“水深3センチの用水路”で発見の「富山ブラックラーメン」大将 家族が明かす「本当の死因」

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3月14日の朝、人気ご当地ラーメン「富山ブラック」の名店『翔龍』の店主・浅野昭次さん(70)が遺体で見つかった。浅野さんは13日の夜から行方不明になり、翌日の朝に店からほど近い水深わずか3.5僂陵竸縅で、あおむけに倒れているのを警察が発見した。

30年にわたり地元住民に愛されてきた『翔龍』。深夜0時の閉店間際になっても駐車場はほぼ満車、遠方からのファンも多く訪れる超人気店だった。それだけにその店主の死は大きな衝撃を呼んだ。浅野さんの急死後も、店舗はスタッフたちによって営業を続けている。浅野さんの妻であり、『翔龍』では女将として店を切り盛りしていた智英子さんはこう話す。

「14日の深夜0時ごろ、お父さんがいないことに気付いて携帯電話に電話したのですが、鳴ったのが自宅のベットの横で……その日の一日は電話を置き忘れていたようでした。午前1時ごろ警察に捜索願いを提出して捜索していただきました。翌朝、警察から連絡を受けて警察署へ行くとビニール袋に入れられたお父さんがいたんです。警察の方から、『事件か事故か死亡原因が分からない、外で亡くなっていてカメラもない所だったので司法解剖をして死因を調べたい。旦那さんを一日お貸しください』とお願いされました」

司法解剖の結果、死因が明らかになった。浅野さんは、周囲が暗くなり始めた18時40分頃に自転車で店を出た。ちょうど自転車が通れるくらいの裏道に入り、融雪パイプに乗り上げ転倒、用水路の角に頭を強く打ち付け、頭蓋骨一部陥没と頚椎骨折により即死したものとみられる。妻の智英子さんがその日を振り返る。

「もうちょっと、1分でも早く帰っていれば外も明るくて、事故は起こらなかったんじゃないかと考えてしまいます。普通に帰ってきてただいまと言って、孫を抱っこできたのに……。発見された道は、いつも通ってた道じゃなかったんです。あの日はとても寒かったから、近道しようとしたんでしょうね。本当に悲しいですが、即死だったということは辛い思いをしなかったということですから、そこだけは安心しました」

娘の舞子さんは、父親との思い出をこう振り返る。

「パパは『ラーメンなんか、たかがラーメンやから』っていつも言っていました。だからこそ、いつでも安く早くうまく食べられるお店を作ることが自分の役割やと。パパが亡くなった後も、みんな頑張ってくれていて……。そういうお店作りが、本当にパパがやりたかったことやろうなと思います。こうやってたくさんのお客さんに来て頂いてホンマに嬉しいやろうな」

『翔龍』に勤務して20年以上の作井省一さんは、事故現場に行き浅野さんの本人確認をした。遺体が浅野さんであることを確認して、泣き崩れたという。

「マスターに何か伝えるとしたら……ありがとうございました、その一言しかないです。今まで通りやるしかないですよ。絶対ブレません、マスターもそうだったので」

富山県庁によると農業用水路の転落による死亡事故は、昨年4月〜今年2月までの10ヵ月間で11件、‘11年から‘20年までの過去9年間では197件にものぼる。

家族にも従業員にも、地元のラーメン好きにも愛されていた店主の命を一瞬で奪ったのは、用水路の溝だった。早急な対策が求められる。

取材・写真:幸多潤平・田川紘輝(葬儀の写真提供)