神木隆之介さん(2017年撮影)

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俳優の神木隆之介さん(30)が主演するNHK連続テレビ小説「らんまん」の第54回が2023年6月15日に放送された。この日の放送では植物学会の機関紙が完成。雑誌は非常に精巧な出来上がりで、主人公・槙野万太郎(神木さん)が出入りする研究室の全員を驚かせるものだった。

「万太郎のしたたかさが垣間見える...」

出来栄えが一定の水準に達していない場合は全て焼却すると宣言していた田邊彰久教授(要潤さん=42)だったが、機関誌の精巧な出来に加え、最後の「謝辞」のページに「偉大なる田邊会長」という文言にノックアウト。素晴らしい出来だと評しつつ、「私が雑誌を思い付いたからこそ、こうして形になったわけだ」と手柄を横取りするような発言で研究室を凍らせたが、万太郎は笑顔で「はい」と返し、無事出版となったのだった。

このシーンに対しては、「田邊教授に今までも搾取されてきたんだろうね」といった声が視聴者からツイッターに上がる一方、「謝辞の内容から見ても、あの田邊教授すら掌で躍らせる万太郎のしたたかさが垣間見える...」といった声も上がった。万太郎は手柄を横取りされても仕方なく受け入れたのか、それとも実はしたたかさで、田邊教授の心をつかむために「偉大なる」の一言とともに手柄を「献上」したのか。

J-CASTニュース編集部は、万太郎の人物像について、「ネットと朝ドラ」の著書で知られるライターの木俣冬氏に意見を求めた。

「人たらしではあるとは思います」

木俣氏は、万太郎がしたたかな人物か否かについてはこれまでの描かれ方では分からないとしながらも、「人たらしではあるとは思います」と指摘する。

「会う人、会う人の心を捉えて、味方になってもらっています。なんといっても、田邊教授に気に入られ、学生でもないのに、大学に見事に出入りできるようになったことと、植物の雑誌を出版できるようになったこと、印刷工場で石版印刷を教えてもらったことなどです」

続けて、こうした関門を難なくクリアしていく万太郎について、「朝ドラではそういう主人公はネガティブにとらえる視聴者もいますが、今回はそうでもない」と指摘。その理由として、

「例えば、田邊に学会誌の花を持たすとか、大窪も懐柔するといった部分は、配慮している気はします」

と、15日の放送での田邊教授のシーンや、出版記念の飲み会で研究室の大窪昭三郎講師(今野浩喜さん=44)から、機関誌について「槙野君。続き作ってくれないの?」という言葉を引き出すなど、関門を突破できる人物であるとの描写が丁寧だとの考えを示した。

「真面目さと清潔感があって育ちのよい、感じのよい人物に見えている気がします」

時には相手に花を持たせたり、はたまたヨイショしたり。ドラマや映画といったフィクションの世界では、このような芸当が出来る人物は必ずしも好感度の高いキャラクターとは限らない。

木俣氏は人たらしぶりを発揮する万太郎が、そのような人物にありがちな「狡猾さ」を持たないキャラクターであることを示すべく、神木さんが演技をする際に気を付けているであろう点を指摘。それは、視聴者に対して「こう見えてほしい」といった、万太郎を演じている最中の自身の印象を押し付けないようにしているのではないかというものだ。その結果、

「真面目さと清潔感があって育ちのよい、感じのよい人物に見えている気がします」

と、視聴者に与える万太郎の人物像を推測した。

(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)