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こんな映画みたいな展開あるんだ…。

アメリカ国家安全保障局(NSA)の元局員が、ロシアスパイに機密情報を送ろうとした罪で、262ヶ月(約22年)の懲役刑を言い渡されました。

アメリカ合衆国司法省のプレスリリースによると、送ろうとしたのがバレた理由は、相手のロシアスパイが実はFBIの捜査官だったからだそうです。

詳しい経緯

コロラドスプリングス出身の32歳、Jareh Sebastian Dalke氏は、アメリカ国家安全保障局の情報システムセキュリティデザイナーとして勤務していました。

そして2022年8月26日に、Dalke氏はロシアスパイという人物に、情報提供を代わりに8万5000ドルを要求。アメリカ合衆国司法省によると、Dalke氏は機密文書の抜粋を暗号化されたEメールプロバイダーを通じて送ったようですが、そのプロバイダーは外国の「合法的な会社」という曖昧な会社だったとのことです。

情報と金銭の交換条件に合意後、Dalke氏はコロラド州デンバーのユニオン駅で、ロシアスパイと落ち合い、ラップトップを渡したと報告されています。

そこではDalke氏は国防に関連する「極秘情報」となっている4つの文書を手渡したとされています。しかし、そのロシアスパイの正体はFBI捜査官。ということで、その後まもなくDalke氏は逮捕されました。

印刷した事実は保障局にバレていた

アメリカ国家安全保障局で民間スタッフとなる前の2015年から2018年にかけて、アメリカ陸軍に勤務していたDalke氏。

裁判所の文書によると彼はまず、捜査中のFBI捜査官に仮想通貨の送金先アドレスを送り、その後、同じ額を自分の本名で仮想通貨取引所に預け入れていたそうです。

しかし、Dalke氏のすぐにバレてしまう行動はこれだけではありませんでした。アメリカ国家安全保障局は、いつ・だれが・どの文書を局内で印刷したのかを全て管理しているので、印刷された文書からDalke氏の行動を紐づけるのは朝飯前という感じで、発覚したというわけです。

裁判文書では以下のように書かれています。

アメリカ国家安全保障局内の印刷記録で、Dalke氏がFBI調査官が受け取った3つの機密文書の抜粋、および機密文書の全文をそれぞれ印刷していました。

これらの文書を印刷した唯一のアメリカ国家安全保障局従業員はDalke氏だけでした。

Dalke氏は、借金まみれだった

Dalke氏は2023年10月に起訴内容を認め、かなりの負債に苦しんでいたことを説明しています。PACERデータベースに掲載されている裁判所文書によるとDalke氏は2017年に破産申請をし、当時約9万ドル(約1400万円)の負債を抱えていたとのこと。そのうち約3万ドル(約460万円)は学生ローンだったということです。

でもアメリカ人は負債を抱えている人ばかり

通常、大きな負債問題を抱えている人は高いセキュリティが求められるポジションには就けないことになっています。

というのも、そういった人はお金のためにリスクのあることをする可能性が高まるからです。しかし、昨年、平均的なアメリカ人は住宅ローンを除いた借金を2万1800ドル(約330万円)抱えていることが調査でわかっています。

それを考えると、アメリカ人が高度な機密性に関連するポジションに就くのはますますむずかしい状況になっているということですね。

しかし、Dalke氏がロシアスパイと思われる人に接触した原因は、お金の問題だけではなかったようです。裁判所の文書には、Dalke氏の偽スパイとのやり取りの中に「最近、自分がロシアに一部遺産を持っている」とありました。

他の人とは違って、これが自分があなたに連絡を取りたいと思った理由でもあります」というものがあったそうです。

また、Dalke氏はアメリカ国家安全保障局のポジションに応募した元々の理由として「過去の世界への損害に対するアメリカの役割を疑問視していて、秘密を知りたいという好奇心と、変化を起こしたいという願望で応募した」と語っているとのこと。

検察官は約22年の懲役判決に合意していて、メリック・ガーランド司法長官は月曜日のプレスリリースで刑期の承認を表明しています。