この記事をまとめると

■売れ行きはイマイチだったが、コンセプトが面白いクルマが多い

■ライバルの多いカテゴリーでは、尖ったクルマはどうしても苦戦する

■クーペはやはり日本ではあまりウケがよくない様子だ

「絶対売れる! 間違いない!」という予想が間違いだったクルマ

1)コンパクトカー:トヨタiQ(2008年)

 iQは欧州などの海外市場を視野に入れて開発されたユニークなコンパクトカーだ。発売時点で搭載したエンジンは直列3気筒1リッターで、これをボンネットの内部に収めて前輪を駆動したが、独自の駆動システムによってボディの前側は短く抑えた。

 そのためにコンパクトな後席を備える4人乗りながら、全長は2985mmと短い。最小回転半径も3.9mで小まわり性能は抜群だった。

 しかし、売れ行きは低迷した。全長は3m以下でも全幅は1680mmだから、狭い裏道は通りにくい。
追突された時の安全確保のために、世界初とされるリヤウインドーカーテンエアバッグなどを装着したから、価格は100Xが140万円であった。同じエンジンを搭載する当時のヴィッツ1.0Fよりも約20万円高い。しかも日本には高機能で割安な軽自動車があり、比較されるとiQは不利であった。

 そのためにiQは2008年に発売され、2009年の後半には、1カ月の登録台数が1000台弱に下がっている。発売後早々に、月販目標の2500台を下まわった。

コンセプトは良いが、実用性がなく販売面では苦戦を強いられた

2)軽自動車:初代ダイハツコペン(2002年)

 初代コペンの注目度は高かった。軽自動車のクーペで、しかも電動開閉式のハードトップを装着する。当時のソアラ(後のレクサスSC)のような装備であった。

 しかもヘッドライトとテールランプが両方ともに丸型で、ボディの前後が同じデザインのように見える。エンジンは660ccターボを搭載して、動力性能にも余裕があった。

 ところが売れ行きは伸び悩み、2003年の届け出台数は、1カ月当たり700〜800台だ。2003年の時点で軽自動車の売れ筋は、既にムーヴ、ワゴンR、ライフといったハイトワゴンになっていた。小型/普通車市場ではクーペの売れ行きは下降しており、軽自動車クーペのコペンも苦戦を強いられた。

3)スポーツクーペ:ホンダCR-Z(2010年)

 もともとホンダは、運転の楽しさと優れた環境性能を両立させるクルマを開発してきた。希薄燃焼方式のCVCCを使った初代シビック、コンパクトスポーツカーの初代CR-Xも、走りと燃費を特徴としていた。この背景には、ボディが軽ければ走行性能や運転感覚が向上して燃料消費量も抑えられるという考え方があった。

 その意味ではCR-Zも、ホンダ車の特徴を受け継ぐクルマであった。全長が4080mmのコンパクトなクーペだが、直列4気筒1.5リッターをベースにしたハイブリッドのIMAを搭載する。しかもCVT(無段変速AT)のほかに、6速MTも選択できた。

 しかし、売れ行きは低迷した。発売の翌年となる2011年には東日本大震災が発生したので、2012年の登録台数を見ると、1か月当たり500〜600台に留まる。2010年に発売された時の販売目標は1か月当たり1000台だから、発売後早々に目標を下まわった。

 2012年の時点で、国内販売の上位車種は、プリウス、アクア、N-BOX、ミライース、フィットといった車種になっている。クーペの売れ行きは下がり、少数のユーザーは高性能なスポーツカーを求めるようになっていた。クーペにハイブリッドを搭載するCR-Zは、すでにクーペのユーザーニーズから離れていた。