函館2歳Sを勝利したゼルトザーム(撮影:山中博喜)

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【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】

◆先週の血統ピックアップ
・7/15 函館2歳S(GIII・函館・芝1200m)

 中団の外を追走したゼルトザームが大外から差し切りました。

 父ヘニーヒューズは、2021年以降、全日本ダート種牡馬ランキング(中央ダート+地方)のトップを維持しています。その一方で、JRA重賞12勝のうち4勝を芝で挙げています。

 アジアエクスプレスやワイドファラオのような芝とダート双方で重賞を勝つ馬も現れています。ダート専用種牡馬ではない、という奥行きの深さが魅力です。

 母ロザリウムは、ローズキングダム(ジャパンC、朝日杯FS)の全妹にあたる芝血統。いわゆる「バラ一族」に属しています。この牝系は10年ほど鳴りを潜めていましたが、このところスタニングローズ(秋華賞、紫苑S、フラワーC)やチャンスザローゼス(アイビーS)などの活躍で、再び活気づいています。

 母は完全に芝向きの血統なので、配合によっては芝向きの仔も出せる父の特長と相まって、ゼルトザームは芝もこなせるタイプとなりました。アジアエクスプレスやワイドファラオは、キャリアを重ねるにつれダート路線に落ち着くようになりました。ゼルトザームもやがてはそうなるかもしれません。

◆今週の血統Tips
 2018年の米三冠馬ジャスティファイは、現3歳が初年度産駒です。日本にも多くの産駒が輸入され、出世頭のユティタムは、先日大井競馬場で行われたジャパンダートダービー(JpnI・ダ2000m)で4着となりました。

 JRAでこれまでに挙げた全9勝はすべてダートで、芝では1勝もしていません。海外の産駒傾向を見ると、ダート一辺倒というわけではなく、むしろ芝の活躍馬が目立ちます。

 7月8日、アメリカのベルモントパーク競馬場で行われたベルモントオークスS(米G1・芝10ハロン)を、ヨーロッパから遠征してきた同産駒アスペングローブが勝ちました。

 7月15日、英ニューマーケット競馬場で行われたスーパーレイティヴS(英G2・芝7ハロン)をシティーオブトロイが、7月16日、仏シャンティイ競馬場で行われたロベールパパン賞(仏G2・芝1200m)をラマテュエルが勝ちました。後者は6月18日にデュボワ賞(仏G3・芝1200m)も勝っています。

 このほか、オーストラリアで2頭、アイルランドで1頭の芝重賞勝ち馬が誕生しています。ダートでもウディスティーヴンスS(米G1・ダ7ハロン)を勝ったアラビアンライオンをはじめ4頭の重賞勝ち馬が出ていますが、割合としては芝に軍配が上がります。

 まだ産駒が出始めの段階なので、この先、産駒傾向が変わっていく可能性は十分ありますが、ヨーロッパに渡った産駒が好調なので、おそらくヨーロッパを拠点に置く馬主がアメリカのセリでジャスティファイ産駒を購買する流れは強まっていくことでしょう。

 スピードと決め手が求められるわが国の芝では苦戦していますが、いずれこなす仔も出てくるのではないでしょうか。