8月17日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、木曜コメンテーターで京都大学大学院教授の藤井聡氏と寺島尚正アナウンサーが、京都を訪れる中国人に関するニュースについて意見を交わした。

藤井氏「日本文化の“日本型経営”はアジア人にはよくわかる」

観光で日本を訪れる外国人に人気の京都が、別の目的でも熱いスポットになっている。
老舗企業に経営のノウハウを学ぼうとする中国人経営者が多く訪れている。老舗を回るツアーにも中国から予約が集まっていて、その背景には、中国の経営者が抱える「いかに企業を長続きさせるか」といった悩みがあるという。

中国は1978年以降の改革開放路線で生まれた企業が多く、現在が2代目への代替わり時期に当たる。共産主義国として建国した中国には、長寿の手本となる老舗企業が少ないという。

寺島アナ「京都の老舗企業に経営のノウハウを学ぼうとする現象が起きているということなんですが、これを聞いて藤井さんはどういう感想をお持ちですか?」

藤井氏「『なんでもしゃぶってきよるな、中国は』と。『なんでもかんでも貪欲やな』っていうのはあるんですが。
ただね、この経営の仕方というのは経済学的な、金儲け・拝金主義的なノウハウ・技術ではなくて、社会学的な技術なんですよね。だから、どういうふうに子どもに引き継いでいくか、あるいは2代目をどうやって選ぶか、従業員はどういうふうに守っていくか、これはいわゆる経済学の教科書に書かれているような金儲けの話とちょっと別の話であって、最近ではほぼ死語になりつつありますが“日本型経営”っていうものがあって、特に京都の老舗の場合は“超日本型経営”をやっているわけで。それっていうのは日本文化そのものなんですよね。こういった日本文化の日本型経営というものはアングロ・サクソン、西洋人にとってはイマイチわかりにくいんだけども、アジア人はよくわかるんですよ。
だからね、こういうのはアジアの連携のためにも中国に散々教えてあげたらいいと思いますよ。アングロ・サクソンと対抗するために“アジア連合”を作ったらいいなっていうのが僕のイメージですね」

京都には老舗企業が多い。帝国データバンクの2022年の調査によると、100年以上にわたって経営を続ける企業の比率は、京都府が5・15%で全国トップ。古くから都があったことや、第2次世界大戦で被害が少なかったことなどが要因とみられる。

老舗を回るツアーに参加した中国人経営者からは 「333年会社が続いている理由は?」「経営で大切にしていることは?」「後継ぎはどうやって選んでいるのか?」といったような質問が飛び出したという。

寺島アナ「こういう質問が来るらしいですね」

藤井氏「そうですね。それの答えは全部、経済学的な答えじゃないです。“信頼”とか“伝統”とか、そういった社会科学的・社会心理学的・民俗学的な回答しかないでしょうね。それは、質問した中国人がきちんとアジア人である限りにおいて『なるほど、そうですか!』と、めっちゃわかると思いますよ」