数々の企画とドラマを生んだ『オールスター感謝祭』のMCを初回放送からずっと担当した島崎和歌子

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数々の企画とドラマを生んだ『オールスター感謝祭』のMCを初回放送からずっと担当した島崎和歌子

毎年、春と秋に生放送される人気クイズ番組がこの10月に放送開始30年という節目を迎える。芸能人ランナーの熱い戦いが繰り広げられるミニマラソン、俳優が大事な場面で真ん中に矢を射抜くアーチェリーなどのガチンコ勝負。

生放送だから起こるハプニング......。第1回からMC席に立つ番組の顔・島崎和歌子が1991年の放送開始から本日10月9日(土)放送の最新回までを語り尽くす。

【写真】『オールスター感謝祭』の名物企画

■18歳で大型特番のMCに抜擢

島崎 気がついたら30年たってましたね。これまでの思い出を語るといっても......いろんなことが次々と起こるから、ほとんど忘れちゃってるかも(笑)。

――1991年10月に始まったときは、今より放送時間が短かったんですね。

島崎 21時からの約3時間だったんですけど、当時のテレビは長くて2時間。ですから最初は「長い番組だな」と思いましたね。それが気づいたら今や5時間半。昔はMC席で立ちっぱなしでも大丈夫だったんですけど、最近は足がむくんじゃって(笑)。

――番組開始当時、島崎さんは18歳でした。

島崎 そうなのよ。10代からやってるのよ。その前に『クイズ!当たって25%』っていう、感謝祭と同じ4択クイズ番組でアシスタントをやらせていただいてたので、その流れで。

当時は「視聴者の人もテレビの前から参加できるクイズ番組を作りたいね」なんてスタッフと出演者で理想を語っていましたけど、今ではテレビのリモコンを使って、見ている方が参加できる番組なんて当たり前でしょ。そう思うと30年の長さを感じますね。


1991年秋・第1回放送の初々しい姿がこちら!

――約200人の芸能人を前にして番組を進行するのは重荷だったのでは?

島崎 大きなお仕事をいただいたなとは思ったんですけど「生放送だから楽だな」というのが正直な感想でしたね(笑)。テレビの収録って時間がかかるから、1時間番組でも5時間、6時間とかかることもある。

だけど感謝祭は生放送なので「時間どおりに終われるのでいいな」と(笑)。終わったら打ち上げで、みんなでおいしいご飯を食べられるし(笑)。

――でも、実際に番組を始めると、考え方が変わった?

島崎 それが全然変わらなかった(笑)。感謝祭はお弁当が豪華で、それが楽しみで。「次はどんなお弁当が出るかな?」なんて喜んでました。

■バカバカしい企画の裏には......

――番組では数々の名企画が生まれました。なかでも一番の企画は芸能人が走る、今でも人気のミニマラソン。

島崎 マラソンは皆さん好きですね。もうずっと見てますもんね。箱根駅伝も視聴率は高いし、オリンピックでも注目される。これまでいろんな人が走って、スターランナーたちが誕生しましたね。


芸能人たちがプライドをかけて走る、まさに番組の風物詩 赤坂5丁目!ミニマラソン。森脇健児、猫ひろし、そのまんま東......番組が生み出した有名人ランナーは数知れず。TBSの正面玄関からスタジオへ至る上り坂・通称「心臓破りの坂」はドラマの生まれるポイントだ。2020年秋の放送以降はコロナ対策で別のコースで開催されている

――そのまんま東さん、森脇健児さん、猫ひろしさん......たくさんの芸能人が熱い走りを見せてくれました。

島崎 見ている方はね、熱いレースの記憶がね......。

――?

島崎 実はマラソンのときってMCの休憩タイミングなんですよ。今でもそうなんですけど、そこでお手洗いへ行ったり手洗いやうがいをする。だからスタート直後から中盤ぐらいまでの様子はわからなくて、途中からセットの裏でお化粧を直しながらモニターを見て、状況を確認するという感じで。

最後の心臓破りの坂を駆け上がるところとか、大事なところは見ていると思うのですが、全部を見ることができないんですよ。

――マラソンと並んで、相撲企画も人気でした。

島崎 相撲も皆さん大好きですよね。藤原組長(藤原喜明氏・プロレスラー)とチャック・ウィルソンさんの対決はすごかったですね。ふたりが戦闘モードの目つきでにらみ合って。あの緊張感と迫力は生放送ならではですよね。

彼らの戦いを真剣に見る200人も息をのむ感じで土俵に注目して。まぁ、タレントさんたちはどっちが勝つかを選んで、当たれば賞金がもらえるわけですから、お金がかかれば熱くなりますよね(笑)。

――みんな真剣だから盛り上がる。

島崎 バラエティ番組の企画だからといって絶対ふざけない。手を抜かない。その熱さが人を惹(ひ)きつけるんでしょうね。参加してくださる皆さんの"真剣にやることを見せる"っていう姿は勉強になりました。土俵の上ではものすごく怖かったのに、戦いが終わった後に握手をする姿はとにかくカッコよかった。

初期の頃は、そんな締まった勝負をたくさん見せてもらったんですけど、そこからなんかね、ローションまいちゃったらまた面白くなっちゃった。さらに、相撲じゃなくても面白いんじゃないって感じで進化して(笑)。

――ローションぬるぬる競技ですね。あれはあれでバカバカしくて面白い。

島崎 ふざけた企画ですけど、裏側はすごいんですよ。テストの段階からローションを大量に使うんです。どれだけ流せば、いい感じのぬるぬるになるか。チャレンジャーがいいリアクションをしやすいか。

何度も何度もローションを流してテストをする。そして出演者を入れてリハーサルをする。だから、この企画のためにトン単位でローションを用意するんです。

企画が始まった当初は、関東の店に置いてあるローションだけでは足りなくて、大阪の店まで買いつけに行ってたんですよ。おかしいですよね。ま、ローションって言葉を連発している私もおかしいと思いますけど(笑)。


大量のローションが笑いと感動を呼ぶ(!?)ぬるぬるトレジャーハンター

ぬるぬるの階段の頂上にあるプレート奪う戦い。追加で投入されたローションに足を滑らせ、大開脚しながら落ちる鈴木奈々さんの勇姿(?)に爆笑した人も多いだろう

――バカバカしいと言えば、カツラをかぶっている人を見破る、なんていう企画も。

島崎 くだらないでしょ。あのコーナーはリハーサルがすごくて。カメラさんや照明さんが「その位置だとちょっとヅラが」とか「この角度で光を当てると浮き出た部分が目立つ」とか真剣なトーンで意見を出し合っているんですよ。

ベテランのテレビマンたちが培ってきた技術をカツラうんぬんの企画に注ぎ込んでいる姿は、笑うのをこらえるのが大変。でも、人を楽しませるためには、準備の段階からみんなが真剣に取り組んで、しっかり計算して作り上げないとダメなんだなということを実感させられる現場ですね。

――休憩タイムで用意されていた食事もすごかったそうですね。

島崎 都内の有名なお店が協力してくださって、料理を振る舞ってくれてね。普段はなかなか出てくれないような名店も「感謝祭ならぜひ」と言って協力していただいて。一時期はあの銀座久兵衛さんも出てくれましたからね。

でも、休憩タイムもMCにとってはトイレに行ったり、次の企画の打ち合わせをする時間なんで、放送が終わった後にちょっと余ったものをつまむ感じでしたけど。

――今までの数々の企画で忘れられないものは?

島崎 人と馬、どっちが速いかっていう企画を大井競馬場でやっていたんですけど、生放送中に、馬に乗っていた的場文男さんっていう大ベテランの騎手の方が落馬して。あの場面は今でもハッキリ覚えてます。こんなふざけた企画で、もしケガなさったらって空気になって。でもプロの方は落ち方も上手で、ケガもなかったようで安心しました。


人間8人vs馬が競馬場で大疾走。人馬対決!マイルチャンピオンシップ

1999年、2000年、2019年に行なわれた企画。大井競馬場の1600mを人間と的場文男騎手騎乗の馬が対決。ダートコースに足を取られながらもかろうじて人間が逃げ切るという展開が多かった

■経験を重ねて知る生放送の怖さ

――生放送だから、いろいろハプニングが起こりますよね。

島崎 恥ずかしかったのは、放送が始まっているのに気がつかず、雑談している様子が放送で流れたことですね。私の隣にいたカメラマンさんに「始まってるよ〜」って言われて、MC席の生放送を映すモニターを見たら、モニターをのぞき込んでビックリしている私の姿があって。

――番組のオープニングから4択の機械が故障するハプニングもありました。

島崎 リハーサルでは順調だったのに放送が始まったら4択クイズの機械が急に動かなくなって。人間vs馬の企画を行なう競馬場やミニマラソンのコースと中継をつないで場をしのいで。

あの日はいろんなスタッフがバタバタ動いていましたね。プロデューサーの方々もすごい勢いで走り回っていて。「次は、この企画を始めます」とか「CMに入ります」という指示を聞くために使っているインカム(無線機)からは、みんなが混乱しながらもなんとか放送を成立させようとする様子がひしひしと伝わってきて、すごい放送でしたね。

――そんなハプニングを経験すると、生放送が怖くなるのでは?

島崎 回を重ねるごとに生放送の怖さを覚えたり、くだらない企画に全力で取り組むスタッフの情熱を感じますから、最近は春と秋になると、テレビ画面が真っ暗になる放送事故が起こるとか、私の進行がグダグダでスタッフの方が計算に計算を重ねて作り上げた企画が台無しになるみたいな悪夢を見るのが恒例行事ですね。マネジャーから送られてくるスケジュール表に「感謝祭」の文字があるのを見ると緊張で胃が痛くなります。


生放送中のさまざまなトラブルを話すときでも、豪快に笑いながら振り返っていた島崎さん。そんな肝が据わった彼女だから、5時間半の生放送を仕切れるのだろう

■もし、番組が50年続いたら......

――東日本大震災の後も放送されましたよね。確か震災の1ヵ月後ぐらいに。

島崎 あのときは、中止せず当初の予定どおり放送できたっていうのがありがたかったですね。被害の状況のような情報の発信はもちろん大事ですけど、それだけじゃないものをテレビで見せていくのもやっぱり大事だなと思いました。あのときはテレビの基本というか、楽しんでもらうことの大切さを教わった気がしました。

今のコロナもね、こういう時代なのに番組ができるってことはありがたい。もうすごいことだと思います。ここまでいろんなことを乗り越えてるんだから、この先も番組は続くんじゃないですか?

ただ、私も(MCの)今田(耕司)さんも年を取ってきたから、5時間半はつらいかな。3時間ぐらいでね、なんとかならないですかね。18歳の頃から同じことをやってきたおかげで、年取ったなってことがリアルに実感できちゃうのよ。ひと晩寝ても全然疲れが取れないとか(笑)。

――10月9日は番組開始30年、60回目となる放送ですが、このまま続けば放送から50年、100回目の放送なんてことも。

島崎 50年やったら私は68歳!? その年になっても続いていたら逆に面白そうですね。赤坂5丁目ミニマラソンで74歳の森脇健児さんが心臓破りの坂を上って。

黒柳徹子さんは80歳を超えた今でも自分の番組を持ってらっしゃいますし、バラエティ番組でも活躍されている。だから私もやれないことはないかなと(笑)。番組が50年以上続いて、80歳を超えてもMC席にいたら面白そう。もう長い時間立っていられないから、MC席に座りっぱなしで。

自分たちは座っているくせに参加者に「全員スタンドアップ!」って言って「おまえも立てよ!」って突っ込まれてね。滑舌が悪くなってクイズが読めないから、問題を出しても「何言ってるかも聞こえません」みたいなこと言われてね。そんなことを考えると、目標が広がりますね。

――これからの感謝祭は、目指せ50年!ということで。

島崎 もし続いたらTBSから表彰されるかな? 盾みたいなのもらえるのかな? お金とかはいらないからホメられたい。この年になるとホメられないから、とにかくホメられたい。記念に局内に島崎和歌子像なんて建てられたら究極の笑いですよね(笑)。

●島崎和歌子(しまざき・わかこ)
1973年3月2日生まれ、高知県出身。デビュー3年目の1991年に『オールスター感謝祭』の司会に抜擢される。「全員スタンドアップ!」や「アンサーチェック!」のコールでおなじみの番組の顔

■『オールスター感謝祭 '21秋 30周年超特別版』
30周年となる今回は、豪華俳優陣や東京五輪のメダリストが続々登場。総額500万円の豪華賞品をかけた、芸能人vsメダリストvs生放送を見ている視聴者によるクイズ祭り。さらに30年の放送から厳選した貴重な映像を大放出! 放送は9日(土)18時30分〜

スタイリング/西脇智代 ヘア&メイク/小森真樹(337inc.) 衣装協力/TIRA VENTO(セットアップ) Mignonjour(ピアス)

取材・文/渡辺雅史(リーゼント) 撮影/下城英悟