この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。サイバーウィーク(Cyber Week)は、セール品を買える「最後のチャンス」だとブランドが宣伝したとしても、それが本当であることはほとんどないということが証明された。11月下旬から12月初頭にかけて、大手から小規模までのブランドが、公式のサイバーマンデー(Cyber Monday)キャンペーンを数日引き延ばした。たとえば、ペットスマート(Petsmart)は12月1日金曜日の時点でも自社サイトで「サイバーウィーク」プロモーションコードによる20%割引を続けていた。同様に、レイ(REI)とザッポス(Zappos)も、12月第2週の週末までサイバーウィークのキャンペーンを継続し、ナイキ(Nike)はサイバーマンデーの割引を12月2日土曜日まで行った。ブラックフライデー(Black Friday)やサイバーマンデーのキャンペーンという文言を取り下げた企業も、週を通して「ホリデー」割引を大々的に続けていた。ベストバイ(Best Buy)やセフォラ(Sephora)、アルタ(Ulta)などの大手チェーンもそうだ。一方でJクルー(J.Crew)の旗艦ブランドとメイドウェル(Madewell)はサイバーマンデーの翌週まで、感謝祭の週末セールと同様の割引を実施した。アワープレイス(Our place)やボル&ブランチ(Boll & Branch)、ネクター(Nectar)などのD2Cブランドもサイバーウィークを引き延ばした。そのほかキャスパー(Casper)やアワープレイスなど、金曜日までを「ホリデーセール」と呼ぶように移行したブランドもある。「ブラックノーベンバー(Black November)」現象によって証明されたように、買い物客は今、かつて一度きりだった感謝祭の週末セールの前後両方にプロモーションがあることを期待することができる。ほんの数年前、ブラックフライデーは限られた数の超特価品を販売するのが特徴だったが、最近ではより大幅な割引と長期間にわたるセールへと移行している。

ソーシャルメディアでも話題に

このトレンドはサイバーマンデーの最新の進化であり、もともとは、感謝祭のあともオンラインでお買い得品を求める買い物客を奨励するために、小売企業によって作られたものだ。しかし、ソーシャルメディアのユーザーでさえ、BFCM(ブラックフライデーとサイバーマンデー)セールが長期化していることに気づいている。そして、これは単なる気のせいではない。 ケリー・ボーン(@kvlly)氏によるXの投稿木曜日:ブラックフライデー先行セール!金曜日:ブラックフライデーセール!土曜日:ブラックフライデー延長セール!日曜日:サイバーマンデー先行セール!月曜日:サイバーマンデーセール!火曜日:サイバーマンデー延長セール!水曜日から金曜日:火曜日に同じ デンバー・ショーン(@dnvrsn)氏による投稿いつまでサイバーマンデーを引き延ばすつもりなのか。今日は水曜日だぞ。別のものにしろ。クーポン企業リテールミーノット(RetailMeNot)のショッピング専門家であるクリスティン・マクグラス氏は、「もう数年にわたって、小売企業はサイバー『マンデー』のセールを引き延ばして、どちらかというと『サイバーウィーク』というコンセプトに変えてきた」と語る。この動きは、大手小売企業がブラックフライデーのセールを非常に早期に開始することで、先行する方向へ引き延ばしたのとよく似ていると、同氏は付け加えた。「小売企業は早期のホリデーショッピングシーズンをできるだけ引き延ばし、買い物客に何回も足を運ばせて、12月25日以後に残しておきたくないような商品を売り切りたいと考えている」と、マクグラス氏は説明する。ブラックフライデーとサイバーマンデーという言葉に込められた高揚感と切迫感をもとに、「小売企業は明らかに、「最後の瞬間」のマーケティングに切り替える前に、これらの期間の境界をどこまで押し広げることができるかを実験している」と同氏は指摘する。リテールミーノットのデータによると、「超特価品」として記載されたお買い得品は減り続けており、今年は24%も減少したことを指摘した。これに対して、「サイバーウィーク」セール・メッセージングのうち、26%はブラックフライデーから、20%は感謝祭から、13%は感謝祭より前の日曜日に開始された。

ホリデーシーズン全体の増収を狙う

オンラインの小売ブランドには、特にインフレの影響がまだ残る今年、この戦略を採用する理由があった。「我々がホリデーセールをブラックフライデーとサイバーマンデーのあとまで引き延ばした目的は単純だ。11月中旬から年末までのホリデーシーズン全体における前年比の売上増加を促進することだ」と、ウィンブランズグループ(Win Brands Group)のマーケティング担当バイスプレジデントのアリ・レーデル氏は述べる。同グループには、ホームシック(Homesick)とグラビティ(Gravity)というブランドがあり、どちらも12月1日金曜日の時点でまだサイバーウィークの特売を行っていた。グラビティはサイト全体で、1つ買えばもう1つ無料のプロモーションを行っており、ホームシックはサイバーウィークのセールとして30%の割引を行っていた。これらのブランドは、ブラックフライデーとサイバーマンデーの期間に最大の売上数量を記録したと、レーデル氏は説明する。そのため、サイバーマンデーのセールを延長する決定は、ブランドへの認知をできるだけ広め、既存の顧客に対してシーズン全体を通して購入する理由を与えるための、戦略的な行動だった。「しかし、目標はそれで終わりではない。ホリデーマーケティング戦略は、これまでうまくいってきたものを活かしたプロモーションと組み合わせている」と、レーデル氏は述べる。これにはBOGO(1つ買えばもう1つ無料)特売、送料無料、サイト全体での割引に加えて、カートへの追加を推奨しAOV(平均注文金額)を上げるアップセルの機会も含まれ、この一部は12月まで行われる。「たとえば、ラブユアメロン(Love Your Melon)のビーニーウォッシュバッグ、クアロ(Qalo)のリングディッシュ、ホームシックの芯切りはさみ、マッチ、カーフレッシュナーをプロモートしてきた」と同氏は述べ、さらにホームシックとクアロについては箱の色やカスタムのラベルなど追加のパーソナライゼーションもプロモーションしている。

ホリデーセールの長期化は一般的に

D2Cのヘアケアブランドのアワーエックス(OurX)は、初めてブラックフライデーのセールを行うにあたり、じっくりと精選されたアプローチを採用することにした。ウェブ全体で非常に多くのブランドがセール情報を提供しているため、忙しいホリデーの週末に顧客がメールの通知を見逃すことも十分に考えられると、アワーエックスのCEOを務めるメガン・モーピン氏は述べる。「毎年この時期には、広告が非常に高価なものとなる」と、モーピン氏は米モダンリテールに語った。そのため、ブラックフライデーに向け、ほかのブランドと提携してクロスプロモーションを実施した。これには、ウイ・ザ・ピープル(Oui the People)、ヘリックスヘアラボ(Helix Hair labs)、アミーコーレ(Ami Colé)など、ほかの黒人経営ブランドによるキュレーションされた商品のホームページや購入者プレゼント提供などが含まれる。「ブラックフライデーのキャンペーンを延長することで、創業者たちや特売品のいくつかを強調するメッセージングを引き延ばすことにもなる」とモーピン氏は述べる。モーピン氏は、アワーエックスがこの長期にわたる割引期間を利用しているのは、主に新規顧客に対してケアセットのバンドルを50%オフで提供し、定期購入加入者のコンバージョンを進めるためだという。これまでのところ、この方法によって人々の受信トレイの中で同ブランドが際立ち、カートの注文金額も期待を上回っている。「一部の人々は、カートに入れた商品を購入するのをブラックフライデーまで待っていたようだ」と、同氏は述べる。しかし、サイバーマンデーがやってくると、新規顧客が、30%割引のハイドレーション(保湿)トリオや、40%割引のプロテクション(保護)セットなど、ほかのバンドル商品を求める状況へと変化した。これらの延長されたショッピング期間は、今後数週間にわたって続く予定で、将来のホリデー期間には一般的なものになると考えられる。ウィンブランズグループのレーデル氏は、サイバーウィーク延長の戦略には会社にとっていくつもの利点があり、ブランド間で増収を保証できるとともに、ホリデーシーズン全体を通して顧客に価値を提供できると述べる。「サイバーウィークの期間を延長するトレンドは続くだろうと予測している」とレーデル氏は述べた。[原文:‘Black Friday’ and ‘Cyber Monday’ have lost their meanings as brands extend promotions] Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)