文春の次はフライデーが「馬乗り写真」を公開

松本人志が追い詰められている。

週刊文春で女性たちへの「性加害疑惑」や、取り巻き芸人たちによる「女性上納システム」が出来上がっていたことが何週にもわたって報じられている。

写真=時事通信フォト
日本テレビ「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで‼ 大晦日スペシャル‼」の制作発表に登場=2014年12月3日、東京都千代田区 - 写真=時事通信フォト

だが松本は、そうした“閉鎖空間”ではない場所でも、性加害を行っていた疑惑を、やはり文春(2月8日号)が報じたのである。

また、同日に発売されたFRIDAY(2月16日号)は、高級ホテルの部屋のベッドに松本が仰向けに寝て、彼に馬乗りになった女性の股間に左手を入れて恍惚(こうこつ)の表情を浮かべている“衝撃写真”を公開したのである。

松本人志は芸能活動を休止し、文春との裁判に専念するらしいが、この2つのスクープは、松本という人間の信用性を疑わせる“証拠”になりうるかもしれない。さらに松本に厳しい状況が生まれつつあると思われるのは、メディアがほとんど触れないが、吉本興業との関係の変化にある。

それについては後で触れるとして、まず、文春の記事から見ていこう。

人気セラピストだったI子さんが、松本と出会ったのは2014年だったという。彼女は当時、東京都渋谷区にあるサロン「S」で働いていた。

この店は大河女優や紅白出場のバンドマン、プロスポーツ選手など著名人が足しげく通う人気店だったという。

■新人セラピストが泣きながら駆け込んできて…

性的サービスは一切なく、純粋なリラクゼーションを目的とした個室マッサージ店で、女性客が2割以上を占めるそうだ。完全予約制でリピーターも多かった。

そんなある日、2人の男が来店した。1人はニット帽をかぶっていた。その男をI子さんは個室に案内したが、それが松本だった。

「当時、私はお笑い番組が好きで、松本さんの番組をよく見ていました。舞い上がると同時に、『絶対に粗相があってはならない』と思いました」(I子さん)

一緒に来たのは、件のホテル飲み会でも松本人志と一緒にいた放送作家Xだった。

そのXの携帯電話から2度目の予約が入ったのは、同年の2月21日のことだったという。自身の客を施術中だったI子さんは、その日初出勤の新人セラピストを松本に付けた。

しかし、しばらくすると彼女が泣きながら駆け込んできたという。松本から「一体いつになったら舐めてくれるの」と口腔性交を強要されたというのだ。

「『断ったけど納得してくれないので、部屋から逃げてきた』と。前回の松本さんは紳士的だったので、『もしかしたら新人の誤解かもしれない』とにわかには信じられなかった」(同)

I子さんが謝るが、施術室を出た松本は苦虫を噛み潰したような表情で早々に退店していったという。

しかし、翌日午後、また松本が来店したというのだ。

■「私一人が犠牲になれば…」

今度はI子さんが担当し、予定時間をオーバーして施術が終了した。彼女が膝をついて「お疲れ様でした」と言葉を発した直後、松本が左手で彼女の右手をぐいと掴み、陰部に当てながら口腔性交を求めたという。

「私は恐怖で震え、局部から目を背けていましたが、さらに私の後頭部を摑(つか)んでぐっと局部に押し付けてきたのです。私は抵抗し、性的なサービスはないことを必死に説明しました。自然と涙が出てきましたが、彼は私の涙を見ても力を緩めなかった」(同)

彼女が涙を拭いていても、松本は無視し無言でさっさと着替え、帰って行ったというのだ。

I子さんは当時の葛藤を今でも時折思い出すそうだ。

「私はセラピストの中で一番経歴が長く、実質的な店の責任者。一方で、松本さんはトップクラスの芸能人で影響力がある。彼が本気を出せば、このお店なんてすぐに潰されてしまう。恐怖に打ちのめされた私は正常な判断が出来ず『私一人が犠牲になれば、お店にも迷惑がかからない』と考えてしまった」

しかし、彼女は夫にはすべてを打ち明けたという。

■なぜ10年近くたって告発したのか

「夫と警察へ相談しに行こうとしましたが、逆恨みされ、嫌がらせを受けるのではないかと恐怖心が勝ってしまった。店のオーナーも事なかれ主義で私を守ってくれず、ショックのあまり五日ほど出勤できませんでした」(同)

心のバランスを崩したI子さんは心療内科を受診した。診療した担当医が文春の取材に対し次のように明言したそうである。

「診察の結果、不安障害と判断しました」

それから10年近くも悩んだ彼女は、「昨年末、文春に掲載されたA子さんやB子さんの告発を見て、声を上げて良いんだと思った」(文春)と、今年1月13日、夫と共に警視庁渋谷署に相談に行ったのだ。

だが、話を聞いた担当刑事は夫を別室に連れて行き、次のように述べたという。

「強制わいせつ罪の公訴時効は七年。二〇一四年の事案では、すでに時効が成立しており、被害届を受理することはできませんが、性被害の相談という形で受理することはできます」

時効の壁に阻まれたが、彼女の「今も苦しむ人がいることを知ってほしい」という思いは伝わったのではないだろうか。

FRIDAYデジタル(1月25日)はこう報じている。

■「VIPが来るから、女の子を用意できる?」

「長らく芸能界に君臨し続けた男の裁判に注目が集まるなか、本誌はある写真を入手した。白Tシャツに黒の短パンを履きリラックスする人物。かなり酔っているのか顔を赤らめながら、女性を自身の上に乗せて幸せそうな表情を浮かべているのは、渦中の松本人志である。

本誌が入手したのは、今から5年ほど前’18年10月中旬に開催されたアテンド飲み会の一幕を収めた写真だ」

写真=iStock.com/GCShutter
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/GCShutter

参加したA子さんがこう語る。

「松本さんとの飲み会には、『クロスバー直撃』の渡邊センスという芸人から誘われたんです。渡邊さんとは一時期、友達のような関係で一緒に飲んだりしていました。ある時、彼から『明日めっちゃVIPが来るから、女の子を用意できる?』と連絡が来たんです。

『もしヤルってなったら必ずできる子を呼んでほしい』とも言われていました。私はVIPが誰なのか気になったこともあり、友人の一人にその条件を伝えたうえで、当日は二人で飲み会に参加したんです」

ホテル『ザ・リッツ・カールトン大阪』の部屋へ行き、松本が気に入った女性と別室へというのは、文春が報じてきた“手順”と同じだが、A子さんはそのまま帰され、友人が松本のお相手になったという。

それから約1時間後、松本に連れられて寝室に消えた友人を心配していたA子さんの元に、一本の電話がかかってきたというのである。

吉本興業はこの実態を知っていたのか

「私は友人へ解散後に『大丈夫?』とのLINEを送っていたんですが、ずっと既読も付かなかったので、心配していたんです。電話がかかってきた時は『もうホテルから出たのかな』と思っていました。しかし、着信に出ると電話口の相手は友人ではなく、松本さんだったんです」

松本はA子さんにリッツ・カールトンへ戻ってくるよう電話で伝えたというのだ。FRIDAYが入手した写真は、この電話の後、ホテルの部屋で酒に酔った状態でA子さんらと戯れる松本の姿だという。

松本はこの時、A子さんたちに向かって、「俺は上に乗ってもらうのが好きなんや」と話していたそうだ。

ところで一連の松本人志“事件”の報道を読んでいて、私が疑問に思ったのは、彼が所属している吉本興業は、こうしたことが行われていたことを知っていたのだろうかというものだった。

私が親しくしている吉本関係者にその疑問をぶつけたところ、こんな答えが返ってきた。

「おそらく掴んでいたとは思うが、トップシークレットだから、情報は洩れないはずだった」

はずだったが、なぜ洩れたのか? その人間はこうもいった。

■絶対権力者・大崎前会長が去ってから変わった

「なぜ今、誰がこの情報をリークしたのかはわからないが、昨年4月に“ドン”といわれた大崎洋会長が辞めたことと無関係ではない」

絶対権力者であった大崎前会長と岡本昭彦社長の関係が、微妙に変化してきているというのである。

それは、今回の文春の記事への対応を見ればよくわかるというのだ。

週刊新潮(2月8日号)も、文春記事が出た直後、吉本は「当該事実は一切なく、(略)厳重に抗議」するとしていたが、今年1月24日に吉本が公表した見解では、「当事者を含む関係者に聞き取り調査を行い、事実確認を進めている」と、大きく軌道修正したと報じている。

新潮によれば、

「(最初の発表が=筆者注)あんな内容のコメントになったのは、記事に激怒した松本が“事実無根と言うとけ”と言い、それに会社側が従ったからでしょうね。松本から“それでええねん”と言われたら、岡本社長は黙るしかありません。吉本における立場は、岡本社長より松本の方が圧倒的に上ですから」(吉本興業元幹部社員)

さらに岡本社長を引き上げてくれたのは松本とピッタリの大崎前会長だったから、岡本社長はものをいえる立場ではなかったようだ。

■「松本離れ」が明確になっている

だが、その庇護者であった大崎氏は、相談役として名前を残すこともなく、吉本興業から完全に離れてしまったのである。先の関係者は、そこに“不可解なもの”を感じるという。

かつて吉本興業所属の中田カウスと暴力団との親密交際について報じられた時、吉本はカウスに対してほとんどお咎めなしだった。

島田紳助に暴力団幹部との親密交際が発覚した時も、紳助が自分から引退会見をするまで、吉本は“静観”していた。

今回、最初は松本のいいなりだったとしても、2度目は明らかに松本離れを明確にしている。文春(2月1日号)によれば、松本が文春を訴えるに至った経緯も不可解だ。

内幕を知る吉本関係者がこのように明かしている。

「提訴したのは、吉本興業ではなく、松本さん自身。当初、彼は別の弁護士にオファーを出していましたが、『勝算がない』と次々断られ、最終的に田代(政弘=筆者注)弁護士に白羽の矢が立ったのです。彼は、陸山会事件で捜査報告書に虚偽の記載をしたとして、虚偽有印公文書作成及び行使罪で告発され、検察官を辞職した人物です」

苦労した末の弁護士選びだったようだ。

■吉本の万博関連事業の受注額は41億円にも

トップシークレットであるはずの松本人志の性加害疑惑情報が文春に流れ、大崎前会長が関係を強化してきた日本維新の会との“蜜月”関係も文春(2月8日号)が報じたのである。

大崎氏は現在、延期または中止の声まで出ている関西万博の催事検討会議の共同座長を務めている。性加害疑惑が出るまで松本人志もアンバサダーを務めていた。

私が知る限り、大崎氏は菅義偉前首相と親しく、その縁で安倍晋三元首相に食い込み、そこから維新とのつながりを深めていったようだ。だが、今や、その蜜月ぶりはただ事ではないといわれているようだ。

「実は、万博への立候補表明から七カ月後の十七年十一月、吉本と大阪市は『包括連携協定』を結んでいます。この協定を主導したのが、当時社長だった大崎氏。吉村市長(当時)と会見に臨み、『大阪の魅力を、日本中、世界中に発信することにご一緒する』と述べていました」(吉本幹部)

2023年に請け負った「『大阪文化芸術祭(仮称)』の実施にかかる企画・運営等業務」はJTBとのJVで、受注額は約19億9000万円にもなり、文春の調べによると、こうした幅広い事業の受注額を総合すると、実に41億円に及ぶというのである。

写真=iStock.com/shih-wei
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/shih-wei

■味方を失った松本はどうするのだろうか

「自治体ビジネスは水物の舞台でのお笑いより、中長期的に安定的な売上高が見込めるうえ、社のブランドイメージ向上にも繋がる。そこが、大崎氏の“目論見”でした」(同)

しかし、一心同体だった松本人志のスキャンダルが報じられ、万博が延期か中止になれば、大崎氏の描いていた“野望”は潰えるかもしれない。

こう見てくると、今回の松本人志スキャンダルは、ジャニー喜多川事件と同様の構造を持っていることがわかる。

文春報道が事実だとすれば、松本人志のやっていることはトップシークレットだったとしても、吉本興業に所属している芸人たちが関与していたというのだから、知っていた人間は何人かはいたはずである。

しかし、それを口外したら吉本にいられなくなるから、皆口を噤(つぐ)んでいたのではないか。

松本人志性加害疑惑の根は深く、吉本興業全体の構造的な問題に発展しかねないのだ。そのために吉本興業は、松本擁護には回らずに切り捨てる方向へと大転換したのではないのだろうか。

自分が牛耳ってきたと思っていた吉本興業から距離を置かれた松本人志が、このまま黙っているのか、大崎氏と一緒に吉本興業に反旗を翻すのか。

文春が報じた松本人志スキャンダルは、新しい段階に入ったように思う。

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元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、近著に『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。
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(ジャーナリスト 元木 昌彦)