88歳、築56年団地で快適ひとり暮らし。料理や趣味を楽しみ「豊かな毎日」に
人生100年時代、ひとり暮らしでも楽しく豊かに暮らしたいもの。今回は、YouTube『Earth おばあちゃんねる』で話題の多良美智子さん(88歳)の、団地でひとりで豊かに暮らす工夫をまとめて紹介します。
おうち時間や人づき合い、すべての時間が自分へのご褒美
神奈川県郊外の団地。その4階に多良美智子さんの住まいがあります。
「引っ越してきたときは新築だったのに、早56年。家と一緒に年をとりました。夫が家を買おうか? と言ったこともありましたが、私は借金が嫌で賃貸のままに(笑)。今となってはすべてに目が行き届く、この50平米の住まいが私にちょうどいいんです」
かつては家族5人でにぎやかに暮らしてきたこの家に、現在は多良さんがひとりで住んでいます。
「子どもたちが巣立ち、夫も旅立ち、ひとり暮らしは8年になりますが、寂しさを感じたことはありません。ひとり時間も好きで、家にいるときは、大好きな読書や編み物、料理などを楽しんでいます。また、人のご縁で増えた趣味や習い事のために外に出る機会も多いですね。なにより、3年前にYouTubeの配信を始めたおかげで、さらに人の輪が広がり、むしろ毎日が忙しいくらいなんです」
若い頃から生活に楽しみを見いだしてきた多良さん。暮らしを充実させるヒントを教えてもらいました。
人とのつながりはなによりも大切な財産
「まさか80歳を過ぎてYouTubeに動画配信するなんて考えもしなかったし、本を出したり、取材を受けることになるなんて…。買い物をしていると、『動画観ています』って声をかけていただくことも。そうやって違う世代の方々とお話ができるのは刺激になるし、ありがたいことですね」
LINEも使いこなし、孫とはビデオ通話をし、趣味の仲間との交流も盛んにしています。
「インターネットとか新しい技術はわからないこともあるけど、孫たちが教えてくれる。どんなことも怖がらず、周りの人の力を借りながらやってみるのが、いいと思います」
●動画配信を始めて人の輪が一気に拡大中
当時、中学生だった孫が多良さんの団地暮らしを「おもしろい!」と思い立って始まった動画配信。
「孫が得意なことなら応援してあげよう、と思ったのが始まり。結果的に人生が大きく変わりました」
●趣味を通じた仲間たちと日々交流
心にも体にもいいと実感している趣味が合唱なのだそう。
「楽譜は読めないし声は出ないし、最初は後悔したんですが、レパートリーは童謡から歌謡曲まで幅広く、歌えるようになると楽しい! 年末には第九の発表会もあるんです」
刺しゅうが得意な仲間がつくってくれた似顔絵ブローチ。
「この世にふたつとない宝物です」
毎日の食事が元気の源。「ひとりでもいいお皿でおいしいものを」
「高校生のときからずっとお料理をしてきました。65歳のときには調理師学校に通って免許を取得。あらためて料理の基礎が学べたのもよかったですね。今も食事が生きる原動力
で、栄養のバランスにも気を使っています」
「ひとりだから、もうなんだっていいやとは思えない」と多良さんは言います。
「おいしいものを自分でつくって食べる、それが元気の源なんです。でも、料理はごく簡単なものばかり。ちょっといいお皿を使ったり、箸置きを添えるだけでも楽しくいただけ
ます。食べる前には『いただきます』とひと言添えるのも忘れません」
●65歳で調理師免許を取得。台所時間が楽しい
「栄養学の授業は大変だったけれど、今の食生活にも大いに役立っています。体にいい食
材を積極的に取り入れたり、新しい調理法を試すのも大好きです」。最近はご飯の代わりにオートミールを食べたりすることもあるそう。
●朝は軽め。昼はしっかり。夜は晩酌を楽しむ
朝食はスムージーとリンゴとゆで卵と決めています。「夫が病に倒れたときにつくり始めたスムージーはコマツナやリンゴの皮、プロテインパウダーを入れて栄養もばっちり」
昼食はしっかり食べ、夕飯は大好きなお酒と小さなおつまみで晩酌を。
趣味はお金をかけずに。ひとり時間を充実
若い頃から手仕事が好きだったという多良さん。結婚後もお友達からモラ刺しゅう(中米の民族刺しゅう)や編み物を習うなどしてきました。
「夫が退職したとき、『自分はゴルフも麻雀も存分にやってきた。これからはあなたも好きなことをしなさい。どこへでも送り迎えしてあげるから』と言ってくれたんです」
約束どおり、多良さんが習い事を始めるとご主人は送迎を担当。
「おかげで今も、少しも寂しいことなどありません。麻雀や絵手紙、着物のリメイク、どれも高齢者向けのサークルなので、お金もほとんどかからないんですよ」
●読んだ本は必ず記録。ノートもすでに3冊目
YouTubeを始めたことで、昔ご縁のあった方や知り合いからお手紙などが届くように。
「この年になって思わぬ道が開けました。皆さんから元気をいただいています」
●インテリアが大好き。部屋を日々アップデート
かつては出窓に憧れていたという多良さん、窓と同じ高さの木製のベンチを見つけて即購入。
「妹がつくった織物を敷き、昔つくったお人形や近隣で摘んできた草花を生けて楽しんでいます」