日産「“すごい”スカイライン」登場! すごすぎて「もう完売」!? 420馬力の“旧車デザイン”モデル「スカイライン NISMO」再販はあるのか

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「日産はスカイラインをあきらめない」発言が「NISMO」を生んだ!?

 2023年8月8日、日産は「スカイライン」に、専用チューンを施した1000台限定の高性能モデル「スカイライン NISMO(ニスモ)」と、100台限定の特別仕様車「スカイライン NISMO Limited(リミテッド)」を発表しました。
 
 スカイライン NISMOは2023年9月上旬より発売されたいっぽう、スカイライン NISMO Limitedは2024年夏の発売予定だといいますが、まだ購入することは可能なのでしょうか。

420馬力にパワーアップした新型「スカイラインNISMO」

 1957年に登場して以来、65年以上にわたって販売が続いているスカイラインは、日産のなかでも特に長い歴史を持つモデルです。

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 現在発売されているスカイライン(V37型)は2013年11月に発表された13代目となります。

 2019年には、同一車線内ハンズオフ(手放し運転)可能な先進運転支援機能「プロパイロット2.0」を国産車で初搭載(ハイブリッド車に設定)したほか、3リッターV型6気筒ツインターボエンジン搭載の高性能仕様「400R」を設定するなど、今もなお日産を代表する重要なモデルとしての位置づけを保っています。

 いっぽう2021年6月には、一部新聞紙上に「スカイライン廃止へ」との報道があがったことから「老舗ブランドもついに消滅か」と話題を呼びました。

 そんな報道のわずか3日後、日産の星野朝子副社長が会見で「日産自動車スカイラインを決してあきらめない」とブランド存続の意向を表明し、日産ファンから喝采を集めたのも記憶に新しいところです。

 しかし、星野副社長の強気な発言とは裏腹に、2022年にはプロパイロット2.0搭載モデルをラインナップから廃止し、同時にハイブリッドモデルもなくなるなど、近年のスカイラインは徐々にモデル規模が縮小していたのも事実です。

 そんななか、満を持して登場したのがスカイライン NISMOシリーズでした。

 日産ではこのスカイライン NISMOについて「スカイラインGTの集大成」だと説明しています。

 もともと高性能なスカイライン 400Rの3リッターV型6気筒ツインターボエンジン(最高出力405ps・最大トルク475Nm)にさらなる専用チューニングを実施し、最高出力420ps、最大トルク550Nmまで性能を向上させました。

 日産のモータースポーツ部門を担うNISMO(日産モータースポーツインターナショナル)のネーミングは伊達ではなく、レース用マシンのエンジン開発を手掛ける開発者が、同じ開発設備を使いチューニングを実施したといいます。

 マニュアルモード付7速ATも変速スケジュールを変更し、「スタンダード」モードでは日常域での力強さと気持ちの良い加速の伸びを可能とする一方、「スポーツ」および「スポーツ+」モードでは、高回転を維持しスポーツ走行時に高レスポンスな走りを実現させました。

 またリアタイヤ幅を20mm拡大した専用開発の高性能タイヤや、エンケイ製専用19インチアルミホイール、専用チューニングのサスペンションやスタビライザーを採用し、大幅な性能向上に対応しています。

 加えて、ブレーキの材質やABS制御の最適化、限界走行時のコントロール性を高めたVDC(ビークルダイナミクスコントロール:横滑り防止装置)のチューニング、前後ウインドウシールドガラスに高剛性接着剤を採用したことによる車体剛性アップなど、スカイライン NISMOの走りに対応したさまざまな取り組みが行われました。

よみがえった「羊の皮をかぶった狼」とは

 大幅な性能向上だけでなく、スカイライン NISMOは外観も大きく変更されています。

 日産の開発者が語ったデザインコンセプトは「よみがえれ、“羊の皮をかぶった狼”」です。

1964年5月に開催された第2回「日本グランプリ」で総合2位に入賞したプリンス「スカイラインGT」39号車(砂子 義一選手)のGT-IIレース参戦車両(写真はレプリカモデル)には赤バッジのGTエンブレムが備わっていました

 この“羊の皮をかぶった狼”という呼び名は、スカイラインがスポーツセダンとして高い評価を集めるきっかけとなった2代目スカイラインの高性能仕様「スカイラインGT」(S54A-1型)から始まったものです。

 1964年にレース参戦を目的として急きょつくられたモデルで、当時の高級セダン「グロリア」用の高性能な2リッター直列6気筒エンジンを搭載し、さらにチューニングを施しています。

 そのためにとった方法がまた非常に豪快なものでした。

 当時のスカイラインには、1.5リッターのコンパクトな直列4気筒エンジンが積まれていました。

 この大きな6気筒エンジンはそのままでは収まらないため、ホイールベース(前後車軸間の距離)を200mmも延長してボンネットスペースを確保したのです。

 左右のフェンダーには専用の赤い「GT」エンブレムが装着され、高性能版であることを静かにアピールしました。

 この“初代”スカイラインGTは、鈴鹿サーキットで行われた第2回「日本グランプリ」GT-IIレースに参戦。レース専用車のポルシェ「904」と接戦を繰り広げ、わずか1周ながら急ごしらえで誕生したセダン車がトップを走ったのです。

 このニュースが“羊の皮をかぶった狼”というフレーズとともに日本中で大きな話題となり、その後「スカイラインGT」を表現する代名詞として定着していきました。

 その後、レースに参戦するモデルの名が「スカイライン GT-R」に変わり、スカイライン=高性能なスポーツカーといったイメージが増していきますが、本来GTとは「グランドツーリングカー」の略で、長距離ドライブが容易にできる快適さと高性能を兼ね備えたクルマを意味しています。

スカイライン NISMO」に伝統の「赤バッジ」が復活!

 そうした伝統を踏まえ、スカイライン NISMOの左右のフェンダーには赤い「GTバッジ」が復活しています。

 外観には、レース活動で得た空力のノウハウを反映させた専用エアロパーツを装着していますが、“羊の皮をかぶった狼”らしく派手すぎない端正な佇まいとしているのも特徴といえます。

 なお100台限定のスカイライン NISMO Limitedは、日産横浜工場でGT-Rのエンジンを組み立てる「匠ライン」で、特別な資格を持つ匠がひとつひとつを手組みで作り上げる高精度なエンジンを搭載するほか、特別装備として匠ラベルや専用シリアルナンバープレート、専用エンブレム、艶消しガンメタリック塗装のホイールなどを装着します。

超高性能なのに上質な「スカイライン NISMO」

 このように全ての面で強いこだわりが込められたスカイライン NISMOに、公道で試乗する機会を得ました。

 試乗車は上品なカーマインレッド。前席にはオプションのRECARO製スポーツシートが備わり、身体をしっかりと支えてくれますが、いわゆるチューニングカーのような荒々しさはありません。街中で走り出した印象も、思いのほか上品なものでした。

日産新型「スカイラインNISMO」

 420ps・550Nmという高性能は、高速道路に入ってようやく発揮されます。その猛烈な加速感はやみつきになりそうで、欧州のハイチューンなスポーツセダンにもひけをとらないものです。

 大径のスポーツタイヤと専用チューンの足回りながら、乗り心地も良好でした。

 ちなみに欧州ライバル車の場合、走行モードをスポーツなどへ切り替えた際に、爆発的な吸排気などのサウンドが室内外へ響く仕組みを備えたモデルがあります。

 スカイライン NISMOにはそうした過剰な「演出」はされていませんが、むしろそんな生真面目さも“羊の皮をかぶった狼”らしさと言い換えられるかもしれません。

 しかし一方で、「音から感じられる走りの凄味」が欲しくなるのも確かです。

 ちょっとやんちゃな見た目や、“NISMO”というネーミングからは「レーシング」なイメージも強く、それゆえジェントルな乗り味やサウンドにやや戸惑ってしまうのです。

 車外騒音の規制は年々厳しくなっており、例えば巨大なマフラーなどを装備するのは現実的ではありません。ただ、迫力あるサウンドを意図的に車内へ響かせる試みは他社でもみられ、なにかしらの演出も欲しくなってしまうのは贅沢な望みでしょうか。

 一方で、超高性能を実現しながら、スカイラインが歴代モデルで培ってきたGTカーとしての上質さもしっかり保ち続けている点こそが、スカイライン NISMOならではの魅力といえます。まさに日産が主張する「スカイラインGTの集大成」というクルマでした。

 だとしたらネーミングも「スカイライン GT-B」(初代S54型スカイラインGTの市販モデル名)のような“GT”推しに、と思ってしまうのは、昭和世代の筆者(くるまのニュース編集部T)だけでしょうか。

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 スカイライン NISMOの販売価格(消費税込み、以下同)は788万400円。RECARO製スポーツシート+カーボン製フィニッシャー装着車は847万円です。

 ただし日産によると、1000台の限定台数は2024年6月現在ですべて完売しているといいます。

 また100台限定のスカイライン NISMO Limitedについては、初代スカイラインGT誕生60周年を迎える2024年夏に発売される予定で、販売価格は947万9800円ですが、こちらも同様にすべて先行予約が埋まっているとのことでした。

 現行スカイラインはデビューから11年目に突入し、いつフルモデルチェンジしてもおかしくないタイミングですが、いまのところ具体的な情報はありません。

 そんな今こそ、再び「スカイラインをあきらめない」日産の姿勢を示す意味で、スカイライン NISMO第二弾の販売にも期待したいところです。