和の名店がひしめき合う麻布十番エリアに、弩級の一軒が移転を果たした。

それが、三田で食通たちを魅了してきた『膳司 水光庵』

閑静な住宅街にひっそりと佇む、和の趣あふれる日本料理店の魅力に迫る!


東麻布の住宅街という意外な立地が、訪れる人の鼓動を高ぶらせる

打ち水された店先に心踊らせ中に入れば、そこは、料亭の雅びと割烹の機能性が交錯する別世界。和の文化に触れる一時を味わいたい


都心のマンションの一室から東京タワーを間近に見る東麻布の閑静な住宅街に居を移し、この6月、リニューアルオープンした『膳司 水光庵』。

ご主人の石田知裕さんは、『京都 吉兆 嵐山本店』で17年間修業。うち7年は副料理長として腕を振るった実力の持ち主だ。



石田知裕さん、44歳。出身は地元の港区の三田。進学校に進みながら、日本文化の素晴らしさを学びたいと料理の世界に進む。料理の味はもちろん、日本文化の伝承にも心を砕く


「日本料理を通じて、茶道や書道、華道をはじめとする日本の文化の素晴らしさ、奥深さを伝えていきたいと思い、料理人の道を選びました」とは石田さん。

その思いが随所に感じられる新店舗は「市中の山居」に倣い、都会の只中とは思えぬ風雅な佇まいを見せている。

足灯籠が灯る入り口の扉を開ければ、まず、待合があり、茶室仕様の個室がその傍らに設えられている。



床の間に掛け軸のかかる個室は、茶室になっており、季節の茶会もしばしば行われるそうだ


時に茶会も行われるというその部屋は、決して華美ではないが黒部杉の竿縁天井や網代天井など各所に趣向が凝らされている。

また、富岡鉄斎の掛け軸がかけられたダイニングは、鉄刀木の一枚板が落ちつきを与えるカウンター席。



カウンターに使われているのは鉄刀木(タガヤサン)の一枚板。紫壇、黒壇とともに三大唐木といわれている銘木のひとつだ。格式高い内装は、京都『未在』や『東麻布 天本』も手掛けた杉原デザイン事務所によるもの


割烹の要素を取り入れつつも、料亭としての風格が漂う。それは、古美術ともいうべき器がふんだんに使われる料理も同様。

ここでは、茶懐石の作法に則り、煮えばなと旬野菜の味噌汁からコースが始まるのだが、それもこの趣の中では不思議と違和感がない。


旬を愛でる贅沢さと、和の美意識を追求した洗練の料理の数々


最近では、コースの最初に前菜の代わりとして供されることもある「八寸」。だが、こちらでは茶懐石の献立形式に則り、コースの最後、お食事の前に提供する。

常時8〜9種類の海山の幸が盛り合わされ、華やかな色彩が目を引く。

右の虫籠の中には「いくらと叩き長芋入りの菊柚子釜」を忍ばせ、その手前の横笛の器には「車海老の旨煮」「丸十」「鮎の甘露煮」、琵琶の器には「菊花」と「春菊」「椎茸の和え物」が入っている。




「鱧葛叩き、松茸」。

茶懐石の煮物椀と呼ぶに相応しい貫禄のあるお椀。萩とススキに満月と月見をイメージした器も見応えあり。

利尻昆布を3日間水出しして取る出汁はふくよかな味わい。




強肴の「川岸牧場神戸ビーフの炭火焼き」。サーロインを炭火焼に。




〆のご飯ものは、「炊き込みご飯」など4種類が順に登場。こちらは「からすみご飯」。



中盤に提供される「縞鯵の炙り棒寿司」。炙ることでより香り高く旨みも豊かに。すべて49,500円のコースから


月見など四季の歳時記を織り込んだその内容は、ダイナミックにして繊細。

氏の食の美学を堪能したい。


■店舗概要
店名:膳司 水光庵
住所:港区東麻布2-14-8 フィルパーク東麻布 1F
TEL:070-4488-3877
営業時間:[一部]16:30〜19:30
     [二部]20:00〜23:00
     ※一斉スタート
定休日:日曜、月曜
席数:カウンター8席、個室1(6席)


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