今夏の函館開催が早くも最終週を迎える。フィナーレを飾るのは函館伝統の一戦、GIII函館記念(7月16日/函館・芝2000m)だ。

 同レースについて、日刊スポーツの太田尚樹記者はこう語る。

「JRA屈指の"荒れる重賞"だと思います。なにしろ、最近10年間の馬連平均配当が2万1611円。最低配当でさえ2013年の3590円と、堅く収まったことがありませんから」

 3連単の配当に目を向けても、最低配当が2019年の5万2140円。過去10年のうち10万円超えの高配当が7回もあり、2020年には343万2870円という超高額配当が飛び出している。

 そうした結果を引き起こしている要因のひとつは、1番人気の不振だ。過去10年でわずか1勝、2着1回と振るわない。こうした理由の一端として、太田記者はこんな見解を示す。

「『夏は格より出来』と言いますが、その格言が当てはまらないのがこのレースの特徴でもあります。現に、前走1着馬は過去10年で16頭出走して、1勝、2着0回、3着1回、着外14回で連対率は6.3%。昇級馬を除いても、1勝、2着0回、3着0回、着外12回と連対率7.7%という有様です。こと函館記念に関しては、前走1着馬は消してもいいかもしれません」

 今年も、前走でオープン特別の巴賞(7月2日/函館・芝1800m)を勝ったアラタ(牡6歳)や、3勝クラスのむらさき賞(5月28日/東京・芝1800m)を勝ち上がってきたローシャムパーク(牡4歳)らが上位人気となりそうだが、絶対視するのは禁物かもしれない。

 こうした状況を踏まえて、太田記者は今年のレースで波乱を起こしそうな伏兵候補2頭をピックアップする。

「まず気になるのは、イクスプロージョン(牡5歳)です。全成績は20戦5勝ですが、6月〜7月の成績に限れば、4戦3勝。この季節を大の得意としています。


函館記念での一発が期待されるイクスプロージョン

 また、キャリア20戦で上がり34秒をきったことがなく、管理する杉山晴紀調教師によると、今回は『(主戦の)和田竜二騎手と話して"時計がかかる洋芝が面白い"のでは』ということで、その適性を見込んでの参戦。馬場が荒れてきた最終週というのも合いそうですから、楽しみです」

 同馬は昨年7月のオープン特別・関越S(新潟・芝1800m)を勝って以降、重賞戦線では厳しい戦いが続いているが、前走のGIII新潟大賞典(5月7日/新潟・芝2000m)では3着と好走。重賞の舞台にも慣れてきた今、一発への期待が一段と膨らむ。

「実戦での集中力が課題でしたが、障害練習を採り入れながら徐々に改善が見られ、不良馬場だった前走の新潟大賞典で3着。復調の兆しを見せました。現在全国リーディングトップを走る厩舎の勢いも見逃せません」

 太田記者が注目するもう1頭は、白毛一族のベテランだ。

「昨年の覇者ハヤヤッコ(牡7歳)も忘れてはいけません。前走の新潟大賞典は、さすがに馬場が悪すぎた印象。6着という結果も致し方ないでしょう。

 もともと常に力を出しきるタイプですが、最近はスローペースで展開が不向きだったGIII中日新聞杯(12月10日/中京・芝2000m)で5着、GII金鯱賞(3月12日/中京・芝2000m)でも4着と健闘。年を重ねて、ますます充実している印象があります。

 今回は、ユニコーンライオン(牡7歳)やテーオーシリウス(牡5歳)など先行勢がそろっていて展開も向きそう。昨年と同じ浜中俊騎手が手綱をとるのも好材料です。連覇のチャンスは十分にあると思います」

 今年の函館開催は、再び波乱のフィナーレとなるのか。ここに名前が挙がった2頭からも目が離せない。