独自の加工技術で「チタンの昭和」として知られていた

(株)昭和(企業コード:580555368、資本金9185万8900円、生駒市北田原町2443−1、代表高安輝樹氏)は、6月1日までに実質的に事業を停止し、事後処理を高松直樹弁護士(大阪府大阪市北区堂島浜1−2−1新ダイビル23階、奏和法律事務所、電話06-6348-2015)に一任、自己破産申請の準備に入った。7月中に自己破産申請を行う予定。6月15日までは残務処理を行う。

 当社は、1967年(昭和42年)1月に設立したチタン加工業者。チタン加工に特化した事業を展開し、熱交換器や超高真空容器、圧力容器、電解銅箔製造用の陽極電極など幅広いチタン加工製品の製造を手がけていた。20以上の特許を有するなど高い技術力が評価され、経済産業省や中小企業庁から数々の認定を取得。また、代表は発明家として知られ各所で講演を行っていたほか、新聞やテレビなどメディアでも取り上げられ、「チタンの昭和」として相応の知名度を誇っていた。高い技術力とブランド力をもとに産業用機器製造業者や鋼材加工業者など約200社に営業基盤を構築し、ピークとなる2009年1月期には年売上高約17億400万円を計上した。

 しかし、その後は得意先の設備投資意欲の減退などにより売り上げは漸減し、2020年1月期の年売上高は約8億7900万円にまでダウン。さらに、過去のデリバティブ取引の失敗に加え、多額の設備資金や研究開発費により年商規模を上回る有利子負債も重荷となり収益も低調に推移していた。そのようななか、2020年に入ってからは新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、得意先からの受注が落ち込こんだことで売り上げはさらに減少。そのため、コスト削減や新規取引先の開拓などに努めていたものの奏功せず、2021年5月には決済難に陥るなど資金繰りがひっ迫。再建を模索していたものの、先行きの見通しが立たなくなり、事業継続を断念した。

 負債は約17億円。

 なお、一部事業は別会社が引継ぎ、継続する計画となっている。

 奈良県内企業における新型コロナウイルス関連倒産は11件目で、コロナ関連倒産では最大の負債額となる。

※代表の(高)は、正しくは(はしご高)です。