この数年でパソコンの使い道として人気を集めているのがゲームです。もちろん以前から家庭用ゲーム機では体験できないような高画質なグラフィックを体験したり、オンラインでの協力プレイや対戦要素に富んだゲームをパソコンで遊んでいた人は多くいましたが、コロナ禍の巣ごもり需要以降はよりカジュアルに、パソコンでゲームを楽しむ人が増えています。

筆者自身も「以前からパソコンでゲームを楽しんでいた側」の一人ですが、自身の経験、体験として身の回りにパソコンでゲームを楽しんでいる友人が増え、これが局所的な流行りではなく世の中全体での流行りなんだと感じています。

ただその流行りに乗ろうにも、パソコンでゲームを遊ぼうにも今持っているパソコンの性能ではゲームが満足に動かないと悩んでいる人が多くいるのも事実です。

しかし新たにパソコンを購入をするには予算がなかったり、最近はデスクトップ型ではなくノート型のパソコンを限られたスペースで使うなど、設置場所や利用場所の問題もあります。また学校や仕事でもパソコンを使うとなると、ゲーミングパソコンの派手な見た目はなかなか手が出ないといった悩みも出てきます。

そんな悩みを解決してくれるのが「外付けGPU」です。今回はノートパソコンに繋ぐことでゲームを快適に遊ぶことができる外付けGPU「GPD G1」をお借りし、本当にゲームを満足に遊ぶ性能を後から追加できるか実際に試していきます。

薄くて軽い外付けGPU、試してみるとハイパワーで便利。Radeon RX 7600M XT搭載「GPD G1」レビュー

ノートパソコンとはケーブル1本で接続。手軽に使えるGPD G1

まずはGPD G1の仕様や本体を確認していきます。GPD G1に搭載されているGPUはAMDの「Radeon RX 7600M XT」です。同社のGPUとしては本稿執筆時点で最新世代の「RDNA 3アーキテクチャ」で製造されるGPUで、ゲーミングノートパソコンに搭載されるGPUと同一仕様のGPUです。

ビデオメモリは8GBのGDDR6と、こちらも多くのゲームを遊ぶには十分な容量・仕様のものが搭載されています。またGPUの機能として、対応ゲームをよりなめらかに動作させる「AMD FidelityFX Super Resolution(FSR 3)」もサポートしています。

パソコンとの接続も簡単です。ノートパソコンの「Thunderbolt 3/4」の端子とGPD G1をケーブル1本で繋ぐだけで使用可能です。ノートパソコンの充電がUSB Type-Cを用いるタイプであれば、GPD G1からノートパソコンに給電を行えるため、ノートパソコンに付属しているACアダプタを別途繋ぐ必要はありません。

またGPD G1の本体サイズはスマートフォンを二回りほど大きくした程度とパソコンの周辺機器としては小さく、机の上に常に置いて使っても邪魔になりません。

さらに外部接続端子も豊富で、外部モニターを接続できるDisplayPort 1.4a端子が2つ、HDMI 2.1端子が1つ、さらにUSB 3.2 Standard-A端子が3つにSDカードスロットまで備わっています。モニターやキーボード、マウスをGPD G1に繋いでおけば、あとはノートパソコンとケーブル1本で繋ぐだけで大画面でゲームを楽しむことが可能です。

そのため持ち運び重視のモバイル型のノートパソコンを、普段は外や家の好きな場所で使い、ゲームのときだけGPD G1を繋ぐフレキシブルな使い方を行うことができます。

GPD G1に搭載されているGPUはAMDのRadeon RX 7600M XT、最新世代のGPUです。

GPD G1本体。天板は高級なスーツケースのようなデザインです。冷却のための吸気も天板側から行います。

パソコンとの接続には多くのパソコンに対応するThunderboltと、今後普及が期待されるOCuLinkに対応しています。

豊富な外部接続端子。電源も内蔵しています。

端子のない面は排気口です。設置時はここを塞がないよう注意しましょう。

GPD G1のサイズは非常にコンパクト。iPhone 15 Proと比べてみましたが二回りほど大きいくらいです。

ノートPCとの接続もケーブル1本なので簡単、スッキリです。

GPD G1を繋いで、ゲーム性能の向上をチェック

ここからは実際にノートパソコンとGPD G1を接続し、ゲーム性能がどれだけ向上するか確認していきます。

ノートパソコンは富士通クライアントコンピューティングの「FMV LIFEBOOK UH(WU2/H1)」を用意しました。CPUにCore i7-1360P、32GBのメモリを搭載し、14型のディスプレイに重量は1kgを切るモバイルノートパソコンです。そのままでは全くゲームには向かないモデルですが、GPD G1を繋ぐとどこまでゲーム性能が向上するのでしょうか。

テストには定番のベンチマークソフトを用い、それぞれGPD G1を繋がない状態・繋いだ状態で計測を行っています。

まずは3Dグラフィックス性能の統合ベンチマークソフト「3DMark」を使い、ゲーム性能がどれだけ向上したかを確認しました。今回はレイトレーシング性能を計測する「Port Royal」、DirectX 12での性能を計測する「Time Spyシリーズ」、DirectX 11での性能を計測する「Fire Strikeシリーズ」を実行しました。

GPD G1接続時は最大で約5倍の性能向上です。

結果として、どのテストであってもGPD G1を接続することで約3〜5倍のスコアを記録しました。テスト内容の中でも軽量なFire Strikeでのテストでも約3倍の性能向上を確認することができます。またノートパソコンの内蔵グラフィックス機能はレイトレーシングに対応していないため、GPD G1を繋いだことでレイトレーシングに対応したゲームでは、より高画質なグラフィックを楽しむことができるともいえます。

ではより実際のゲームプレイ時の性能差はどのくらい出るのでしょうか。定番の「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」「ファイナルファンタジーXV ベンチマーク」の3本を実行し、GPD G1によるゲーム性能の向上を確認します。

なお本テストについては、GPD G1を繋がない状態では「ノートパソコンのディスプレイ解像度が最大」となるため、GPD G1の接続有無に関係なく最大解像度は「1920×1080ピクセル」でのテスト結果で比較を行っています。

またテスト時の画質設定はどちらもベンチマークテスト内で設定できる最高画質にてテストを行っています。

実際のゲームプレイ時の環境に近いテストでも効果は絶大。

テスト結果は先ほどの3DMark同様に、どのテストでも3〜5倍程度、GPD G1を接続した際に性能向上がみられるものになりました。

「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」は要求される性能、テスト内容が一昔前のゲームになるため、非常にコンパクトなGPD G1であってもデスクトップパソコンでの実施結果に近い、かなり良好なテスト結果を得ることができました。

「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」では同じファイナルファンタジー14であっても、現在のゲーミングパソコンの標準的な性能を要求スペックとするよう改められていますが、それでも十分に快適に遊べるといった結果を残しています。

また「ファイナルファンタジーXV ベンチマーク」ですが、こちらは現在もパソコンで遊ぶには重量級と評価されるゲームタイトルであり、ベンチマーク結果としてはGPD G1を繋いだ状態でも他と比べるとスコアが振るっていません。が、テスト条件にも書いたように最高画質設定での結果ですので、実際にプレイ時に少しグラフィック設定を軽くなるよう調整すれば十分に快適に遊べるはずです。

今回のテストはGPD G1をノートパソコンに繋ぐことでのゲーム性能の向上のテストですが、追加でパソコンの総合性能をスコア化できる「PCMark10」も実行しました。

GPUはゲームだけでなく、ブラウジングや画像や動画の編集でも活用されます。PCMark10ではこうした通常のパソコン操作における快適度を計測するため、GPD G1を繋ぐことで普段使いも快適になるのかを計測してみたというわけです。

結果としてはゲーム性能ほどの差ではありませんが、GPD G1を接続した方がパソコンの日常的な操作においても性能の向上が見込めることがわかりました。

目的としてゲーム以外を快適にしたい場合にGPD G1の導入のメリットは薄いのですが、もしゲーム性能の向上を目的に導入し、リモートワークなど自宅でパソコンを使う時間があるのであれば、繋いで使った方がより快適に使えるということは覚えておいて損はないでしょう。

日常的なパソコン操作でもGPD G1の効果は得られます。

小さくてもパワーは十分。ケーブル一本でPC体験全体が快適に

GPD G1によるノートパソコンのゲーム性能向上の効果は絶大です。単体ではPCゲーミングに堪えない非力な軽量PCでも十分なGPU性能を利用できるようになり、設定次第で快適なゲームを楽しめるようになります。今回試用していて少し気になったのは、高負荷時には65デジベル前後と少し耳につく動作音くらいでしょうか。

対応するPCに接続するだけで性能を継ぎ足せるため、パソコンの買い替えに比べれば安価に、手軽にゲームを十分に遊べる性能を手に入れることができるのはGPD G1にしかない魅力といえるでしょう。