今年の神戸新聞杯は春のクラシック好走馬が不在。末脚秘める2頭の伏兵が「下剋上」を起こす
牡馬三冠最終戦となるGI菊花賞(10月23日/阪神・芝3000m)のトライアル、GII神戸新聞杯(中京・芝2200m)が9月25日に行なわれる。
春のクラシック好走馬がここから始動することが多く、比較的堅い一戦と言える。実際、過去10年の結果を振り返ってみても、1番人気は7勝、2着1回とかなり安定した成績を残している。
ところが、である。今年は春のクラシック2戦、GI皐月賞(4月17日/中山・芝2000m)、GI日本ダービー(5月29日/東京・芝2400m)の勝ち馬も、連対馬も、さらには馬券圏内(3着以内)に入った馬も不在。最もいい成績を収めているのが、GII青葉賞(4月30日/東京・芝2400m)を制してダービーで5着となったプラダリア(牡3歳)といった具合だ。
過去と比べると明らかに手薄なメンバー構成と言え、同じ1番人気でも今年は例年ほどの信頼は置けそうにない。そうした状況に至った一因について、日刊スポーツの太田尚樹記者はこう語る。
「今年は、ダービーの勝ち馬ドウデュースがGI凱旋門賞(10月2日/フランス・芝2400m)へ、さらにダービー2着馬のイクイノックスと、皐月賞馬のジオグリフがGI天皇賞・秋(10月30日/東京・芝2000m)へ向かうことになりました。そのため、今年の菊花賞戦線は混とんとしていて、それがトライアル戦にも及んでいるのでしょう」
そして、太田記者はこう続ける。
「有力馬が別路線に向かうことで、今年は菊花賞を目指す馬が例年以上に多くなっています。その結果、(出走への)ボーダーラインが高くなり、『3勝クラスでも抽選対象になるのではないか』と言われています」
そうなると、菊花賞への出走権獲得を巡って、トライアル戦はこれまで以上に熾烈な争いになることが予想される。
「事実、先週のGIIセントライト記念(9月19日/中山・芝2200m)では"下剋上"が起きました。1勝クラスを勝ったばかりのガイアフォースがダービー3着馬のアスクビクターモアを退けて勝利。2勝馬のローシャムパークが3着に食い込んで優先出走権を手にしました。この結果を踏まえ、神戸新聞杯でも春の実績だけにとらわれず、成長度と出来を重視すべきだと思います」(太田記者)
神戸新聞杯での大駆けが期待されるジュンブロッサム
そこで、太田記者は春から素質の片りんを見せながら、クラシックには縁のなかった馬を穴馬候補に挙げる。
「ジュンブロッサム(牡3歳)です。春はなかなか勝ちきれず、前走でようやく1勝クラスを脱したばかりです。それでも、敗れてきたレースの中身は濃く、3走前のGIIIアーリントンC(4月16日/阪神・芝1600m)では、のちにGI馬となる勝ち馬ダノンスコーピオンをも上回るメンバー最速の上がりをマークして、4着に追い上げました」
ジュンブロッサムはその他、昨秋の未勝利戦で前述のセントライト記念3着馬ローシャムパークを完封。実力馬が集ったGIII共同通信杯(2月13日/東京・芝1800m)でも4着と善戦している。
「前走の1勝クラス・出雲崎特別(7月31日/新潟・芝1800m)でも、21年ぶりのレコードタイム更新で完勝。課題の発馬を決めて、流れに乗れたことも大きな収穫でした。
2200mは未知の距離となりますが、ローシャムパークを下した未勝利戦は2000m戦でしたし、管理する友道康夫厩舎の安田晋司調教助手も『距離は問題ないと思う。前回ぐらいのポジションにつけられれば』と前向き。ふだんからゆったりと急かさない調教を積んで、長距離戦に強い友道厩舎ですから、距離延長はむしろ望むところではないでしょうか」
太田記者はもう1頭、気になる馬がいるという。
「ボルドグフーシュ(牡3歳)です。4戦連続で上がり最速をマークした豪脚が魅力。前走の2勝クラス・一宮特別(6月5日/中京・芝2200m)でも、古馬相手に2馬身差をつける完勝劇を披露しました。
ここで優先出走権を獲れなければ、本番では抽選対象となる可能性もあり、この中間は追い切り5本を消化。勝負の仕上げを施されてきました。それでいて、体重は増えており、現在の充実ぶりがうかがえます。
管理する宮本博調教師も、『あれだけいい馬に乗ってきた(今回の鞍上)吉田隼人騎手が"この馬はいい"と褒めてくれたし、十分に仕上がっている』と意気込んでいました。荒れてきた今の馬場も、差し脚を生かすうえではプラスに働きそう。期待が膨らみます」
激戦の菊花賞戦線。先週のセントライト記念に続いて、新興勢力の台頭はあるのか。それが、ここに名前が挙がった2頭であっても不思議ではない。