酔っ払い客のせいで、店のトイレが故障…悩める飲み屋店主、休業補償を請求してもいい?
客が嘔吐したせいで、店のトイレが詰まって壊れた――。
"事件"は、老朽化している建物にあるバーのトイレで発生した。ある夜、酔っ払った客が大量にトイレめがけて嘔吐し、大量のトイレットペーパーも流したことから、トイレが詰まってしまった。
店にトイレは1つしかなく、その日は他の客も使えなくなった。結局、修理のために、店は翌日も休業を余儀なくされた。過去にも同様の事件があったため、「絶対に吐かないで!」という張り紙もしていた。
このようなケースの場合、店が客に対して請求する金額は数千円から数万円まで幅があるようだが、休業して修理するとなれば、店の損失は相当な額になるだろう。店は客に賠償請求できるのだろうか。鈴木淳也弁護士に聞いた。
●不法行為と判断されれば賠償請求できる
ーー店から客に対する損害賠償請求はできるのでしょうか。
はい。損害賠償請求が認められるためには、客の行為が民法上の不法行為にあたることが必要です。不法行為は、故意または過失により、相手方に損害を与えることで成立します。さらに、加害行為と損害との間に因果関係が必要です。
今回の場合、客側に過失があることは明らかです。客の嘔吐、大量のトイレットペーパーを流したことに起因してトイレが詰まり、故障したことを立証できれば、不法行為が成立するでしょう。
ーー不法行為が成立すると判断された場合、賠償請求はどこまで認められるのでしょうか。
トイレの修理費用は問題なく認められるでしょう。店の営業を休業したことによって得られなかった利益(※売上とは異なります)については「トイレの故障が原因で休業せざるを得なかった」といえるのであれば、認められる可能性があります。
もっとも、お客さん側も生理現象ではあり、数十万円にも上った場合、支払うのが難しい人もいるでしょう。不慮の事故で物を壊してしまった場合に備える保険などがあります。周りへの影響も考え、体調が悪い時には無理をしないようにしたいですね。
【取材協力弁護士】
鈴木 淳也(すずき・じゅんや)弁護士
第一東京弁護士会所属。大学時代は理学部に所属し、地球温暖化システムについての研究をしていた。しかし、多くの人と触れ合い、広く社会の役に立てる仕事に就きたいと考え、決まっていた就職を辞退し、司法試験を目指すことに。気象予報士の資格を持つ理系弁護士として、民事・刑事を問わず困っている人に寄り添う弁護活動を行う傍ら、お天気情報をブログで発信している。
事務所名:鈴木淳也総合法律事務所
事務所URL:https://law-sj.com/