた場合は、早めに医師の診察を受け、適切な診断と治療を受けることが重要です。
参考文献
産婦人科 診療ガイドライン ―婦人科外来編2020(日本産科婦人科学会)
子宮筋腫(日本婦人科腫瘍学会)