足の激痛が特徴の痛風。激しい痛みがあるときはどのようにしたらいいのでしょう(写真:buritora/PIXTA)

激痛が特徴の痛風発作。もし発作が起こったらどう対処したらいいのだろう。
日本痛風・尿酸核酸学会理事で、複十字病院膠原病リウマチセンター長の谷口敦夫さんに聞いた。あわせて、最新の高尿酸血症の治療薬「尿酸降下薬」の種類と特徴についても紹介したい。

痛風がキタ〜、さあどうする?

日本痛風・尿酸核酸学会の『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』には、痛風がなくても尿酸値が9mg/dL以上になると薬物療法を考慮する、とある。だが、「実際は、痛風の発作が起こったときから始まるケースが多い」と谷口さんは説明する。

「痛風発作と似ている痛みもありますし、痛み止めの選び方も患者さんの状況(合併症など)によって変わってきます。ですから痛風発作が起こったら医療機関を受診するのが原則です」と谷口さんは言う。

しかし、痛すぎて外出できない場合はどうすればいいのだろうか。

「歩けないほど痛みが強い場合は、氷や保冷剤などで患部を冷やしたり、クッションなどの上に足を置いたりして、安静にします」(谷口さん)

痛いからとマッサージをしたり、さすったり、もんだりしないこと。悪化する可能性がある。激痛が少し軽くなって動かせるようになっても、足に刺激を与えるような行動はできるだけ避けたい。歩くときはスリッパやサンダルなど、足を締め付けない履き物がよいという。そして「移動できるようになったら、病院を受診してください」(谷口さん)。

市販の痛み止めで悪化

ガマンできない痛みを取りたいとき、市販の痛み止め(非ステロイド系抗炎症薬)は飲んでいいのだろうか。

「非ステロイド系抗炎症薬は、患者さんの合併症や服用している薬によって選択が異なってくるので、医療機関で指示を受けて服用するのが原則です。市販の痛み止めのなかでは、カロナールなどのアセトアミノフェンは比較的安全に使えると思いますが、効果は弱いです。バファリンに代表されるアスピリン(アセチルサリチル酸)は、発作が悪化する恐れがあるので、痛風発作の治療には向きません」(谷口さん)

もちろん、発作が起こっているときの飲酒は厳禁。脂身の多い肉も控えたほうがいいとのこと。発作を悪化させたり、長引かせたりするリスクがあるためだ。

受診先は、もし高尿酸血症でかかっているクリニックや病院があれば、そこで診てもらうといい。一方、今までどこの医療機関にもかかっておらず、初めて痛風発作が出た場合は、内科、整形外科、外科、リウマチ科あたりがいいそうだ。

医療機関では、まず問診や触診で病状を確かめる。関節のX線や、最近では関節超音波検査を行うこともある。関節液を抜いて、関節液のなかに尿酸の塊がないかを調べることもあるという。

そのうえで、痛みと炎症を抑えることを目的に、非ステロイド系抗炎症薬や、プレドニゾロンなどのステロイド薬、コルヒチンのいずれかが使われる。いずれも飲み薬だが、ステロイド薬の場合は関節注射もある。

「まずは痛風発作を抑える治療を優先させます。尿酸値を下げる治療は、発作が治まった後、しばらく様子を見てから始めます」(谷口さん)

ちなみに、痛風発作を繰り返していると、発作の前触れがわかるようになるそう。

足の親指がぶつけたわけでもないのになんとなく痛い、むずむずする感じがする……といった症状で、その後、半日から1日の間に発作が起こる。この前触れがあったときに、前述したコルヒチンという薬を1錠飲むと、本格的な発作を防ぐことができる(ただし、この前触れ、初めて発作が起こった人が感じるのは難しいとのこと……)。

続いて、尿酸値を下げるための薬物治療について見ていこう。

医療機関では、まず採血や採尿のほか、必要に応じて関節のX線や超音波、腹部超音波、尿酸クリアランス(後述)などの検査を行って、どんな原因で尿酸値が上がっているか、そのタイプを調べる。

正常な人は、1日に尿酸を約700mg産生し、約700mgを排泄する。そのバランスが崩れると尿酸が体に溜まることになるが、そのバランスによって「尿酸産生過剰型」「尿酸排泄低下型」「混合型」に分かれる。尿酸クリアランス検査とは尿中の尿酸の量を測る検査で、尿検査と同時に血液検査を行う。2時間ほどかかるが正確に病型を診断できる。

「尿酸産生過剰型」は体内で尿酸が過剰に作られるタイプで、暴飲暴食や果糖の過剰摂取などが原因となる。

「尿酸排泄低下型」はプリン体は増えていないが、尿酸の排泄が悪い状態で、たとえば肥満に伴ってインスリン抵抗性(インスリンの効き具合が低下している状態)があると、このタイプになる。

そして、その両方の原因が混在しているのが混合型だ。

痛風のタイプ別「薬の使い方」

尿酸を下げる薬も、原因のタイプに応じて尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬がある。それぞれどう使い分けるのだろうか。谷口さんは言う。

「日本では以前から、尿酸がたくさん作られる人には尿酸生成抑制薬を、尿酸の排泄が悪い人には尿酸排泄促進薬を使っていましたが、実は確固たるエビデンスはありません。海外では尿酸生成抑制薬が主流で、最近では日本でもそちらを使う機会が増えています」

タイプでいうと尿酸排泄低下型が7〜8割程度と多い。にもかかわらず、尿酸生成抑制薬のほうが使われている理由は、尿酸排泄低下型や混合型にも使うことができるためだ。一方、尿酸排泄促進薬は尿酸産生過剰型には使いにくいという。

「尿酸がたくさん作られている人に尿酸排泄促進薬を使うと、尿の中に尿酸がどんどん出てしまい、腎臓に負荷がかかる心配があります。尿路結石ができる恐れもあります。実際、尿路結石がある場合には、尿の中に尿酸を増やさないほうがよいため、尿酸排泄促進薬は避けています」

と谷口さん。また、腎機能が低下していると尿酸排泄促進薬の効果が落ちるので、この場合も尿酸生成抑制薬を使うことが多いそうだ。

ここで薬の種類について解説したい。

尿酸生成抑制薬には、フェブキソスタット(フェブリク)、アロプリノール(ザイロリックなど)、トピロキソスタット(トピロリック、ウリアデック)がある。

アロプリノールは1964年以来ずっと使われてきた古くからある薬、フェブキソスタットは2011年に保険収載された薬だ。

「アロプリノールでは1日2〜3錠服用(200〜300mgを2〜3回に分ける)する必要があるのに対し、フェブキソスタットは1日1錠(20〜60mg)ですむので、続けやすいメリットがあります。また、腎機能が低下している場合でも使いやすいです」(谷口さん)

2013年に登場したのがトピロキソスタット。1日2回投与で、やはり腎機能が低下している場合でも使うことができる。

尿酸排泄促進薬の代表的な薬は、プロベネシド(ベネシッド錠など)、ベンズブロマロン(ユリノームなど)、ドチヌラド(ユリス)だ。

プロベネシドは1951年頃からある古い薬で、最近ではあまり使われなくなってきている。1970年代に登場したのがベンズブロマロンで、日本では尿酸排泄促進薬のなかで最も多い。2020年に登場した新薬、ドチヌラドは、少ない量で効果があり、肝機能障害などの副作用が出にくいとされる。

実際、わが国ではどんな薬が使われているのか。特定の医療機関で患者約4500万人のデータベースを基に、処方された薬剤別の使用人数をはじき出すと、以下となる。


(表:メディカル・データ・ビジョンのデータを基に編集部で作成)

薬を続けなければならない理由

いずれにせよ、どのような尿酸降下薬を使っても、尿酸値を6.0mg/dLまで下げる必要がある。薬を使うことで関節に溜まった尿酸の塊がだんだん減っていくのだが、「尿酸の塊が減るのはゆっくりです。関節の組織が傷んでいたり、途中で生活習慣の改善がうまくいかなかったりすると、さらに減りにくくなるでしょう」と谷口さん。

このため現時点では、“薬はずっと続けるべき”という考え方が主流となっている。

もちろん、生涯、薬を服用することを負担に感じる人もいるだろう。それに対して谷口さんは、「私の場合、尿酸値をきちんと下げた状態が5年程度続いたら、患者さんと相談したうえでいったん薬を中止してみることもあります。もちろんその後も定期的に検査は行います」と話す。


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高尿酸血症の治療はドロップアウト(治療を途中でやめてしまう)率が高い。痛風の発作が治まってしばらく経つと、「もう大丈夫」と油断してしまうからだ。しかし、発作の根本原因が改善されないまま治療を中断すれば、当然ながら、発作が繰り返される。

発作を繰り返す状態(すなわち、尿酸値のコントロールが悪い状態)を続けると、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を併発したり、悪化させたりして動脈硬化が進み、腎不全や心筋梗塞、脳卒中など、生死に関わったり、QOL(生活の質)が落ちたりするような病気を患う恐れもある。

そのため、生活習慣に留意しながら、治療を継続するように、谷口さんは繰り返し患者に説明するという。

(取材・文/伊波達也)


複十字病院膠原病リウマチセンター長
谷口敦夫医師

1983年、三重大学医学部卒業。1985年、東京女子医科大学附属リウマチ痛風センター助手。1991年、アメリカカリフォルニア大学サンディエゴ校研究員。2003年、東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター助教授。2018年、同大膠原病リウマチ内科学講座教授。2020年6月より現職。日本痛風・核酸代謝学会理事、日本リウマチ学会評議員・指導医・専門医、日本脊椎関節炎学会理事。『大丈夫!何とかなります 尿酸値は下げられる』監修(主婦の友社)、『マンガでわかる痛風の治し方』著(主婦の友社)ほか著書多数。

(東洋経済オンライン医療取材チーム : 記者・ライター)