フレグランスカテゴリーが目覚ましい業績の1年を締めくくる第4四半期にさらなる成長を遂げるとは考えにくい。しかし、美容ブランドのクリーンビューティコレクティブ(Clean Beauty Collective)は、クリーンリザーブ(Clean Reserve)という最新製品のローンチにより、フレグランス使用をやめたユーザーを年内に獲得することを目指している。

ウォーターベースの香水、クリーンリザーブの革新性



セフォラ(Sephora)で12月12日から限定発売されるクリーンビューティコレクティブの新しいクリーンリザーブH2EAU(エイチツーオー)ラインには、敏感肌向けの処方でエチルアルコールを含まないウォーターベースのフレグランス8種類が含まれている。ウォーターベースでエチルアルコールを含まない香水のカテゴリーは新しいものではないが、保存期間やユーザーエクスペリエンス、製品寿命に関する課題ゆえに、過去数十年間、ほとんどの香水ブランドにとって魅力に欠けていることが証明されている。

クリーンビューティコレクティブのCEO、グレゴリー・ブラック氏はこの新しい処方が業界全体を変えると信じている。

ブラック氏は「ウォーターベースはこれまでにもあったが、この技術による経験と製品寿命のおかげで、アルコールベースの香水に対する期待と同じほどか、または期待以上のものが可能だと気づいた」とGlossyに語った。「最初に考えたことの1つには、『乾燥や乾癬、湿疹などの肌の状態が原因で、敏感肌で香水の使用をやめた人や、通常フレグランスを使っていない人たちを呼び込むことができるのではないか』ということがあった」。

東京の高砂香料の技術を投入



その新技術はハイドロテック(Hydro-Tec)と呼ばれ、アジア最大の香料メーカーの1社である東京に拠点を置く高砂香料工業株式会社が開発したものだ。同社は、バーバリー(Burberry)、資生堂(Shiseido)、ナルシソ ロドリゲス(Narcisco Rodriguez)などのブランドのトップセラーを手がけている。

高砂香料の技術イノベーション担当ディレクター、アルパ・シャー氏は、保存の安定性があり、何時間も肌で持続する保湿フレグランスの開発プロセスには何年にもおよぶ追加試験が必要だったと述べている。同氏によると、最大の課題は規制、保存、安定性に関連したものだったという。しかし、ウォーターベースの製品に起こりがちな問題であるバクテリアの増殖の予防のほかにも、ウォーターベースの香りには失望させられることもしばしばある。

「通常、アルコールの割合が高い製品はスプレーすると素晴らしいブルーム(製品が湿気と接触したときの香りの強さの蓄積)がある」とシャー氏。「ウォーターベース製品の欠点だったのは、水はアルコールほど早く蒸発しないため、そのようなブルームが生まれずに香りが抑えられてしまうことだった。この技術システムは、そのようなブルームを可能にする材料を配合に含めているので非常にユニークだ。これに加えて、特別設計のポンプアクチュエーターにより、製品が非常に独特なものになっている」。

高砂香料は2019年にこの技術を初めてブラック氏に紹介したが、彼は懐疑的だった。「100人を対象に1週間使用テストを行ったところ、その結果が非常に素晴らしかったので、さらに進めることにした」とブラック氏。「最終的に3000人を対象にアンケートを実施したところ、非常に高い購入意欲が得られた。80%台後半と、私のこれまでのキャリアで見た中でもっとも高かった」。

クリーンビューティコレクティブは高砂香料のハイドロテックを2年間独占使用する。

クリーンリザーブとセフォラへのメリット



ブラック氏は、クリーンビューティコレクティブは年間約8000万ドル(約116億円)相当の香水を販売しているが、クリーンリザーブH2EAUにより今後2年間で年間フレグランスの売上高が1億ドル(約146億円)に達すると信じているとGlossyに語っている。「このテクノロジーにより当社には優位性がもたらされると考えている」。



セフォラのフレグランスマーチャンダイジング担当バイスプレジデント、ケアリー・キャンベル氏は、「(新ラインは)高性能で、優しく、保湿もするので、顧客の共感を得ている。セフォラでのクリーンビューティコレクティブの継続的な成長を目にして、興奮している」と述べている。

Glossyで以前取り上げたように、クリーンリザーブを擁するクリーンビューティコレクティブは、フュージョンブランズ(Fusion Brands)として始められた。クリーンカテゴリーの成長と需要に対応して、2018年にリブランディングされた。そして、安全で持続可能で環境に優しい製品だけに注力するために、社名を冠した製品ラインのフュージョンビューティ(Fusion Beauty)を閉鎖した。クリーンビューティコレクティブは自社サイトのCleanBeauty.comでのD2C販売とセフォラやアルタ(Ulta)などの小売パートナーを通じて、クリーンリザーブの名でフレグランス・スキン・ボディ製品を販売している。

クリーンビューティコレクティブによると、同社は非公開企業で、30カ国で販売されており、年間8000万ドル(約116億円)の小売売上高があるという。また、米国セフォラにおけるクリーンフレグランスのトップブランドであり、中国セフォラではフレグランス全体のブランドのトップ10にランク入りしていると報告されている。その理念の一環として、持続可能な調達や太陽光発電による製造などの環境に優しいさまざまな実践を行っている。

クリーンリザーブのフレグランスは、セフォラのクリーン基準に準拠した限られた成分パレットを使用して配合されており、クリーンリザーブは近いうちに成分の透明性を完全に提供する予定である。「原材料の安全性の最前線に立ちたいと思っている。また、当社はすべてのフレグランスを(革新的な最新の成分で)アップデートする段階に達しており、間もなく(全成分のリストを)公開する予定だ。H2EAU(の成分)も開示する」とブラック氏は語っている。

皮膚科医師が信じる製品のメリット



この新ラインのマーケティングのために、米国皮膚科学会フェローの美容皮膚科医で、Mohs(モース手術)外科医のミシェル・ヘンリー医師がスポークスパーソンに選ばれた。ヘンリー医師はインスタグラムで11.8万人のフォロワーを抱えており、「トゥデイ(The Today Show)」に数回出演したことがあり、今年は、ヴァセリン(Vaseline)、アビーノ(Aveeno)、キールズ(Kiehls)などのソーシャルメディアコンテンツを作成している。また、スキン&エステティック・サージャリー・オブ・マンハッタン(Skin & Aesthetic Surgery of Manhattan)のCEO兼創設者であり、コーネル大学のワイル・コーネル医科大学院で皮膚科の臨床講師を務めてもいる。

ヘンリー医師は、クリーンリザーブとの提携は自然な流れだったとGlossyに語った。「患者は、自分の肌にどのような成分を使っているかますます懸念するようになっている。そのような会話は(自分の診療室で)よく交わされている。フレグランスとスキンケアについてだったり、香水を使いたいけれど使えないと嘆く女性たちの話だ」。

これまで、ヘンリー医師は敏感肌の患者に対してフレグランスを服につけるように指示していた。「アルコールは触れるものを乾燥させて、皮膚バリアを非常に傷つける。皮膚バリアの破壊は腐食性の強い製品を使うと一気に起こることもあるし、毎日使用している製品なら徐々にゆっくりと起こる場合もある」。

しかし、ヘンリー医師は、敏感肌だけではなく、この製品がアレルギーの発症を防ぐのに役立つ可能性があると信じているという。「(アルコールを含む製品を定期的に使用することによる)累積的な影響は非常に破壊的であり、損傷や感作を引き起こす可能性があるため、製品にアルコールを使うときは十分考慮することが重要だ。皮膚科医として、個人差があるのは承知しているが、新製品が炎症や炎症を引き起こすことはないと確信している」。

クリーンビューティコレクティブは、プレス・ソーシャルメディア・教育動画の専門家としてヘンリー医師を起用する。「我々の技術面のストーリーを伝え、敏感肌かもしれない人々に向けて(この製品の)保湿性と無刺激性を検証する上で、彼女は素晴らしいと思う」とブラック氏は語った。

米国とカナダでの発売予定



クリーンリザーブH2EAUラインの8つの香りは海からインスピレーションを得ており、高砂香料の調香師キャサリン・セリグ氏とスティーブン・クラッセ氏が手がけた。

主力製品になると期待されているのは、ブリリアント ピオニー(Brilliant Peony)だ。セリグ氏は次のように語っている。「イタリアのクオモ湖のほとりで牡丹の香りを嗅いだときの気分を再現するために、このフレグランスを作った。花の香りをフレッシュでみずみずしく保つことを目指し、イタリアのあの地域のエッセンスをさらに取り込むためにイタリアンベルガモットと組み合わせた」。

クリーンリザーブH2EAUは、12月12日からセフォラのオンライン限定でローンチし、ホリデーに受け取ったギフトカードで買い物をする人々に向けて12月26日からはセフォラの257店舗でも取り扱われる。1月には米国のセフォラの全562店においてクリーンリザーブのほかのフレグランスラインに加わることになる。また、コールズ(Kohl’s)の大部分の店舗(857店)では3月に販売される。同月にはカナダのセフォラの全114店でも発売予定だ。100mlボトルの小売価格は110ドル(約1.6万円)、10mlのローラーボールは29ドル(約4200円)である。

[原文:Exclusive: Sephora bets on fragrances made for sensitive skin with new Clean Reserve launch]

LEXY LEBSACK(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)