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「2時間ドラマの世界が目の前で繰り広げられておりUSJより面白い」

弁護士ドットコムニュース編集部では、裁判の傍聴のためによく裁判所を訪れます。そこで、裁判所をネットで調べていると、気になるのが各地の裁判所について書かれているGoogleマップのレビュー(クチコミ)です。

一般的な観光名所とは異なり、裁判所は「お世話になりたくない」「職員の態度が高圧的だった」「ひどい判決」など、どちらかといえばネガティブなレビューが少なくありません。

一方で、「同性婚を認めないのは違憲」という画期的な判決を下した札幌地裁に高評価がつけられたり、奈良地裁には「前で鹿が草を食べているのを見ると、気持ちが安らぎます」、大阪地裁には冒頭の「USJより面白い」など、リアルな声も書き込まれています。

みなさん、裁判所にどんな思いを寄せているのでしょうか。全国の裁判所のGoogleマップのレビューから17カ所を選りすぐって紹介します。

●東京地裁「被告人が大声で泣き出す姿にショック」

Googleマップには、星の数であらわした5段階評価とクチコミが投稿できるようになっています。

【東京地裁】

まずは、弁護士ドットコムニュース編集部の記者が最も足しげく通っている東京地裁。評価は2.9(93件)でした。裁判所の評価は2〜3が多い中、まずまずの評価といえます。

傍聴に訪れた人も多く、クチコミにも「力作」が多いです。

「刑事裁判の傍聴に行ってきました。大迫力です!手錠をかけられ縄で縛られ警察官と共に入室している姿や、大声で泣き出す姿等には非常にショック受けました入口では、飛行機と同様のチェックをされます。朝10時から様々な裁判が傍聴出来るのですが、ドラマや映画の影響か、カップルや親子連れなど、非常に多くの人が来ていて、傍聴出来なかった人が相当数いたので、なるべく早くに行った方がいいです」「刑事裁判の傍聴は、簡易裁判所などは間近でみることができます。手錠、腰縄をつけられた被告人の方を見たときはとてもびっくりしました」

なお、記者もよく利用するのが、裁判所の地下にある書店やコンビニ、休憩所。このクチコミには思わずうなずいてしまいました。ぜひ改善して欲しいです。

「地下1階にすき家、専門書籍の本屋、休憩スペースがある。携帯が繋がらないのが困る」

●同性婚訴訟で画期的判決の札幌地裁に高評価

では、全国の地裁もみてみましょう。最初は札幌高裁と仙台高裁の管内の地裁から。

【札幌地裁】

裁判所としては驚きの4.0(14件)という高評価を得ているのが、札幌地裁です。2021年3月、同性カップルが法律婚できないのは違憲だと訴えている裁判で、「差別的な扱い」だとして憲法違反であるという画期的な判決を出したことが、影響しているのかもしれません。

その判決に対してのクチコミです。

「いいぞ札幌地裁!実のところ自分は結婚制度自体をなくした方がもっといいと思うんだけど...」

【盛岡地裁】

盛岡地裁は、比較的高評価の3.4(10 件)でした。静かな佇まいの裁判所のようです。クチコミをみて、紅葉の季節に訪れたくなりました。

「盛岡は犯罪が少ないのか、地裁の割に、静か」「石割桜が有名ですが、敷地内にはイチョウ、モミ、ギョリュウ、キャラボク、ボケなど多くの木々が生えています。なかでもドウダンツツジの生垣は、秋に真っ赤な壁となり綺麗です」

【仙台地裁】

仙台地裁も、同じく3.4(19件)警備員さんへの高評価が目立ちました。ただでさえ裁判所は緊張しますから、警備員さんが親切だとうれしいですよね。

「警備員さん、凄く親切で感じが良かったです」「警備員さんがとても丁寧で素敵です」

【青森地裁】

青森地裁は2.3(6件)でした。ここには気になる情報が掲載されていました。

「ねぶたの時は良いロケーションです」

●袴田事件の静岡地裁に「権力に負けない正義を貫いて」の声

続いて、東京高裁管内の地裁です。

【千葉地裁】

千葉地裁は3.5(143 件)で、高評価でした。説明が丁寧だというクチコミが多かったです。

「​​入り口の警備員の方や、総合受付の方、売店の方など、皆丁寧で優しいです。初めてでも安心して行けます」

【静岡地裁】

静岡地裁の評価は2.5(10件)でした。徳川家康ゆかりの駿府城跡にある公園が近いようです。

「裁判所に面しているところは駿府公園です。外から見えると厳粛さと陽気です」

いわゆる「袴田事件」の裁判で1968年に死刑判決を下した裁判所でもあります。

「袴田巌の事件を決して忘れさせてはなりません。裁判官の皆さまへ、司法制度というものに縛られずに、裁く側の立場になる道を選んだときの『初心』を忘れずに、どうか権力に負けない正義を貫いて下さい」

●福井地裁の建築に高評価

では、名古屋高裁管内の裁判所はどうでしょうか。

【名古屋地裁】

名古屋地裁はの評価は2.8(32件)でした。高評価とはいえませんが、こんなクチコミが印象的でした。

「最近、阿曽山大噴火という芸人さんの裁判傍聴にハマっており、実際に裁判傍聴は自由とのことで参加しました。民事よりはやはり刑事事件が内容的に興味深いですね」

【福井地裁】

福井地裁は、建築に対する感想が多かったです。評価は3.6(8件)でした。旧庁舎は福井地震(1948年)で倒壊していて、福井市振興のシンボルとして1954年に建築されたという歴史があります。

「とても重厚な建築です。入ったことないですが、前を通るたび、立派だなと思います」

【金沢地裁】

金沢地裁も比較的高評価で、3.4(20件)でした。やはり、裁判所の人たちに親切にされると高評価につながりますね。

「働いてる方たちも優しくとても親切です。すごい緊張してましたけど優しさで少し落ち着きました」

●奈良地裁の前で草を食べる鹿

続いて、大阪高裁管内の裁判所。ユニークなクチコミが目立ちました。

【大阪地裁】

大阪地裁は3.4(63件)の評価を得ています。書かれているクチコミも、思わず読み込んでしまうものが多いです。

「もっと被害者目線でお願いします!と言いたくなる判決が多い気もしますが検察も裁判官も概ねよくやって下さっていると思います」「振り込め詐欺から無銭飲食、ドンキでの万引き、覚醒剤密輸など各種裁判が行われております。手錠と腰縄で繋がれた被告人が見られ、ある意味で2時間ドラマの世界が目の前で繰り広げられておりUSJより面白い」

【京都地裁】

大阪地裁よりもレビュー数が多いのが京都地裁でした。3.5(82件)です。大阪地裁について「USJより面白い」と書いたユーザーさんが、今度はこんなクチコミを寄せていました。

「振り込み詐欺からコンビニ強盗まで様々な裁判が傍聴できます。たまにイベントフラグが立つようで傍聴席の最前列に組員の方々が座っていたりします。パチンコに行くよりはるかに楽しめます」

【奈良地裁】

思わずほっこりしたのが、奈良地裁のクチコミです。評価も3.5(14件)でした。

「職員さんも偉い人以外は、皆さん優しく丁寧に対応して頂けます。前で鹿が草を食べているのを見ると、気持ちが安らぎます」「『あっ!鹿が庭の草を食べている!』 #奈良 では極普通の光景。こちらは、 #裁判所 の庭園。時には、可愛らしいバンビの姿を見かける事も、、、。親子や家族の鹿の群れが、ゆっくりと和やかな雰囲気です」

奈良地裁のサイトによると、所内には鹿の置物もあるほど、「鹿推し」のようです。

●「そろそろ新築を」クチコミで心配される広島地裁

広島高裁、高松高裁、福岡高裁の管内の地裁です。

【広島地裁】

広島地裁の評価は3.5(73件)でした。「親切でした」というクチコミがある一方で、建物の老朽化を心配する声が上がっていました。広島地裁のサイトによると、1964年3月に建築され、その後、1987年に増改築を行って現在の姿になったそうです。

「少額訴訟で利用しました。担当者の方が何度も親切に教えて下さり非常に助かりました。窓口の方、裁判官、書記官、皆さん良い方でした。裁判所というと気が引ける思いでしたが、そんなことはありませんでした。ありがとうございました」「もう新築した方が良い」「そろそろ新築にした方が…」

【松山地裁】

松山地裁は1.0(5件)と、もしかしたら全国の裁判の中で最低レベルの評価でした。理由は2019年に、書記官が裁判所内の女性トイレに盗撮目的のカメラを設置した疑いで逮捕されるという事件が起こってしまったからのようです。

【福岡地裁】

福岡地裁は3.4(34件)でした。クチコミには、リアルな裁判傍聴の様子が書かれています。

「簡易裁判所で傍聴しました。非公開でない傍聴券のいらない裁判は出入り自由に誰でも傍聴できます。出廷する人は案内も何もされないので決められた時間までに法廷に入り、前の人の裁判を見つつ待つ事もできます。自分が見た時はほぼカード未払い案件の物ばかりでした。1件10分もないくらいで次々裁くという感じ。あれが毎日行われてるんだろうなーと思うと…。自分が被告になって赤の他人にあんな場面見られるのだけは避けたいものです」

●選択的夫婦別姓訴訟に対する最高裁判断に批判

最後に、最高裁のレビューもみてみましょう。3.3(127件)で可もなく不可もないようです。ただ、最高裁だけあって、「江戸時代には三河田原藩の上屋敷が建っていた」という歴史解説のクチコミから、立派な建築に着目するクチコミまで、多様な書き込みがありました。

「重厚感のある作りとなっており建造物としてとして美しい」「建物外壁には茨城県産『稲田みかげ』という石材が使われ、雰囲気があります」「最高裁判所の立派な建物を間近に見れて感動しました。ただ、正面の大きな木が少し邪魔かな」

ここでもうなずく記者。最高裁の建物を写真に撮影するとき、木が邪魔でいつも悩みます。

また、2021年6月に最高裁が現在の「夫婦同姓」義務付けを「合憲」と判断したことに対する批判の声もありました。

「なんで結婚するとどちらかが姓を変えなければいけないのか(しかもほとんどは女性が変えるのか)、まったく理解できない」

ふだん、あまり見ることのない裁判所のGoogleマップのレビュー。これをきっかけに、一度、見学や傍聴に訪れて、日本の司法制度に興味を持っていただければと思います。

(記事で紹介したレビューやクチコミは、2021年12月28日現在のものです)