理想的な就寝と起床のタイミングは人それぞれですが、学生や社会人の大半は早起きせざるを得ないので、毎朝後ろ髪を引かれる思いで布団から出ている人も少なくないはず。夜勤をすることも多い看護師の女性6万人以上を対象とした新しい研究により、就寝と起床時間を決定づける「クロノタイプ」と2型糖尿病リスクとの間には大きな関連性があることが判明しました。

Chronotype, Unhealthy Lifestyle, and Diabetes Risk in Middle-Aged U.S. Women: A Prospective Cohort Study: Annals of Internal Medicine: Vol 176, No 10

https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M23-0728

Evening chronotype linked to unhealthy lifestyles and increased diabetes risk, reveals cohort study

https://www.news-medical.net/news/20230912/Evening-chronotype-linked-to-unhealthy-lifestyles-and-increased-diabetes-risk-reveals-cohort-study.aspx

Night Owls Beware: Staying Up Late Tied to Increased Diabetes Risk

https://scitechdaily.com/night-owls-beware-staying-up-late-tied-to-increased-diabetes-risk/

クロノタイプとは、就寝時間が早いか遅いかの傾向のことで、遺伝子によって決まる部分があるため本人の努力で変えることは容易ではありません。これまでの研究により、人口の推定8%が夜型のクロノタイプを持っていることや、クロノタイプが代謝調節機能や血糖値、2型糖尿病の発生率と関連していることが示唆されていますが、そのメカニズムはよくわかっていませんでした。

クロノタイプと生活習慣病リスクの関係や、努力で改善できる範囲のライフスタイルが及ぼす影響について評価するため、ハーバード大学ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のTianyi Huang氏らは、自己申告によるクロノタイプと生活習慣病の傾向を分析する研究を行いました。



分析には、女性看護師を対象とした健康調査である「Nurses' Health Study II」のデータが用いられました。データ収集期間は2009年から2017年で、参加者はがんや心血管疾患、糖尿病の病歴がない45歳から62歳の女性看護師6万3676人でした。参加者のクロノタイプの内訳は「明確な夜型」が約11%で、「明確な朝型」が約35%、残りの約半数は「中間型」、つまり朝型や夜型の傾向がまったくないか、または少ししかない人でした。

研究の結果、夜型のクロノタイプの人は不健康な生活習慣を送っている可能性が朝型より54%高く、糖尿病リスクは72%も高いことが判明しました。例えば、夜型の人はそうでない人に比べて飲酒量が多く、食事の質が低く、睡眠時間が短く、喫煙習慣がある可能性が高く、体重やBMI、運動量が不健康なレベルなことがよくあったとのこと。

一方で、生活習慣の要因を考慮すると、クロノタイプと糖尿病リスクの関連性が大きく下がることもわかりました。具体的には、「BMI」「身体活動」「食事の質」で調整した場合の糖尿病リスク上昇率はそれぞれ31%、54%、59%で、全ての生活習慣などの要因を考慮した場合は19%まで緩和されました。

この結果について、論文の筆頭著者であるSina Kianersi氏は、「夜更かしの人は糖尿病発症のリスクが高くなりましたが、喫煙や食生活の乱れといった不健康な生活習慣を考慮すると、そのリスクの大部分は減少しました。リスクの一部はクロノタイプ、つまり体内時計に本質的に関連しているようですが、興味深いことに『夜間に働いている夜型の人』には、このような糖尿病リスクは見られませんでした。このことは、働き方を自然な体内時計のリズムに合わせることが有益なことを示唆しています」と説明しました。



研究チームは、今回の研究はあくまでクロノタイプと糖尿病リスクとの間にある関連性を示したものであるため、「夜型の生活だから糖尿病になった」というような因果関係までは断定できない点に注意が必要だと強調しています。

その上で、研究を主導したTianyi Huang氏は「夜型のクロノタイプによって2型糖尿病のリスクが高まる可能性があるので、自分を『夜更かしタイプ』だと思っている人は、もっとライフスタイルに注意を払う必要があるかもしれません」とコメントしました。