この記事をまとめると

■世界で全方位に強みをみせる世界最大の自動車メーカーがトヨタ

■だがトヨタがすべてで他の自動車メーカーを上まわっているわけではない

■規模では勝負にならなくても他に類をみない強みをもつメーカーを紹介する

トヨタを凌駕する十八番を持ったメーカーたち

 2020年、世界でもっとも新車を売った自動車メーカーはトヨタ(日野、ダイハツ含む)で、その販売規模は952万台だった。さらに、2021年上半期はまだまだコロナ禍にありながら、546万台と上期における過去最高記録を更新した。2021年も世界最大の自動車メーカーとなることは濃厚だ。

 CASE(コネクティッド・自動運転・シェアリング・電動化)をキーワードに、100年に一度の大変革期といわれる自動車業界において、現時点ではトヨタは好調を維持しているといえる。そんな販売状況からは盤石に見えるトヨタに死角はないのだろうか。いくつかの視点からトヨタにない強みを持つ4社を国内外からピックアップしてみた。

1)テスラ

 まず多くの人が予想しているであろう時価総額の話題から。ご存知のように世界の自動車メーカーの中で圧倒的にトップなのはアメリカのEV専業メーカー「テスラ」だ。その時価総額は、およそ7300億ドル(約80兆円)。一方トヨタの株価は9600円前後で、時価総額は31.5兆円ほどになっている。

 販売ベースでいうと、テスラの2021年上半期の販売台数は約38万台であって、トヨタの7%でしかない。これほど規模が違っていて時価総額が倍以上というのは自動車メーカーとしての価値と考えると違和感を覚える。

 ただしテスラについては、イーロン・マスク氏のカリスマ性であったり、また、自動車メーカーとしてではなく、太陽光発電・蓄電システムを含めた再生可能エネルギーの普及によって成長が期待できるという点であったりといった部分で株価が上がっている面が大きい。そのためテスラを自動車メーカーとして評価して、電気自動車専業になれば株価は上がると考えるのはミスリードの元といえるだろう。

2)フェラーリ

 さて、トヨタがすごいのは販売規模が世界最大でありながら利益率も最高レベルにあることだ。2021年3月期の利益率は10.2%。さらに直近、2022年3月期の第1四半期では営業利益率を12.6%まで高めている。これは大量生産メーカーとしては圧倒的で、いまの自動車業界のビジネスモデルに、カンバン方式に代表されるトヨタ生産方式が最適化されていることの証左といえるだろう。

 はっきり言って、トヨタほどの利益率に敵うメーカーはない……と言いたいところだが、唯一の例外がフェラーリだ。

 その利益率は20%を超えるという。もっともフェラーリの場合は「F1活動を応援するために市販車を買うユーザーは存在する」と言われるほどで、オーナーの多くは、いわゆるF1活動の養分となることを望んでいるという特殊な状況にある。そもそも販売価格で競争する必要性がなく、開発費を抑えて利益を上げるというよりも利益率を基本に開発費の逆算から価格設定をできるだけのブランド力を持っているのだ。

 このブランド力は、大量生産を前提としているトヨタが得ることは難しいだろうが、はたしてGRではその領域に踏み込もうとしている気配も感じられる。

国産メーカーも負けてない! トヨタにはない独創性で勝負に出る

3)スズキ

 ここまで海外ブランドと比較してみたが、国産メーカーのなかにトヨタにない強みを持つ会社はあるのだろうか。クルマ作りという点でいえば、トヨタを脅かす一番手はスズキだろう。同社が持つコストダウンのノウハウは、トヨタも一目を置くと以前から言われている。

 それはプロフェッショナル同士だから気が付くレベルでの知見もあるだろうし、ユーザー目線でいえば6速MTで1.4リッターターボのスイフトスポーツを190万円以下で用意できることからも感じられるだろう。

 ただし、そんなスズキもCASEに含まれるコネクティッド領域、電動化領域ではトヨタと協業しているし、先日はトヨタ傘下のダイハツで軽商用の電動化において共同開発を進めることを発表している。

 お互いに強みを認めつつ、オールジャパンで協力していくというのが最近の流れだ。

4)マツダ

 クルマづくりのノウハウといえば、いまやスピーディな開発というのは欠かせないわけだが、その領域でトヨタを上まわる能力を持っているといわれるのがマツダだ。「モデルベース開発」(MBD:Model Based Development)」とは、開発そのものを机上で効率良く進めるという手法であり、現在の自動車開発においてはスタンダードとなっている。

 マツダがMBDにより開発した成果のひとつが、一連の「SKYACTIV」テクノロジーである。つまり10年以上前からマツダはMBDを活用して結果を出してきたことになる。そうして蓄積した経験というのはトヨタをはじめ他社を凌駕しているという。マツダとトヨタほかの企業が出資した電気自動車のアーキテクチャ研究会社(現在は解散済み)が生まれたのも、トヨタがマツダのMBDに関する知見を学ぶためという話もあったほどだ。

 ちなみに、マツダのMBDはエンジンやシャシーといった領域だけでなく、CASEの中心ともいえる自動運転領域でも活用されている。100年に一度の大変革期を乗り切るために、日本の自動車業界にとって欠かせない開発技術となっているのだ。