TSMC新工場建で地価が高騰する熊本県菊陽町は狙い目か?(写真:KOROKICHIKUN/PIXTA)

地方の築30年の区分マンションに投資して、手間暇かけずに毎月50万円ほどの家賃収入を得ている坂本慎太郎氏に、前回の記事「『地方出身者にお勧め!』不動産投資のマル秘テク」で、その投資法のメリットを紹介してもらいました。今回は、もう一歩踏み込んで、優良物件が見つかる地方エリアの探し方についてアドバイスをもらいました。地方出身者はもちろんですが、田舎を持たない都会出身の人でも実践できるマル秘テクニックです。

築古区分マンション投資はリサーチが9割!

どんな投資でもそうですが、あらかじめ入念にリサーチして、いざ投資をスタートしたあとは定期的にチェックする程度で、基本的にはほったらかしで利益が出る形が理想だと私は考えています。


私が実践している築古区分マンション投資も同じで、まずはエリアを選定し、その中で物件を精査し、この物件だったら賃貸需要も高く、安定して入居者が住んでくれそうなので利益を得られるだろう、と判断した物件を購入しています。

つまり購入前のエリアと物件選びが非常に重要なので、ここでは失敗しないエリア選びのコツを紹介したいと思います。

まず、エリア選びに関して私が重要視している2つの項目があります。

・現在、多くの人が住んでいるか?

・将来、人口が増える可能性があるか?

ですので、現在の人口が多く、今後の増加も期待できるエリアが理想ではあるのですが、日本全体の人口が減少傾向なので、そうしたエリアを見つけることはなかなか難しいのが実情です。

参考までに、福岡市は全国20政令指定都市の中での人口増加率が毎年上位なのですが、福岡市の見立てでは、今後の人口は減少するだろうと予想されています。

こうしたエリアで物件を購入すると、いずれ人口が減っていったときに、入居者が安定しなくなってしまうリスクが十分考えられます。

地価公示の上昇率にヒントがある

人口が減少傾向の日本で、活気のあるエリアを探すのはなかなか難しいと思ってしまいますが、それでも物件探しに適したエリアの探し方があります。

そのヒントは「地価公示の変動率」です。「地価公示」とは、国土交通省が毎年3月下旬に公表する土地評価のことです。

今年2023年1月時点での土地の価格を調べたものが同年3月に発表されましたが、全国ランキングのうち、住宅地の地価変動率の上位10位を北海道が占めました。さらに上位4位は北広島市に集中しています。

この理由がおわかりでしょうか?

よく話題になっていましたし、スポーツに詳しい方でしたらすぐにピンときたでしょう。

プロ野球の日本ハムファイターズが北広島市に新球場である「エスコンフィールドHOKKAIDO」をオープンしたので、その影響で周辺エリアの地価が30%も上昇したのです。

エリアを変えて他の例を挙げてみましょう。

同じく2023年3月に発表された熊本県内の地価公示ランキングで、住宅地および商業地で1位だったのが菊池郡菊陽町という町でした。

この菊陽町の地価が上がった理由は何だと思いますか?

日頃から経済関連のニュースをよく見ている方はおわかりになったかと思います。台湾の世界最大の半導体製造企業であるTSMCが、この熊本県菊池郡菊陽町に工場を建設しているのがその理由です。

菊陽町は熊本市のベッドタウンとして人気でしたが、TSMCの半導体工場建設の影響で2023年は前年比で20%も地価がアップしたのです。

この新しい工場建設により、大きな影響があるとされています。

まずは新工場に雇用される人向けの住居が必要になることが想像できます。菊陽町では住居用の土地の需要が増加していますが、それだけでは足りずに周辺エリアの地価も上昇しているといいます。

さらに、TSMCの進出により、関連企業や物流関連の会社が熊本に進出しているので、住居の需要はさらに増加していくと考えられます。

とはいっても、このように規模が大きい開発に関して、先回りして物件を購入したりするのはなかなか難しいかと思います。

あくまでもこの「地価公示の変動率」がヒントと言ったのは、このようにして地価が上昇するという例を理解して、他のエリアで似たような情報を探すことができると考えているからです。

例えば、そのエリアに大きなショッピングモールや商業施設が進出するといった場合や、TSMCのような世界的企業ではなくても、新しい工場が建設される、といった小さい規模の開発や再開発でも周辺の地価は上がりますし、地価に反映されない場合でも、そのエリアに人が集まる、住人が増えそうだということであれば、その地域に物件を所有しても入居者探しに困らない、ということにつながるのです。

このような地元の開発にかかわる情報などは、そのエリアに住んでいる人でないとなかなか入手することができません。ですので、私がお勧めしているのが、前回の記事「『地方出身者にお勧め!』不動産投資のマル秘テク」でお話ししたように、「自分の地元で物件を探す」というやり方なのです。

自分の地元でしたら、ある程度土地勘もありますし、親や親戚、また近所の人や同級生、友達などからこのような情報を得やすいでしょう。

工業地帯では地形による賃貸需要も考える

先ほどの熊本県菊陽町のように、工場が多く建っていて、そこで働いている人が多いエリアであれば、住居の需要が安定して継続すると考えることができます。

ただ、これは半分正解で半分間違っています。

中には、賃貸需要がそれほどでもない工業地帯があるのです。

それはなぜでしょうか? ちょっと考えてみましょう。

地方は都心部と状況が異なっており、土地があれば賃貸で物件を借りるよりも一戸建てを建ててしまう、という傾向があるからです。

つまり、工場の周辺に平野が広がっているような地域では、働いている人たちはわざわざ賃貸で部屋を借りずに家を建ててしまうので、賃貸需要が低いということがあるのです。

たとえば、4大工業地帯のうち、北九州の工業エリアはどんな特徴があるでしょうか?

Googleマップなどを見て、このあたりの地形を見て考えて仮説を立ててみてください。

何か思いついたでしょうか。それでは正解を発表します。

この北九州の工業エリアは、山と海の間にある平野部が少なく、その平野はすでに工場と住宅で埋まってしまっています。

つまり、このエリアで一戸建てを建てようとすると、価格が比較的高めになってしまうか、街の中心部よりも遠くの場所などを選ばないと建てることができません。

つまり、一戸建てを建てずに、賃貸で部屋を借りるという選択肢を選ぶ層が出てくるので、物件を購入するのに適したエリアと判断することができるのです。

優良物件を見つけるカギは平野の広さにある

このような地形からみた賃貸需要の考え方は、工業地帯だけとは限りません。私は全国の政令指定都市の物件を調査したことがあるのですが、例えば仙台エリアは平野が広いので、一戸建てを建てる人が多いと推測され、賃貸向きの築古物件がなかなかありませんでした。

政令指定都市ではないのですが、小田原市が逆の例として挙げられます。ここも先ほどの北九州のように平野部が少なく、そこもすでに一軒家とマンションで埋まっているので、一軒家を建てるスペースがありません。スペースがないということは高価になるので、賃貸需要が発生するということになります。

このように、物件選びをする前に、そのエリア全体の特徴を調べて、そもそも賃貸需要が高いかどうかを確認しておきましょう。賃貸需要が高ければ物件数が多いのでその中から優良物件を探し出せばいいのです。逆に、賃貸需要が低ければ、物件も少ないうえに、需要が低いので入居者探しに苦労することもあるでしょう。

まずは自分の出身地などで情報を得られやすく、事情に詳しくなれるエリアを確保できるのがベストです。そのエリアの中から、雇用や住宅事情などをリサーチして物件選びにつなげてください。

生まれが東京のような都心であったり、出身地を調べたけれどもあまり賃貸需要がない、という方の場合には、「地価公示の変動率」などの公開情報でアタリをつけてから、地形の特徴などを意識して、自分の得意とする地方エリアを見つけ出しましょう。

このリサーチには時間がかかりますが、優良物件選びの近道だと思っています。

(坂本 慎太郎 : こころトレード研究所所長)