リタリン(メチルフェニデート)というADHD治療薬を服用した子どもとうつ病の関連を調べた研究から、「リタリンを服用している子どもはうつ病になるリスクが高い」という結果が明らかになりました。子どもたちがリタリンの服用をやめると、うつ病になるリスクは健康な子どもたちとそれほど変わりないレベルまで低下したとのことです。

Association between Attention Deficit Hyperactivity Disorder Medication and Depression: A 10-year Follow-up Self-controlled Case Study - PMC

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9048009/

Risk of Depression Spikes When Kids Take Ritalin - Mad In America

https://www.madinamerica.com/2022/05/risk-depression-ritalin/

Study Examines Relationship Between Methylphenidate and Risk of Depression

https://www.psychiatrictimes.com/view/study-examines-relationship-between-methylphenidate-and-risk-of-depression

リタリンは日本においてナルコレプシーの治療に用いられる薬剤であり、アメリカや韓国などではADHDの治療薬として子どもにも広く処方されています。韓国・国立精神保健センターのYunhye Oh氏とYoo-Sook Joung氏、そしてソウル大学のJinseob Kim氏らの研究チームは、韓国の全医療記録を基にして、子どもに対するリタリンの処方とうつ病リスクの関係について分析しました。

まず、研究チームは2007年7月1日〜2007年12月31日までの間にADHDと診断された6歳〜19歳のこども4万3259人についてのデータを集め、その中から「2007年7月1日〜2016年12月31日の期間中に少なくとも1回はリタリンを処方された」「過去のうつ病診断歴がない」「うつ病との関連が指摘されているアトモキセチン(ストラテラ)の処方を受けていない」「うつ病の原因となる特定のイベントがない」といった条件で抽出した2330人のデータを分析。対照群となる健康な子どもと比較して、どれほどうつ病になりやすかったのかを調べました。



分析の結果、ADHDと診断された子どもたちはそもそもリタリンの処方を受ける前の90日間において、健康な子どもよりうつ病になるリスクが約12倍も高いことが判明しました。これは、ADHDの診断につながった学校や家庭での問題行動に起因する可能性があるとのこと。

もし、ADHDの子どもがうつ病になるのが病状のせいだけならば、リタリンを服用することでうつ病のリスクが下がるはずでした。ところが、ADHDの子どもたちがリタリンの服用を始めると、うつ病リスクは下がるどころか健康な子どもの18倍に増加したことがわかりました。

この結果だけでは、リタリンの服用中も依然としてうつ病の根本原因が継続しており、それによってうつ病のリスクが高まっている可能性も残ります。ところが、子どもたちがリタリンの服用をやめるとうつ病リスクは低下し、健康な子どもとほとんど同レベルになることが判明。つまり、リタリンの服用がうつ病リスクの増加と関連している可能性がかなり高いことが示されたというわけです。



研究チームは、「私たちの研究は、ADHDの若者に対するメチルフェニデート薬の使用が、うつ病の発生と時間的に関連していることを示唆しています。ADHD治療薬の世界的な使用増加に伴い、メチルフェニデートのメリットは子どもおよび青年におけるうつ病の潜在的リスクと比較し、慎重に評価されるべきだと考えられます」と述べました。