※この記事は2013年04月08日にBLOGOSで公開されたものです

自民党の野田聖子総務会長は2013年4月3日、東京・有楽町の外国特派員協会で会見し、人口減少時代に対応するための「女性の利活用」などを訴えた。野田氏は今後の日本社会に必要なのは「多様性」だとしたうえで、女性議員としての自らの体験も交えながら女性の社会進出の重要性に言及。企業の新入社員の4割を女性にする法律の制定や、女性に議席数を割り振るクオータ制の導入といったアイデアにも触れながら、「日本の社会風土を考えると、国として具体的な数値目標を定めていくことが必要だ」と持論を述べた。【取材／構成：渡邉一樹、亀松太郎】

「日本は先進国で一番、女性の利活用ができていない国」

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野田氏は明治維新の時点で約3300万人だった日本の人口が、それ以後急増して2000年のピークには約1億2000万人になったことや、さらに今後100年で明治時代の水準に逆戻りするという試算について言及し、「こんな大規模で急激な人口増減は世界でも例がない。しかも明治維新の時には1割もなかった高齢化率が、100年先には約5割になる」と危機意識を表した。その上で「斜陽に近づいている国を立て直すため、今後の成長戦略はダイバーシティ（多様性）、つまり女性の利活用にかけるしかない」と力を込めた。

日本の現状については「先進国で一番、女性の利活用ができていない国だ」とバッサリ。「日本はもちろん欧米とは違う伝統があるわけだが、独特の慣習のせいで女性が伸びないとすれば、ドラスティックに強制力を持って変えていかなければならない」と述べた。また、ゴールドマンサックスが2010年10月に出した日本ポートフォリオ戦略『ウーマノミクス3.0：待ったなし』にも言及し、「女性の利活用で日本のGDPは約15％上がるという試算もある。逆に言えば、出遅れている女性の利活用をしっかりと果たすことができれば、日本は今一度Ｖ字回復、本当に持続可能な回復を果たせる」と期待を込めた。

女性利活用の具体策については「法律で女性採用を促進すべきだ」と持論を展開、一例として「企業の新入社員の4割を女性にする法律の整備」というアイデアも提示した。野田氏は「女性をきちっと雇用している会社を良く見てみると、生命保険会社や化粧品会社など女性を必要としている企業のほか、社長が外資出身だったり、オーナー企業で比較的トップの差配がやりやすい会社などが多い。ところが多くの日本の大企業では経営者もサラリーマン出身のため社内調整が必要だ。そこで何かの数値目標があれば『社内に文句はあるだろうが、国も言っているから女性を雇おうよ』という方向で説得ができる」と制度化のメリットを説明。「命令や税制優遇といったインセンティブを付けるなど、方法は様々あるだろうが、企業を動かすには国からの後押しも必要だ」という考えを示した。

日本でも「クオータ制」の導入を検討したい

一方、野田氏自身が所属する日本政界でも、女性議員の数は増加傾向にあるわけではない。むしろ昨年末の衆院選では全体の当選者に占める女性の割合は8％と、2009年衆院選の11%から下落している。野田氏は議員の女性比率を上げるためにも、法制度の整備が必要だという考えだ。例えば韓国で朴槿恵大統領が誕生したことや、台湾総統選に女性の蔡英文候補が出ることができた背景には、一定数の女性議員枠を設ける「クオータ制」があると指摘。「各国はそうやって、政治は男性がやるものという認識を変えていく努力をしている。国内でもいずれクオータ制の導入を検討したい」と話した。

また、記者から「自民党の女性議員はなぜ増えないのか」と問われると、「自民党は個人商店の集まりで、誰が出ても選挙に勝てるような組織を持っている党ではない。私も野田聖子後援会がなければ選挙には勝てないし、その後援会を維持するための経費は各自で用意しなければならない。ファイナンス面でも条件が非常に厳しいことがある」と説明した。

さらに、これまでは候補者となる女性自身の意識面でも、立候補へのハードルは決して低くなかったと指摘。自身も衆院議員になった93年当時、自民党に先輩女性衆院議員が一人も所属していなかったため不安を抱いた経験や、支持者からも「与党の衆院議員は男がやるものだ」「どうしてもやりたいんだったら女を捨てろ。結婚もするな、子供も産むな」などと言われて、戸惑った経験を述懐した。

だが、野田氏自身はその後、事実婚やその解消、結婚、出産などを経験しながら7期連続当選を果たした。いまでは、女性は女性として議員を務めるのが当たり前となっている。自民党の女性衆院議員も増加し、現時点では高市早苗政調会長も含め、党3役のうち2人が女性だ。野田氏は「総務会長という役職は女性にはできないと考えられていたと思う。政党に限らず、企業でも、どんな組織でもリーダーの決断があれば女性の活用は進む。これが当たり前になり、常態化させて、次の女性たちはもっと容易にポストを得られる時代を迎えたい」と期待を込めた。