【片田 珠美】優秀な30代女性が休職まで至った「まさかの原因」…意外と多い「陰で足を引っ張る人」の正体

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根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。発売たちまち5刷が決まった話題書『職場を腐らせる人たち』では、ベストセラー著者が豊富な臨床例から明かす。

陰で足を引っ張る人はどこにでもいる。顔を合わせたときは愛想よく笑顔で接しているのに、陰では事実無根の悪い噂を言いふらしたり、誹謗中傷する文書をファックスで送ったりする。面と向かって直接攻撃するわけではなく、遠回しにこそこそと打ちのめそうとするので、その悪意や敵意をなかなか認識できない。そのため、気づいたときには自分が窮地に陥っていることも少なくない。

おべんちゃらの裏に隠されていた悪意

デザイン系企業に勤務する30代の会社員の女性は、同期の女性社員のなかで最初に主任に抜擢されたエースだった。上司に自分の能力を認めてもらっているという自負もあったし、仕事にやりがいを感じてもいた。ただ、部下のなかには自分より年上のパートタイマーや契約社員の女性も何人かいて、やりにくいこともあった。

そんな彼女が仕事の愚痴をこぼすようになった相手は、いつも一緒にランチを食べていた同じ大学出身の20代の後輩女性社員だった。後輩は相槌を打ちながら静かに聞き、ときには「先輩は私の憧れです」「先輩みたいなできる女になりたいなあ」などと言ってくれた。後輩との会話が息抜きになっていた彼女は、やがて愚痴をこぼすだけでなく、新しい企画についての相談までするようになった。

しばらくすると、この女性の周囲で変化が起こり始めた。直属の上司から、些細なことで厳しく叱責されるようになったのだ。一体何が起こったのか理解できず、上司から受けた仕打ちに対する不満や怒りを後輩にぶちまけたこともある。

上司からの仕打ちはますます厳しくなり、ついに「君には、部下を指導する力がない」と言われ、平社員に降格させられた。降格理由を尋ねても、納得する説明は得られなかった。そのため、すっかり自信を失って落ち込み、出勤しようとすると吐き気がするようになってしまった。

心身の不調が続いたため、内科を受診して検査を受けたが、異常は見つからなかったということで、紹介されて私の外来を受診した。診断書を提出して休職することになった彼女は、休職中にさらにショックな事実を知らされた。例の後輩が主任に昇進し、おまけに自分が企画を出していたプロジェクトの責任者に任命されたのだ。その事実を電話で同僚から聞いて、なぜ上司の態度が急に変わったのか、やっとわかったという。

おそらく、後輩は「憧れ」の先輩に取って代わるために、自分が聞いた愚痴や上司に対する不満を多少ふくらませて当の上司の耳に入れていたのだろう。このように、他人から聞いた話に尾ひれをつけて吹聴し、ターゲットを引きずりおろすことによって、自分がのし上がろうとする人間はどこにでもいる。

つづく「『君が取引先の社長の妻と不倫して…』金か異性にまつわる悪い噂を流す『職場を腐らせる人たち』」では、事実無根のネガティブ情報を流すのに、もっと手の込んだ方法を用いた衝撃の事例を深堀りする。

「君が取引先の社長の妻と不倫して…」金か異性にまつわる悪い噂を流す「職場を腐らせる人たち」