楽天は早川隆久が中心の投手陣を構築すべき。ドラフト注目の富士大・金村尚真は1年目から2ケタ勝利も可能だ
チーム事情から見るドラフト戦略2022〜楽天編
クライマックス・シリーズ進出をかけて、熾烈な3位争いが続くパ・リーグ。楽天もその一角をしぶとくキープして、残り数試合となった。今季の成績を紐解いてみると、「ここがこうなっていれば......」と、思わず声が漏れてしまうのが、先発ローテーション投手の勝敗だ。
則本昂大の10勝8敗をはじめとして、田中将大(9勝11敗)、岸孝之(8勝9敗)......先発を担った"大看板"たちが、揃って「勝ったり負けたり」の成績になっている。
※成績は9月27日現在
このなかでひとりでも白星街道を突っ走ってくれる投手がいたら......間違いなく首位争いに加わっていただろう。
ただ、プロ10年以上のベテランたちだ。"勢い"を求めるのはちょっと厳しくなっている。口の悪い人が「昔の名前で出ています投手陣」などと言っているのを聞いたが、明確に否定できる要素がないのが現状だ。
ヤクルト小川泰弘のような球質今の楽天先発陣で、フレッシュな勢いを期待できそうなのは2年目左腕の早川隆久だが、昨年の大奮闘の反動だろうか、今シーズンはストレートの勢いに精彩を欠き、一発を浴びる場面も目立ち、ここまで5勝9敗。
昨年のドラフトでは腹をくくったように、1位・吉野創士(昌平高/外野手)、2位・安田悠馬(愛知大/捕手)、3位・前田銀治(三島南/外野手)と、スラッガー候補を立て続けに指名。その前年が早川を筆頭に、大学・社会人の即戦力投手を4人続けて指名したことを考えても、今年は"投手"だろう。
宋家豪、西口直人、安楽智大、宮森智志の中継ぎ陣に、左腕・鈴木翔天がクセ球の剛球を、ルーキー西垣雅矢がフォークを武器に加わりそうで、さらにその層は厚くなりそうだ。やはり、早川とともにこの先の先発陣を背負って立てる「逸材」がほしい。
ファームには、今季イースタンで10勝2敗・防御率2.27の2年目・高田孝一(法政大)と、5勝1敗でも防御率1.27と抜群の結果を出したルーキー・松井友飛(金沢学院大)が「来季のホープ」として控える。
速150キロのストレートを誇る富士大のエース・金村尚真
ともに右の本格派タイプだけに、ちょっと違うタイプがほしい......。地元東北の富士大に金村尚真(178キロ・82キロ/右投右打)という面白い逸材がいる。一見、まとまった好投手タイプなので、プロ向きじゃないと評する向きもあるようだが、すぐそばで、彼のボールを見れば驚くはずだ。
創価大時代の小川泰弘(現・ヤクルト)の球を実際にブルペンで受けたことがあるのだが、171センチと上背がないのにボールに角度があって驚いた。金村も同じように角度があり、ホームベースの手前あたりからうなってくるような生きたボールは、まさに小川と同じ球質である。
変化球も含め両サイドを使えて、ストライク先行で投げ進める制球力に、打者の狙いを探りながら用心深く投げられる野球偏差値の高さ。シーズンのスタートできっかけをつかめば、いきなり"2ケタ"でもおかしくない実力者と見ている。
技巧派左腕、好守の内野手も補強したい伸び盛りという意味では、小谷野楽夕(JR東日本/184センチ・80キロ/右投右打)はどうか。躍動感抜群の投球フォームなのに、球道が荒れない。140キロ後半のストレートにスライダー、スプリットの高速タテ変化。イキのいい投げっぷりで、投手陣に"活気"を注入できる人材だ。
小柄な体で頑張る14年目の左腕・辛島航が台頭したのは、速球も変化球も低めに集める制球力があるからだ。今の楽天投手陣には、このタイプのサウスポーがほしい。
大学生から増居翔太(慶応義塾大/171センチ・68キロ/左投左打)、社会人から阿部博光(スバル/175センチ・80キロ/左投左打)を挙げたい。
増居は両サイドの精緻な制球力があり、左打者の内角を攻められる技術も貴重。社会人4年目の阿部は、東洋大学時代は上茶谷大河(横浜DeNA)や甲斐野央(ソフトバンク)らと同期だったため出番がなく、肩・ヒジが消耗していないのがいい。今季はスライダー、カーブ、チェンジアップの制球力を武器に、エースとしてコンスタントに好投を重ねている。
野手は......となると、過去3年間、小深田大翔以外では高校生を2人(黒川史陽、入江大樹)しか獲れていない内野手に「守れる選手」が何人かほしい。今年は、大学生にその候補がいる。
走攻守のスピードと瞬発力抜群の友杉篤輝(天理大/遊撃手/172センチ・70キロ/右投右打)、ディフェンス能力と走塁センスが天才的な田中幹也(亜細亜大/遊撃手/166センチ・65キロ/右投右打)、見るたびにフィールディングがうまくなる印象の朝日晴人(慶応義塾大/遊撃手/172センチ・73キロ/右投左打)が、その筆頭だ。
左腕の増居が投げて、そのバックを朝日が守る......彦根東→慶応コンビが楽天のセンターラインの一角を担う。そんな妄想が、にわかに脳裏に湧いてきたりしている。