2024年1月14日、国際通貨基金(IMF)が、「世界の雇用の約40%がAIの台頭によって影響を受ける可能性がある」との分析結果を発表しました。IMFの報告書では、一部の先進国でAIの影響を受ける割合が60%にまで達する可能性があることが示唆されています。

Gen-AI: Artificial Intelligence and the Future of Work

https://www.imf.org/en/Publications/Staff-Discussion-Notes/Issues/2024/01/14/Gen-AI-Artificial-Intelligence-and-the-Future-of-Work-542379



AI Will Transform the Global Economy. Let’s Make Sure It Benefits Humanity.

https://www.imf.org/en/Blogs/Articles/2024/01/14/ai-will-transform-the-global-economy-lets-make-sure-it-benefits-humanity



AI to impact 60% of advanced economy jobs, says IMF chief

https://www.france24.com/en/americas/20240114-ai-to-impact-60-of-advanced-economy-jobs-says-imf-s-chief

IMF warns AI to hit almost 40% of global employment, worsen inequality

https://www.cnbc.com/2024/01/15/imf-warns-ai-to-hit-almost-40percent-of-global-employment-worsen-inequality.html

IMFの発表では、先進国において、雇用の約60%がAIの影響を受ける可能性があると報告されました。IMFによると、影響を受ける60%の雇用のうち、半数が「AIによって生産性が高まる」などのプラスの影響を受け、残りの半分については、現在人間が行っているタスクをAIが受け持つようになり、労働需要の減少や賃金の低下、雇用機会の喪失といったマイナスの影響を受ける可能性があるとのこと。IMFのクリスタリナ・ゲオルギエヴァ事務局長は「最も極端なケースでは、これらの仕事の一部が消滅するおそれもあります」と述べています。

また、IMFはインドやブラジルなどの新興国において、AIの影響を受ける雇用は全体の約40%と推測。さらに、ブルンジやシエラレオネなど、発展途上国では26%になると予測しています。以下のグラフは国の経済状況別に、雇用がAIの影響を受ける可能性を示したもので、先進国や新興国、発展途上国を含めた全体の割合は約40%であることが確認できます。



ゲオルギエヴァ氏は「これらの国の多くでは、AIによる恩恵を享受するためのインフラや熟練した労働力を持っていないため、時間の経過とともにテクノロジーが不平等を悪化させるリスクが高まっています」と指摘しました。さらにIMFは、若年層の労働者が生産性を高めるためにAIを利用する一方で、中年層、高齢層の労働者がこの技術に追いつくことは困難で、結果として国内の所得と富の不平等に影響を与える可能性や、「所得階層内の二極化」が起こる可能性、社会不安が増大する可能性を示唆しました。

IMFは報告書の中で「AIが台頭するこの現代社会において、先進国や新興国、発展途上国では、AIに関する規制の枠組みのアップグレードと労働力の再配分に向けた支援に注力する必要があります。また、新興国と発展途上国は、デジタルインフラとデジタルスキルの開発を優先すべきです」と指摘。



ゲオルギエヴァ氏は各国の政策立案者に対し「AI技術が社会的緊張をさらにあおることのないように、包括的な社会的セーフティネットを確立し、立場の弱い労働者に対して再訓練プログラムを提供するなど、積極的に措置を講じることが重要です」と提言しました。また、「私たちIMFは、発展途上国においてAIがもたらす良い影響を享受できるよう、迅速な行動や支援に注力しなければなりません」と語っています。