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とても不誠実な印象です。

自動運転タクシーのCruiseが歩行者を引きずって走行した10月の事故。歩行者女性は5m以上引きずられたとされていて、そのときの映像をCruise側が規制当局に見せることになっていたのですが、会議でのインターネット接続が悪く、出席した規制当局の人たちは、その映像ではまったく事故状況が把握できなかったとのことです。

ネットが悪くて事故映像が見せられない?

事故レビューの実施を担当したCruise側の弁護士は、「インターネットの接続の問題があったため、規制当局が映像をはっきりと見ることができなかった可能性が高い」と述べています。映像がフリーズして画面が真っ暗になってしまい、規制当局が映像を見れていない状況であったのにもかかわらず、Cruise側は黙ったままだったとされています。

不誠実なCruiseの姿勢

歩行者を引きずった事故の200ページにわたる報告書では、Cruiseの姿勢が「受動的」「非透明」「根本的に欠陥がある」と指摘されています。

まさにその姿勢が現れていたのがこの映像上映で、Cruiseは10月2日に起こった事故の映像を規制当局に再生するだけでこの件は終わりになるだろうと考えていたようです。

また、会議中に質問が出なかったため、Cruiseの幹部はそれ以上の情報の開示もしていません。Cruiseの行動をレビューするために雇われた法律事務所は、事故が幹部のリーダーシップ不足を反映しているとし、「船長がいない船のようなもの」と報告しています。

事故を隠蔽しようとしている?

Cruiseは事故の翌日10月3日に政府関係者と会合をしていますが、その際も事故状況が見ることができない映像を使っていたとのことです。報告書によると、政府関係者が事故の真実を語るクリアな映像を見ることができたのは、Cruiseとの最初の会合から1週間以上経ってからだったとのこと。カリフォルニア州の自動車部局は、Cruiseが女性を引きずった情報を隠蔽するような「誤った報告」をしたとして、同社の自動運転タクシーの運行を10月24日に停止しています。

報告書には、Cruiseの請負業者が事故から収集した画像や動画についての詳細が記載されていて、政府関係者に事故の説明をした10月3日にまでに、100人以上の従業員がその事故を把握していたことが報告されています。この画像や動画は、事故発生後数週間経ってから、やっと規制当局に共有されたということです。

報告書には「Cruiseの請負業者が自動運転車が最終的に停止した場所から2〜3台分離れた場所で、血や皮膚を見つけたと報告した」と書かれています。また、Cruiseがこの事故に関して、最初に報告された事故状況を修正することばかりに焦点を当てていたと記載されています。

最初の報告では、Cruiseのロボタクシーがサンフランシスコで歩行者にひき逃げしたとされていましたが、実際には人が運転する車が歩行者に衝突し、その後Cruiseの自動運転車がその歩行者を轢いて引きずって走行したというのが正しい状況だとのこと。

この騒動後、CEO兼共同創業者のKyle Vogt氏や共同創業者のDan Kan氏を含む、数人の重役がCruiseを辞任しています。現在同社のロボタクシーは運行停止中となっていて、従業員の約1/4が解雇されている状況です。また、米司法省と証券取引委員会も現在、同社の調査を行なっているとのことです。

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