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TVアニメ『シュガーアップル・フェアリーテイル』OP主題歌「ミュージカル」と3rdアルバム『fruitful spring』を1月25日に同時リリースした鈴木みのり。ロングインタビューPart.2は、3rdアルバム『fruitful spring』編。北川勝利(Round Table)や坂本真綾、江口亮に滝澤俊輔、ボカロPであるいよわ、そして尾崎雄貴(Galileo Galilei、BBHF)と、鈴木みのりを知る者ならばクリエイターの布陣に彼女の息吹を感じとれるだろう。過去と現在を凝縮させた先には鈴木みのりというシンガーの未来が現れ、その歌声と表現力が生み出した極上のPopsは属性を飛び越えて多くの人を魅了すると確信させる。そんなアルバムが誕生に至る道を彼女の口から教えてもらう。

INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)

もっと自分の意志を持って音楽活動に臨まなければという決意



――まずはアルバムコンセプトから教えていただけますか?

鈴木みのり 実はアルバムのためのコンセプト作りがスタート地点ではなくて。今回、フライングドッグの制作陣が大きく変わったんですね。2ndアルバムまでは『マクロスΔ』からお世話になっている福田(正夫)さんがメインのディレクターだったんですけど、今、私を担当してくださっている方は深水(円)さんという方で。その変わるタイミングで私が、25歳になるということを意識しだしたこともあって、「自分はもっと意志を持って音楽活動に取り組まないといけないと思っている」という話をさせていただきました。深水さんも同じ考えで、深水さんが決めたことを私に納得してもらいたいし、私が決めたことならなおさら尊重したい、ということを仰っていただきました。なので、まずはコンセプトを決めず、今までお世話になった方、そしてこれからの鈴木みのりを見せていくためにご一緒したい方に声をかけることになりました。

――たしかに、楽曲を制作したクリエイター陣の名前を見ると、北川勝利さんや坂本真綾さん、Galileo Galilei・BBHFの尾崎雄貴さんなどなど、「鈴木みのり」を強く感じることができます。

鈴木 ただ、(坂本)真綾さんは恐れ多くこちらからお声がけはしていなかったのですが、北川(勝利)さんが気を利かせて「みのりちゃんのアルバムなら」ということで声をかけてくださいました。そこから生まれたのが1曲目の「My Own Story」で。尾崎さんは、自分がずっと一緒にやりたかったけどそれが言えなかった人で。でも歌手活動5周年を迎えた今ならできる気がするということでお声がけさせていただきました。アルバム制作の過程で、「My Own Story」と「夏のばね」ができた時点で、ほかの曲も出来ていたんですけど、私にとっては北川さんと尾崎さんはとても大きい存在なので、お二方からインスピレーションをいただき、アルバムのイメージを膨らませようと思いました。そうしたら真綾さんが書かれた詞に「次の季節へ」というワードがあり、尾崎さんの楽曲タイトルが「夏のばね」だったことから、アルバムを冬に発売し、春になってツアーをし、「次の季節へ」で夏になり、“みのり”の秋を迎える、という意味を込め、タイトルを『fruitful spring』にしました。アルバムタイトルを自分で決めるのは初めてでしたが。といったところがアルバム制作の大きな流れですね。

――「My Own Story」と「夏のばね」がアルバムの核となったということですが、手がけたお二人についてもお聞かせください。まず、北川さんは鈴木さんにとってどのような存在だと感じていますか?

鈴木 北川さんがいなかったら私はこうして音楽活動を続けていなかったかもしれない、と言っても過言ではないくらいで。勿論最初は、北川さんの作る曲が好きで、ご一緒できたときは憧れの存在でしたが、今となっては1番距離の近い作家さんであり、バンドメンバーの一人でもあり、私が入る前のフライングドッグを知っている人でもあり。常に一緒にいる方ではないし、私が立ち止まりそうになったときにぐいぐいと慰めることはせず、そばで気づいて手を差し伸べてくれるような方ですね。あと、北川さんは太陽みたいな人で、私の後ろ向きな気持ちが溶けるくらいに明るい人なんですね。自分はそういう人といる方が居心地良くて。ライブのときも制作でも、色々な意味で、自分のモヤモヤを溶かしてくれる人だとは思います。

――「My Own Story」の歌詞もアルバムコンセプトにつながったということですが、坂本さんの歌詞に対する印象も教えてください。

鈴木 真綾さんには以前も歌詞を書いていただきましたが、「面と向かってお話したことって実は楽屋挨拶くらいしかないのに、こんなに自分のことを理解してくれているなんて」という驚きがまずありますね。北川さんは真綾さんに、歌手活動5周年のお祝いでもあるので聞き手を想像しながらその背中を押すような歌詞を書いてほしい、とお伝えしたらしいのですが、あと少しで光に手が届くというようなニュアンスがありつつ、苦しい時期もあったということが歌詞に込められていたのが嬉しかったですね。北川さんのメロディも爽やかな風が吹くようで。曲も歌詞も、5周年というお祝いのアルバムなら私のキャラクターイメージ的に「おめでとう!やったね」「楽しんで!」という方向に振り切るかと思っていたんですけど、ふたを開けてみたら本当に自分を表す曲をいただけたと思いました。

――前を向く鈴木みのりを表現してもらったとも思いますが、ご自身ではネガティブが強いとはよく仰っていますよね。前向きさや向上心という面では、自身をどのように捉えていますか?

鈴木 向上心はめちゃくちゃあると思います。多分、あるから、向上していない自分を見つけたときにネガが働くんですよね。でも周りの人の色々な話を聞くなかで、自分は「もうできない」って泣きはしないし、諦めもしないので、最近は「意外と肝が座っているのかも」と思うようになりました。

――次は、尾崎さんが鈴木さんにとってどのような存在なのかも教えていただけますか?

鈴木 尾崎さんについては、真綾さんや(やなぎ)なぎさんと同じくらい大好きで。でも、ご縁が繋がってご一緒できた真綾さんやなぎさんと違い、尾崎さんとは多分自分で作りにいかないと一生ご縁が生まれないと思っていました。

――同じに見えて隣の業界ですから。

鈴木 ただ、いくらでもタイミングはあったんですよ。これまでも「誰とやりたいですか?」とは聞かれてきたので。でも、自分のアーティストイメージやお客さんが受け入れてくれるどうかを考えて、ひるんでしまっていました。それが、自分の意見を徐々に作品に反映させることができ、意外にお客さんがどんな自分も受け入れてくれると知った今なら「できるかもしれない」と思いました。尾崎さんの楽曲に恥ずかしくない自分を感じることができたんですね。なので思い切ってラブコールを(笑)。

――決死の思いでしたか?

鈴木 尾崎さんとのやり取りに関しては、1文字も間違えてほしくなかったんですよね。私の思いだ・け・で!送ってほしかったんですよ。つまり、「鈴木がこう言っています」ではなく、「ここからは鈴木の文です」というメールを送ってもらいました。そんなことをしたのは初めて。でも、そういうやり取りをさせてもらったので、尾崎さんの思いも受け取ることができましたね。

――もはや動画を送ったほうが早かったくらいな。

鈴木 「(手を振りながら)尾崎さん、こんにちはー」って? ヤバいのが来たって思われる(笑)。

――(笑)。でも、そういったメールを送ったら情熱は伝わりますね。

鈴木 尾崎さんが引いていたかはわからないですけど、マネージャーさんはすごく喜んでくださっていて。良かったです。

――それだけの想いが込められた「夏のばね」ですが、待望の尾崎さん提供楽曲はどのような気持ちで歌われましたか?

鈴木 本当に全身全霊を込めました。実はレコーディング前日、尾崎さんのソロプロジェクトであるwarbearのライブに行ったんですけど、ライブ中にGalileo Galilei再始動を発表されて。

――ああ、あの日の。ニュースを見ました。

鈴木 「え?こんなことある?」と驚きました。Galileo Galileiを聴いて育った私が、ずっと臆病で言えなかったけどようやく曲を作ってくださいと言えて、そのご縁で尾崎さんのライブを見ているときにGalileo Galilei再始動を知るなんて。しかも次の日がレコーディングで。「……全部を込めなきゃいけない」という気持ちになりました。それに、尾崎さんに曲をお願いするとき、「尾崎さんの曲で次の1歩を踏み出せたら、もう絶対どんなことがあっても大丈夫だと思う」ということをお伝えしていたんです。なのでその決意も乗せたくて。今までで一番、「うーん、これじゃない」「いや、こうじゃない」と言いながらのレコーディングでした。ディレクターさんがハラハラするような態度をずっと取っていたと思います(笑)。

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日常の出来事に重ね合わせてもらえるように歌いました



――曲順については?

鈴木 尾崎さんの曲は絶対最後にしようと思っていて。あと、北川さんと真綾さんの曲が1曲目ということは決まっていました。それ以外は既存曲もあるのでバランスを見ながら、というところでしたね。

――他の楽曲を手がけた方々については、どのような思いが込められていますか?

鈴木 いよわさんは私が好きなボカロPの方で、滝澤さんは『アイドルマスター シンデレラガールズ』の作家さんを呼び込みたいという気持ちが自分の中にあったからですね。なので、こういうアルバムにするために、というよりはずっとやりたかった人とやりたかったことをしているという感覚です。「Shout!!!」の江口(亮)さんは曲を共作したことがあって。

――「リナリア」ですね。

鈴木 そのとき、またご一緒したいという話になったんですけど、江口さんだったらバリバリイケイケ曲にしたいとずっと言っていたんです。だから「念願の」という感じでお願いしました。宮野弦士さんの「だってMy Life もっとMy Choice」はかなり最後のほうの発注で、アルバムが出来上がっていくなかの話し合いで、なぜか北川さんがたまたまいたときにポップでキュートな曲が欲しいという話を出されたんですよ。で、「たしかに」ということになり、ディレクターさんのチョイスで宮野さんにお願いしました。

――思い入れのある方々にお願いしたことで、どの曲からも「鈴木みのり」の存在を感じるアルバムになっていますね。例えば、1曲目の「My Own Story」と2曲目の「だってMy Life もっとMy Choice」では、決意と共に自分で道を歩き始める「鈴木みのり」を感じさせますし。

鈴木 それは嬉しいですね。ディレクターさんと二人三脚でやりつつも、意見が通りすぎるとたまに「大丈夫かな」と不安になることもあったんですよ。まるでセルフプロデュースしているような気持ちになるので。ただ、1曲に対して1時間以上喋っていられるような曲が並ぶなんてなかなかできることではないので。

――それだけ思い入れがある曲ばかりができた、自分の意思を込められた、ということですね。

鈴木 そこはすごくありがたかったですね。

――また、アルバム全体として普遍的なポップスの要素が強く、鈴木みのりファンだけではない、多くの人に向けられていると感じました。歌い手としてはどのような意識がありましたか?

鈴木 そうですね……。タイアップ曲以外ではいつも自分を重ね合わせるようにしていますけど、自分だけの曲にしてはいけないともすごく思っています。ただ、このアルバムは今までのどのアルバムよりも「聞き手が必ずいる」ということを意識して歌っていました。2ndアルバムや「サイハテ」以降に感じ始めたことなんですけど、曲を聴いたときに「鈴木みのり」や演じているキャラクターを思い浮かべるのではなく、日常の出来事に重ね合わせてもらえた方が多分、何年も何年も残るんですよね。失恋したことを振り返ったときとか。

――自分のことを知る知らないに限らず、聴いた人の思い出の一部として刻まれるような。

鈴木 自分は声優という職業が好きだし、アニメソングが好きなので、この枠から飛び出したい欲はそんなにないのですが、「好きなアニメだから聴いている」「みのりちゃんだから聴いている」ではなく、「たまたま聴いた曲が鈴木みのりの曲だった」みたいに出会いの幅が広がってほしいと思っていますし、そういう歌を歌いたいと思うようになりました。ただ、聞き手というときに一番想像しやすいのはファンの方ですし、「こういうお便りを送ってきたリスナーさんがいたな」とか思うこともありますね。あとは、身の回りの友達や家族との出来事とかを意識することも。

――鈴木さんが手がけた、2曲の歌詞についても教えていただけますか?

鈴木 はい。「Shout!!!」に関しては、最近では「リップ」もそうだったんですけど、鈴木みのりのイメージではないことを、というコンセプトがありました。なので、歌詞の言葉遣いを悪くしてみようという話になったんですね。あとは、ライブで聴いたら嫌なことを忘れられるような曲にしたかったので、「鬱憤を晴らすように書けたら」と思いながら挑戦していました。「はじめよう」は滝澤さんから、みのりさんに作詞してもらった方が、と言っていただきました。私は本当に自信がないタイプでしたが、『アイドルマスター シンデレラガールズ』の現場を通して自分にすごく自信をいただいたと思っていて。滝澤さんは特にその初期の楽曲に関わられていたのでご一緒したかったんです。そんな滝澤さんの曲で歌詞を書けるなら今の思いを全部書いてみよう、と思っていました。

――『アイドルマスター シンデレラガールズ』の現場のどういったところが自信につながったんですか?

鈴木 滝澤さんを含め、『アイマス』の音楽チームの皆さんって私の歌声を隅々まで聴いて、分析して、褒めてくださるんですね。藤原肇としてソロ曲を発表したときも、自分が想像していなかったくらいのお褒めの言葉をいろいろな方面からいただきました。そこでやっと「自分の歌に自信を持ってもいいんだ」と思えたんですね。ワルキューレの経験も自信につながってはいるのですが、それとはちょっと違う感覚があって……。その、始まりの場所から一歩離れた、最初の作品が『アイマス』でした。なので、自分にとってとても大切な居場所なんです。

――そういった感謝の想いも込めつつ歌詞を。

鈴木 作詞をする身として、技量はないけど精一杯の力を使いました。それから、自分が伝えたいことって、二十歳のときに初めて作詞した「20才の約束」からそんなに変わってないということに気づいて。じゃあ、その「約束」を思っているだけではなく「はじめよう」、という気持ちで書きました。あとは、藤原肇(ふじわらはじめ)ともちょっとかけてます。

――あぁ!

鈴木 そうなんです(笑)。という感じで、自分を鼓舞するいい曲になりましたね。自分でも気合いを入れるときに聴いています。

――技量はないけど精いっぱい、と仰いましたが、韻を踏んだり単語の繰り返しを使ったり、技巧を込められた歌詞であり、聴く側の心地良さも考えられているように思いました。

鈴木 ありがとうございます。でも私は、1A、1Bと前から順に書いていく人間で、仮歌用に1番まで書いたときはいつも、「2番でもいい歌詞が書けるかどうかわからないな」と思っています。それに、2番は似た感じにしたいな、と思っていても、そこを合わせすぎて意味がなくなるのも嫌なので。その意味ではいろいろと考えながら書いていたとは思います。

――他の新曲についてもぜひ。いよわさんの「わだちの花」はボカロPらしい、不思議な雰囲気を醸し出しています。

鈴木 そうですね。いよわ節全開といいますか、私はそのいよわ節が大好きなのでオファーさせていただきました。私はダークな曲が好きなので、1曲でいいからアルバムでもダーク曲枠を作りたいと言っていたんです。

――いよわさんにはどのような曲をお願いされたんですか?

鈴木 いよわさんの曲には物語や伏線がいつもあって、YouTubeのコメント欄が考察し合いになるんですよ。そこも好きなんですよね。なのでいよわさんには、物事を裏側から見たような曲をお願いしました。私自身、物語を見るのが好きですし、歌手活動5周年ということもあったので、ステージの裏側にあった努力や涙を隠して人前に出るけれども、すべてを克服したわけではなく、現在進行形で辛いことをまだ味わっているとしたら……という部分を書いてほしいとお願いしました。私がそうというわけではないのですが、みんな、後ろ向きなことって言わないじゃないですか? 辛い経験もあったけどいいことがあったから吹っ切れました、で終わりではなく、実際には裏側で続いていると思うんですね。ということを思ってもいたので。

――歌手活動5周年のアルバムとは思えない重さですね。

鈴木 そう、私のネガを詰め込んだ曲になってしまいました。

――自身は違うと仰いましたが、聴いた方は「みのりちゃんはステージ上で楽しく明るく歌っているように見えるけど……」と思われる可能性がありますね。

鈴木 そうそうそう。だから、良くないなとは思うんですけど(笑)。でも、いよわさんもやっぱりダークの民だったんですよ。リモートの打ち合わせで私の想いを伝えたら、「ああ、なるほど。なんか楽しくなってきました!」って言いながら急にペンが進まれたんです。「なんか見えてきました」という感じで。「あ、ダークの民」と思いました(笑)。

――北川さんが手がけたもう1曲の「もういちどメロディ」は、作詞に藤村鼓乃美さんが共作で参加されています。これも坂本さんと同じく北川さんのセレクトでしたか?

鈴木 そうですね。ただ、北川さんのセレクトではありつつ、藤村さんはコーラス参加でよくお世話になっていますし、北川さん楽曲で仮歌を歌われることが非常に多くて。acane_madderさんなども含めた北川ファミリーの一員、みたいな感じですね。

――では、藤村さんもお世話になった人枠の一人でもあるんですね。

鈴木 ライブにも毎回いらっしゃってくれますし。なので、ようやくご一緒できて嬉しかったですね。しかもめっちゃ素敵な歌詞でした。

歌手活動5年を経る中で自信を得て、やっとスタート地点



――鈴木さんのアルバムは毎回ジャケットも素晴らしいのですが、『fruitful spring』もとても雰囲気が良く。今回は、鈴木さんが小さくなって撮影された……?

鈴木 じゃないんですよ。綿毛をおっきくしたんです(笑)。

――(笑)。これはかなり大きな小道具ですが作られたんですよね?

鈴木 はい。フライングドッグに置いてあるはずです。

――ジャケットのコンセプトについて教えていただけますか?

鈴木 ジャケットのアートディレクターはデビュー時からお世話になっている方なんですけど、『fruitful spring』というアルバムタイトルの意味を伝えたら、これから実っていくということならば、種をいろいろなところに撒くというコンセプトを込めて、綿毛を持つアイディアを出してくださいました。なのでブックレットの中には綿毛が飛んでいく写真もあります。で、本当の本当にたまたまなんですけどこうすると(綿毛部分を手で隠して)……、どうしてもネギにしか見えない。

――ホントだ!(笑)。

鈴木 ファンの方にも「みのりちゃんが言わなかったら気づかなかったのに」と言われましたが、私も誰かに言われて気づいて、「あなたが言わなかったら」みたいな会話があったくらいでした。だから、本当にたまたまなんですけど、Twitterのアイコンとかで綿毛が入っていないとネギを持っているようにしか見えないんですね。意図せず、お茶目さを忘れていないところが出てしまいました(笑)。

――意図せず(笑)。ちなみに、軽やかに持たれていますがこの綿毛は軽いんですか?

鈴木 重いです。こう、「うーん、よいしょ」みたいな感じで頑張って持っていました。

――では、見せない裏の顔がここにもある、と。

鈴木 ありますね。これも「わだちの花」です(笑)。

――(笑)。初回限定盤には、MVのほかにドキュメンタリー映像が収録されたBDも同梱されます。その内容についても教えてもらえますか?

鈴木 色々と発表があった昨年10月に開催されたイベント『みのりんご収穫祭2022〜乙女ちっくに大人ちっく〜』の頃から、ジャケット撮影やレコーディングといった制作の様子までを撮っていただいています。映像には、デビューの頃からお世話になっているカメラマンさんとか、メイクさんや衣装さんやバンドメンバーさんといったスタッフさんが映っていて、私は映像チェックのときに見て……、皆さんのお話に泣きました。「こんな風に思ってくれていたんですね」ということがわかって。

――スタッフ陣からのコメントが入っているんですね。

鈴木 そうですね。私の想いも入っていますけど、どちらかというと皆さんのお言葉のほうが多く感じましたね。特にバンドメンバーさんなどの音楽家はロマンチストの方が多いので選ぶ言葉がもう、もう、良すぎて……。だからファンの人にとっては新鮮だと思います。作っている人たちの顔が見えるので。

――ドキュメンタリー映像を入れる、というのはディレクターさんからのアイディアですか?

鈴木 これまでバンジージャンプをしたり焼肉を焼いたりしてきて、次は何をしたらいいかと聞かれたんですけど、「いや、私もわからないです」となって。ただ、「夏のばね」を映像の中で使いたいというのはずっと話していたんですよね。「My Own Story」はMVになりましたけど、同じくらい大切な曲ではあるので。だから、なんとかして「夏のばね」を生かせる方法を、と考えてくださいました。

――たしかに、「夏のばね」がバックに流れる中であまりおちゃらけたことはできないですよね。

鈴木 そうですね。尾崎さんに見せられるかというと、ネギはちょっと恥ずかしいですね(笑)。

――3月には東名阪を回る3rdライブツアーが控えています。どのようなライブになりそうな手応えがありますか?

鈴木 やっぱり歌手活動5周年の集大成と言えるライブになるとは思います。あとは、毎回のツアーのたびに言いますが、楽曲が本当に様々でセトリに悩むくらいなので、そこも楽しみにしてほしいですね。スタッフさんたちとは現在進行形で、今までよりもっと皆さんと楽しめるライブにしたいとは話し合っているので、鈴木みのりのライブに来たことがある人も楽しめるし、初めての人はまた来たくなるライブにもなると思います。

――ここまでお話を聞く中で、歌手活動5周年に対する意識が強いように感じました。人によって捉え方が異なる数字だと思いますが、鈴木さんにとって5周年はどのような意味を持っていますか?

鈴木 声優活動も含めて、やっとスタート地点に立てたという感覚があります。自分の意見を持って挑んだり、前に出したりできるようになりましたし。今までは流されるままに、「好きだからやっている」という感覚も強かったですけど、でも今は好きであることは変わらず、職業としての覚悟を持って、「私は歌手なんだ」「声優であって表現者なんだ」という自覚と自信も持てるようになってきたと思います。なのでここからが勝負というか……、うん、本当の道のりのようにはすごく感じています。

――「職業としての覚悟」という言葉が出ましたが、どういった心境が隠れているのか教えてもらってもいいですか?

鈴木 昔、声優としての恩師に「好きがさらに進化したら本物のプロ」みたいなことを言われた記憶があって。でも、そのときは「どういうことだろう?」「好きってだけでやっているんだけどな」と思っていたんです。ただ最近、ようやく自分に自信が持てたことで、「誰に何を言われても私の歌は届く」「これが私の芝居なんだ」と思ってやっていくことがプロなのかな、と思ったんです。勿論、ディレクションをはねのけるのとは違いますが。でも、ふとしたときに、「いや、私なんてまだまだですから」と日和ってしまうのは、届けている人に対してすごく失礼なことではないかと思うようになりました。「覚悟」と言うと重いですけど、「好きだけではないもの」という答えがやっと自分の中で見えてきている、ということを、恩師の言葉をいまさら思い出しながら感じています。

――5年間の活動の中で、届けられている実感を得たからの自信、と言えるかもしれませんね。

鈴木 それこそ、真綾さんやなぎさんや尾崎さんと夢見たものが5年のうちに全部叶ったということは、怖くもありますけど、自信を持たなきゃいけないことだとすごく思いましたね。

●リリース情報

3rdアルバム

『fruitful spring』

1月25日発売

【初回限定盤(CD+BD)】



品番:VTZL-221

価格:¥4,730(税込)

【通常盤(CD)】



品番:VTCL-60568

価格:¥3,300(税込)

<収録曲>

1.My Own Story

作詞:坂本真綾 作曲・編曲:北川勝利

2.だってMy Life もっとMy Choice

作詞:YURINA da GOLD DIGGER 作曲・編曲:宮野弦士

3.BROKEN IDENTITY

作詞:nana hatori 作曲・編曲:Mao Yamamoto

4.わだちの花

作詞・作曲・編曲:いよわ

5.サイハテ

作詞:饗庭純 作曲・編曲:出羽良彰

6.もういちどメロディ

作詞:北川勝利、藤村鼓乃美 作曲・編曲:北川勝利

7.はじめよう

作詞:鈴木みのり 作曲・編曲:滝澤俊輔(TRYTONELABO)

8.Shout!!!

作詞:鈴木みのり 作曲・編曲:江口亮

9.リップ

作詞・作曲・編曲:すりぃ

10.Wherever

作詞・作曲:MALIYA 編曲:Island State Music

11.夏のばね

作詞・作曲・編曲:尾崎雄貴(Galileo Galilei/BBHF)

<BD>

・Music Video

「サイハテ」、「BROKEN IDENTITY」、「My Own Story」

・”fruitful spring” documentary -鈴木みのり密着ドキュメント-

シングル

TVアニメ『シュガーアップル・フェアリーテイル』OPテーマ

「ミュージカル」

1月25日発売

【初回限定盤(2CD)】



品番:VTZL-222

価格:¥2,750(税込)

【通常盤(CD)】



品番:VTCL-35351

価格:¥1,320(税込)

<収録曲>

1. ミュージカル

作詞:岩里祐穂 作曲:金山秀士 編曲:椿山日南子

2. 季節のカルテット

作詞:竹内サティフォ 作曲・編曲:ONIGAWARA

3. ミュージカル(Instrumental)

4. 季節のカルテット(Instrumental)

5. ミュージカル(TV EDIT)

<特典CD>

2022.10.2「みのりんご収穫祭2022〜乙女ちっくに大人ちっく〜」LIVE

01. Wherever

作詞:MALIYA 作曲:MALIYA

02. 金魚花火

作詞:愛 作曲:愛

03. 真夜中のダンス

作詞:尾崎雄貴 作曲:尾崎雄貴

04. Remedy

作詞:坂本真綾 作曲:solaya

05. わたしはわたしになりたい

作詞:鈴木みのり 作曲:sasakure.UK

Keyboard, Chorus:末永華子

●ライブ情報

「鈴木みのり3rd LIVE TOUR 2023 〜fruitful spring〜」

3月10日(金) Zepp DiverCity(東京)

18:00開場/19:00開演

3月18日(土) BIGCAT(大阪)

16:30開場/17:00開演

3月19日(日) ダイアモンドホール(愛知)

16:30開場/17:00開演

問:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999(東京)

チケット 指定席:8,800円(税込)

バンドメンバー

Guitar & Band Master : 北川勝利(ROUND TABLE)

Drums : 山本真央樹

Bass : 千ヶ崎学

Guitar : 奥田健介(NONA REEVES)

Keyboards : 末永華子

Manipulation:須藤豪

主催:e-stone music / ビクターミュージックアーツ株式会社

関連リンク



鈴木みのりオフィシャルサイト

http://e-stonemusic.com/minoringo/

鈴木みのり 歌手活動5周年特設サイト

https://www.jvcmusic.co.jp/flyingdog/suzukiminori/5th/