件数・負債総額推移

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資金繰り支援策が寄与し発生は低水準、4月の負債額最大はグリーンインフラレンディング

 2021年4月の倒産件数(489件、前年同月比35.5%減)は、9カ月連続で前年同月を下回り、4月としては、2000年以降最少となった。前年同月からの減少率は、新型コロナ対策の緊急事態宣言(1回目)のなかで倒産の法的整理手続きが滞留した2020年5月(同55.6%減)に次いで過去2番目に大きい減少幅を記録した。また、連続減少期間も2013年8月〜15年2月(19カ月連続)以来の長さとなっている。業種別の件数では7業種中6業種が前年同月比で減少。なかでも建設・製造・卸売の3業種の件数は4月としては過去最少を記録した。他方、不動産業(18件、同12.5%増)は前年同月を上回った。

 負債総額(799億9000万円、前年同月比50.5%減)は、3カ月ぶりの前年同月比減少。4月としては初めて800億円を下回り2000年以降最小となった。4月の負債額最大の倒産は、再生可能エネルギー事業への投資仲介を手がけていた(株)グリーンインフラレンディング(東京都、破産、負債約128億円)。

官民総出の無利子・無担保融資が企業倒産の抑制に寄与

 2020年3月から展開されてきた実質無利子・無担保の特別融資について、民間金融機関の受付が今年3月末に終了した。コロナ禍の長期化を見据え、特別融資を導入して手元資金を確保する動きなどもあり、2021年3月時点の銀行・信金の貸出平残は前年同月比6.3%増の579兆9945億円と過去最高を記録、前年同月から34兆円以上増加した。特別融資をはじめ国をあげた各種資金繰り支援策は、企業倒産発生の抑制に大きく寄与している。

 実際、企業の2021年3月時点の資金繰りについて、新型コロナ対応の特別融資導入で潤沢な資金があるといった声もあり、資金繰りが「楽である」と感じる企業は43.2%にのぼった。他方、「苦しい」は13.6%で、内訳を業種別にみると旅館・ホテルや娯楽サービス、飲食店が上位を占めた。

 こうした情勢も反映し、2021年1−3月における企業の休廃業・解散件数に目を向けると、前年同期から約1割減少したものの、旅館・ホテルなどの業種では増加傾向に転じるなど、昨年までの傾向から変化の兆しもある。

新型コロナ第4波到来 高まる借入金の返済負担、業態転換対応に注目

 新型コロナ対応の融資導入などを背景に、企業の月商に対する借入金の割合が平均5.0倍と前年(4.2倍)から拡大し、返済負担は高まりつつある。

 このような状況下、4月に新型コロナ感染拡大「第4波」の到来が鮮明になった。長期化するコロナ禍において、企業業績は業態により明暗が分かれ、巣ごもり需要を捉え、最高益を更新する企業がある一方、飲食や航空などでは過去最大の赤字決算を強いられる企業も散見される。3回目の緊急事態宣言の発出など感染拡大防止策が講じられるなかで対面型業態を中心に苦戦を強いられ、飲食やレジャー、娯楽・イベント関連などは、ゴールデンウイーク期間の需要が2年連続で低迷。コロナ禍前のビジネスモデルへの揺り戻しが期待できない業態は多い。

 これまでの緊急支援から、消費行動やライフスタイルの変化に対応した業態転換や新分野展開を促す事業再構築補助金(経済産業省)などへ、政府の追加支援策の軸足は移りつつある。原材料価格の高騰など収益性の足かせとなる要素も加わるなか、対応に難航する企業群が事業継続を断念していく可能性は否定できず、倒産件数が増加に転じる懸念は高まっている。