記事のポイント

全米広告主協会(ANA)による調査は、オープンウェブでのプログラマティック広告購入を効率化し、低価格のオプションを優先することで、約220億ドル(約3兆1900億円)のコスト削減が可能であることを指摘している。

ANAは年間5000万ドル(約72億5000万円)以上を広告に費やすブランドに対し、最高メディア責任者を任命してアドテクノロジーの複雑な状況を監督することを推奨。

研究者たちはプレミアムなメディアインベントリへのアクセスを提供する信頼できるパートナーを選択することで、無駄な支出を抑制し、効率を高めることができるとしている。


全米広告主協会(Association of National Advertisers:以下、ANA)が公開した最新調査によると、マーケターのメディアバイイングチームは、オープンウェブでのプログラマティック広告購入を合理化し、低価格オプションの質を優先することで、総額220億ドル(約3兆1900億円)のコスト削減を実現できるという。

ANAは、2回目となるプログラマティック透明性調査についてこのような見解を示し、さらに、年間5000万ドル(約72億5000万円)以上を費やすブランドは、最高メディア責任者を任命しアドテクノロジーの複雑な状況を監督することを推奨している。

このリリースは、ANAによるオープンウェブのプログラマティックメディアバイイング監査の第2弾で、冒頭の「ファーストルック(First Look)」では、監査対象のキャンペーンに費やされた金額の15%、総インプレッションボリュームの21%が、MFA(made-for-advertising:広告目的でつくられた)サイト上でだったことが判明している。

アドテクエコシステムの肥大化を削減



この調査研究に含まれる見解には、他にも以下のようなものが含まれる:

DSP経由で投資された金額の36%が効果的に消費者にリーチできている

投資額の29%がDSPやSSPの手数料などに使われている

投資額の35%が、詐欺、MFA、またはノンビューアブル(視認性がない)、測定不可能なトラフィックに費やされている

研究者たちはさらに、無駄なメディア費用の焦点をいくつか特定し、マーケターがオープンウェブ上でアドテクを使用するのに費やされるメディア費用の最大25%を節約できるよう、アドテクエコシステムのギャップを埋めるための対策を推奨した。

ANAの提言の中心は、既存のアドテクエコシステムの肥大化を削減することであり、研究者は、バイイングチームがプレミアムなメディアインベントリへのアクセスを提供する、信頼できる75〜100のプログラマティックパートナーを選択することを推奨している。

「こんなに多くのSSPは必要ない」



このような対策は、キャンペーンごとに平均4万4000の既存ウェブサイトという状況から大きく減少させることになり、報告書の著者はメディアチームに対し、「除外(exclusion)」リストに焦点を当てるのではなく、「包含(inclusion)」リストを運用するようアドバイスしている。

ANAのグループエグゼクティブバイスプレジデントを務めるビル・ダガン氏は米DIGIDAYの取材に対し、調査に参加した21の組織のうち、SSPの数は9〜53(平均19)であると語ったが、報告書の著者はこの数を5〜7に減らせるはずだと助言する。

「こんなに多くのSSPは必要ない」とダガン氏は言う。「これではまるで、社内の各部門が同じキーワードに入札していて、結果としてコスト増になっていたという、昔よく耳にした検索の状況と変わらない」。

レモネードプロジェクト(Lemonade Projects)のプログラマティックエコノミストで報告書の共著者でもあるトム・トリスカリ氏は、マーケターのメディアバイイングチームに対し、メディアサプライチェーンの管理方法に注意を払い、高い水準に報いるインセンティブを備えるよう促した。

「いまの水準が高く、チームを管理できるようにするために得た予算を使うことがより難しくなることを受け入れる気があるのなら、チームがより高いレートで(広告スペースを)購入できるような管理方法を導入しなければならない。それが困難さを増すとしても、それを管理しなければならない」とトリスカリ氏は付け加える。

複雑な利害関係をすべて監査はできない



しかし、コンサルタント会社エンサイクロメディア・インターナショナル(Encyclomedia International)の創設者であり、トリスカリ氏とともに報告書のもととなるRFP(提案依頼書)を書いたニック・マニング氏は、ブランド側の代理人がアドテクノロジーのサプライチェーンを監査しようとする場合、いかに大きな課題を克服しなければならないかに言及している。

「現実には、メディアエージェンシー、DSP、SSP、パブリッシャー、さらにはコンテンツ検証業者でさえ、その商業的利害はすべて何らかの形で互いに絡み合っている。それはさまざまな関係者の財政的利害が交錯する渦のようなものであり、それを監査することはできず、(それを調査する)規制機関も存在しないため、市場からはその実態はほとんど見えてこない」とマニング氏は語った。

[原文:The Rundown: How brands can cut programmatic wastage]

Ronan Shields(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:分島翔平)