発達障害のある子の学習にはそれぞれサポートのコツがあるそうです。子どもの負担を減らすさまざまなサポート方法を紹介します(写真:8x10/PIXTA)

宿題に取りかかるのに時間がかかる、集中力が続かない、なかなか理解できない……。そんな悩みを抱える保護者の方いらっしゃると思います。発達障害のある子の宿題にはそれぞれ学習サポートのコツがあるそうです。ちょっとした工夫をするだけで子どもの負担が減り、勉強がスムーズに進むようです。『発達障害&グレーゾーンの子の「できた!」がふえる おうち学習サポート大全』より一部抜粋し再構成のうえお届けします。

算数 計算ドリル「助手になって負担を減らす」

計算ドリルは、式を書いたり、筆算の線を引いたりする作業が負担になることが多いので、線を引く係をしたり、問題番号を書いたりして、子どものやることを減らしてあげます。

あらかじめ担任の先生に保護者がサポートする旨を伝えておくと、子どもが安心できることもあります。そもそもノートに書かれることが嫌な子には、定規を当ててあげたり、消しゴムを渡したりするなど、手術をする医師の助手のような立ち位置でサポートしてあげてください。

私はよく向かい合わせに座って逆方向から線を引いたり、問題番号を書いたりしてサポートします。ちょうど子どもが書いた字のようになるので、あまり嫌がられません。「どう? 似たような字が書けた?」と冗談を挟みつつ進めます。宿題がはかどらない子も、こういうちょっとしたサポートがあるだけでずいぶん違います。

計算は位がそろっていないと間違えやすくなるので、グレーのペンや鉛筆で薄く縦に線を入れてあげてもいいでしょう。計算の手順を忘れてしまう子には、手順書を付箋に書いて見やすいところに貼り、今自分が何をやっているのか確認できるようにします。

言葉で言われたほうがわかる子には、声に出して次の作業を教えてあげます。いくつかの方法を試してみて、「どれがやりやすかった?」と子どもに聞いてみてください。

■定規で線を引いてあげる
筆算の線を引くのが負担になっていることが多いので、「線を引く係をやろうか?」とひと声かけてみるといいでしょう。位を間違えて計算ミスする子には、位ごとに縦に線を入れてあげてもいいですね。


(出所:『発達障害&グレーゾーンの子の「できた!」がふえる おうち学習サポート大全』)

■手順書や声がけで手順を確認する
手順書や声がけで、子どもが今、自分がやっている作業は何かを確認できるようにサポートします。子どもにとって好みやわかりやすさが違うので、子どもにどの方法がよかったか必ず確認するようにしてください。


(出所:『発達障害&グレーゾーンの子の「できた!」がふえる おうち学習サポート大全』)

算数 計算カード「カードをめくってサポートする」

小学校低学年の宿題の定番が計算カードです。はじめは1桁の足し算・引き算から始まり、くり上がり・くり下がりのある足し算・引き算、2桁の足し算・引き算、そして2年生では九九が加わります。

ここでしっかり練習できると、計算ミスが減ったり、時間に余裕ができたりと、高学年になって複雑な計算をするときにじわじわと効果が出てきます。

でも、計算カードの宿題って嫌いな子が多いのです。特に発達障害の中でも発達性協調運動障害があると、カードをうまくめくれません。カードをめくることが負担になって嫌がる場合は、保護者がフラッシュカードのようにカードをめくってあげるといいでしょう。

焦りでうまく計算できないこともあります。たいていの人は、焦らされて緊張感が高まると課題がうまくできないものですが、発達障害のある子どもたちはなおさらです。「早く答えなくちゃ!」と思うと、さらにミスがふえます。まずはカードを順番に並べて、「答えられた!」をふやしていきます。

次に順番をシャッフルして、緩やかに難度を上げていくといいでしょう。計算カードは種類によってまちまちですが、だいたい30枚くらいあります。カードが少なくてもやらないよりはマシなので、カードを10枚だけ抜き取って机に置き、それに答えるというのもいい方法です。

■かわりにめくって負担を減らす
指先が不器用でカードをめくるのが嫌になってしまったり、脳に負担がかかってうまくめくれなかったりすることがあります。そんなときは大人がかわりにカードをめくり、計算に集中できるサポートをしましょう。


(出所:『発達障害&グレーゾーンの子の「できた!」がふえる おうち学習サポート大全』)

■緩やかに難度を上げていく
最初は計算カードの枚数を絞り、「1+1、1+2、1+3」と順番に並べたところから始めます。覚えるくらいになったら、次はランダムに並べたりして、少しずつ難しくしていきましょう。


(出所:『発達障害&グレーゾーンの子の「できた!」がふえる おうち学習サポート大全』)

国語 音読「読みやすくなる道具を使う」

定規や自分の指も、文章を読みやすくするための道具になります。専用のルーラーを使ってもいいでしょう。

● 定規を文の横に置いて、今どこを読んでいるかわかりやすくする
● 読んでいるところを指で押さえたり、なぞったりする
● 詰まったときに、あいうえお表の該当文字を指し示す
● デジタル教科書(デイジー)※を使う

※ 紙の教科書の内容をそのまま記録した電磁的記録の教材。視覚障害、発達障害などにより、紙の教科書で学習することが困難な児童生徒の困難を低減させるためであれば使用できる。

文節にスラッシュを入れると読みやすくなることもあります。また、「。で交代しよう」「1行で交代しよう」など、ちょっとしたゲーム性を忍ばせると乗ってくる子もいます。先に大人が読み上げて、子どもは指で文字をたどりながら読むのもいいですね。

いずれにしても、「ここの単語、ひとまとめに読めていたね」「この字、読むのに慣れてきたね」など、小さな変化を必ずフィードバックすることが大切です。「回数を重ねるとできるんだ!」という気づきを得られるよう、できるようになったことにフォーカスしてください。

■読書をサポートするルーラーを使う
まずは、自分の指や定規で読むところを示しながら読んでみます。読みやすさをサポートするルーラーも各種販売されているので、試してみてもいいですね。


(出所:『発達障害&グレーゾーンの子の「できた!」がふえる おうち学習サポート大全』)

何度も音読を聞くのがつらい時には?

「何度も音読を聞くのがつらい!」というときは、オンラインでおじいちゃん、おばあちゃんに聞いてもらうのもいいアイデアです。

■音読を聞き飽きたら誰かに助けてもらう
オンラインでおじいちゃんやおばあちゃん、単身赴任のお父さんなどに音読を聞いてもらいます。画面の向こうの家族に喜んでもらえるので、一石二鳥です。


(出所:『発達障害&グレーゾーンの子の「できた!」がふえる おうち学習サポート大全』)


(植木 希恵 : 「きらぼし学舎」代表、公認心理師)