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絶えぬスーパースポーツの噂

マツダのスーパースポーツの噂が、出ては消え、消えては出ての繰り返しだ。

【画像】RX-9(?)のヒントになるか マツダRXビジョン/GT3の詳細【ディテール】 全76枚

直近では、2021年9月に自動車関連ウェブサイト等が、特許がらみでエビデンスがあるとして、マツダ・スーパースポーツの可能性を肯定的に考える情報を流した。


マツダRXビジョン    マツダ

もちろん、この報道に関する件も含めて、マツダ本社側がスーパースポーツ量産に関して明言したことはこれまでに一度もない。

とはいえ、あのようなお披露目をおこなったことでの販売店やユーザーに対する「説明責任」はあるのではないだろうか。

仮に、量産開発を中止していたとしても、または量産の可能性について議論しているにしても、どこかのタイミングで対外的な説明をするべきだと思う。

本稿では、マツダ・スーパースポーツに関するこれまでの経緯と、マツダの現状、そしてマツダが示している事業計画を紹介しながら、マツダ・スーパースポーツ実現の可能性について紹介したい。

まずは、登場シーンからだ。

2015年の東京モーターショー、最大の見せ場となったのがマツダのブースだった。

東京ビックサイト西館1階の正面から入ってすぐのところに、モーターショー開催期間中を通して大きなひとだかりができた。

低めに設定されたステージの中央には、ソウルレッドの2ドアスポーツカーの姿があった。

スカイアクティブRの登場

展示車の正式名称は、ロータリースポーツコンセプト「マツダRXビジョン」だ。

枕詞は「マツダブランドの魂を宿す、いつかは実現したい夢」である。

ボディ寸法は、全長4389mm×全幅1925mm×全高1160mm、ホイールベースは2700mm。

タイヤサイズはフロントが245/40R20、リアが285/35R20、ホイールのリムがフロントが9.5J、リアが11J。

駆動方式はFR(後輪駆動車)であり、注目のエンジンはスカイアクティブRと記載されている。

このスペックからわかるように、マツダRXビジョンは、マツダの真骨頂であるロータリーエンジンをスカイアクティブ技術によって再生。マツダブランドのシンボリックな存在となり得る1台なのだ。

マツダのスポーツカーは、ロータリーエンジンの歴史そのものと言える。

コスモスポーツから始まり、RX-3、RX-7、そしてRX-8とロータリースポーツカーは脈々と量産されてきた。

そうしたマツダの歩みを考えると、マツダRXビジョンが量産される暁には、RX-9を名乗るのではないか、という声がメディアやユーザーから湧き上がってきたのは当然である。

この2015年といえば、量産車ではCX-5を皮切りに、アテンザ/アテンザ・ワゴン(現在のマツダ6)など、マツダ第6世代が次々と市場導入され、どのモデルも販売が好調という時期だった。

量産の可能性を完全否定しなかった

マツダ第6世代には、大きく3つの柱があった。

マツダ独自の内燃機関開発思想である「スカイアクティブ」の採用。芸術品とも感じさせるような繊細で大胆な「魂動デザイン」。そして限られた条件の中で超最適な製造環境を実現する「モノづくり革新」の3つである。

米フォードとの資本提携解消によって、再び独り立ちすることになったマツダとって、マツダ第6世代の商品開発はまさに、背水の陣だった。

幸運にも、第6世代商品群は国内のみならず先進国や新興国でも大成功を収め、その勢いをさらに未来につなげるために、マツダの社内外に強いメッセージを発進する必要があった。

そのメッセージを具現化させたのが、マツダRXビジョンだ。

2015年東京モーターショーでのワールドプレミア直後、小飼雅道社長(当時)は大勢の報道陣による囲み取材を受けた。

その場には筆者(桃田健史)もいたが、記者らからの「量産はいつ頃か?」という質問に対して小飼社長(当時)は「あくまでも夢であり、いつか実現したい」と慎重な表現をした。

そのうえで「今回のショーにおけるお客様の声や、市場動向や社会環境を見極めてから考えていく」とも答えていた。

では、その後、マツダ周辺の市場動向や社会環境は、あれからどう変わったのか?

EV専用アーキテクチャーなら?

2010年代中盤、独メルセデス・ベンツがマーケティング用語として唱えた、CASE(コネクテッド/自動運転/シェアリングなどの新サービス/電動化)が一般名詞化。

マツダも早期のCASE対応が必然となり、次世代事業計画の改良が続いた。


マツダRXビジョンGT3    マツダ

さらに、コロナ禍という有事となる中、2020年5月にゲーム(グランツーリスモスポーツ)に仮想レースマシンのマツダRXビジョンGT3コンセプトが参加した。

ユーザーの間では「つまり、量産化を諦めたということか……」という落胆の声が聞かれた。

直近では、2021年6月に「サステナブル『Zoom-Zoom』宣言2030」に基く商品戦略が公開された。

縦置き直列6気筒を主流とするラージ商品群と、横置き4気筒エンジンが主体のスモール商品群。

加えて、「スカイアクティブEV専用スケーラブルアーキテクチャー」を公表した。

こうしたマツダの商品戦略の中に、ロータリースポーツの姿はない。

ただし、MX-30 EVレンジエクステンダーのように、ロータリーを発電機として使い、EV専用アーキテクチャーで2ドアスポーツカーという選択肢は十分に考えられるのではないだろうか。

ロードスターについてもマツダ幹部は「2030年以降の商品スコープ(計画)に入っている」と発言しており、上級スポーツカー実現の夢はまだまだ消えていないといえる。

マツダのこれからに大いに期待したい。